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病気は人間がつくりだした

人間ドック学会などでつくる専門家委員会は4月4日現在の数値で異常値、すなわち健康ではないと判断される数値を大幅に緩めるべきだという調査結果を発表しました。

人間ドックや企業の健康診断では、基準値を用いて、健康かどうかを判定しています。しかし、この基準値は、人間ドック学会が公表している判別値を使う施設もあれば、日本高血圧学会など各専門学会が定めた診断基準を利用する施設もあり、バラバラな状況です。

このような基準値の変更に対して違和感を持つ人もいるかもしれません。いくら基準値が変わろうと健康な人が体調を崩すわけではないし、病気の人が治るわけでもありません。今回の変更からわかるように、そもそも「健康でない」状態=「病気」というものの多くはもともと自然にあるものではなく、人間が定義しつくりだしたものなのです。

 

医原病とは

オーストリアの社会学者イヴァン•イリイチは医療行為そのものが原因となって発生する病気を「医原病」と呼び、「臨床的医原病」、「社会的医原病」、「文化的医原病」という分類を行いました。

「臨床的医原病」は投薬の失敗や誤診断などいわゆる医療ミスによって引き起こされる病気を指します。「臨床的医原病」は古代ギリシャの時代から危険性が叫ばれていましたが、医療技術の発達した現代の日本でさえも院内感染や投薬ミスという形で「臨床的医原病」は起こっています。

「社会的医原病」は従来は病気とされなかったものの、社会の中で病気であるとされるようになったものを指します。例としては肩こりがあげられます。肩こりという概念は夏目漱石が作ったものであり、肩こりという概念が生まれたことで日本人が肩の筋肉のこわばりについて意識するようになったという説があります。

たしかに、日本では肩こりは治療の対象ですが、海外の人に肩こりを説明しようとしても理解してもらえないことが多いです。また、最近では美容整形をする人が増えていますが、そういった人たちは整形する前の自分の顔を一つの病として捉えているのかもしれません。

 

自分の身体との対話

そして、「文化的医原病」は人々が自分の身体であるにも関わらず、健康管理を全て医者などの専門家に委託してしまった状態を指します。当然ですが、病院などの医療施設が一般的ではなかった時代には体調が悪くなった人は家族や周りの人の力を借りて、何とか状態を正常にしようと試みていました。

しかし、現代では少し不調を感じるとすぐに病院に行ってしまいます。そして、医者が伝えてくれる身体の状態に関する専門的な用語や説明に疑問も持たずにただ従っているのです。

もちろん、医療というものから私たちが受けている恩恵ははかりしれません。しかし、病気であるということは身体や心に何らかの不調、不都合が生じた状態です。逆に言うと、自分にとって何が正常で、何が幸福な状態なのか定義することができていなければ、いくらでも病気の範囲を広げてしまうことになります。専門家にしかわからないことも沢山ありますが、まずは自分の身体と対話してみることが重要なのではないでしょうか。

 

[参考文献]

イヴァン・イリイチ,『脱病院化社会―医療の限界,晶文社, 1998年

[Photo by Dan Queiroz]

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