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インターネット規制への反感

ロシアがインターネットに対する規制を強めています。以下5月5日の東京新聞からの引用です。

ウクライナ危機をめぐり、事実上の軍事介入などを通じて「強い指導者」として支持率を伸ばすロシアのプーチン大統領が、インターネットの人気ブログの開設者に対し、政府への登録を義務付けるなどネット上の言論統制に乗り出した。 (中略) ロシア議会上院は四月二十九日、一日当たり三千件以上の閲覧があるブログやウェブサイトの開設者に国のメディア監督機関への名前などの登録を義務付け、マスメディア並みの責任を課す法律の改正案を可決。大統領の署名を経て八月に施行される見通しだ。この法律では、ブログなどの開設者は掲載内容の事実検証を義務付けられる。選挙前に当局が扇動的とみなす内容の掲載も許されない。(中略)これに対し、国境なき記者団(本部パリ)は「ネットでの統制を強め、自由な言論空間をさらに狭めるものだ」と批判している。2014年5 月5日 東京新聞 朝刊

ロシアはある種の言論統制の手段として今回の施策を打ち出しています。日本に暮らすほとんどの人はこの施策に違和感を感じると思います。そもそも、なぜインターネット上の言論を規制することが悪とされているのでしょうか。

一つの理由としてほとんどすべてのインターネット関連サービスが自由主義という思想をよりどころにしているということが挙げられます。自由主義は現代の民主主義国家に生きる人々のほとんどが知らず知らずのうちに共有している価値観だと思いますが、インターネットサービスには顕著にその特性が現れています。

自由主義とは

自由主義理論は人間の善性と理性を信じる考え方です。人間は自分の利益になるような行動をする能力を持っているので、個々の人間がそれぞれの幸福を追求する環境を整えることを社会的な目標にするべきであると考えます。
自由主義を支持した論者としては、ジョン•スチュアート•ミルが有名です。彼が唱えた「最大多数の最大幸福」を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。ミルは、社会の目標を幸福の量的な最大化と定義し、自由を他人を傷つけない限りにおいて自由に振る舞うことでそれが達成されると考えました。

現在流行しているCGM(Customer Generated Model)型のインターネットサービスのほとんどがこの自由主義の思想に基づいて作られています。個人が自分の意思に従ってコンテンツを作り、それを公開することで社会の価値が最大化されるという考え方です。サービス提供者が介入するのは、ミルが言うところの「他人を傷つけた」場合だけです。

現象の背後にある思想

アメリカのマスコミ研究者であるシーバート•フレッドはメディアが思想的な拠り所とする理論を4つに分類しています。4つとは、「権威主義理論」「自由主義理論」「社会的責任論」「全体主義理論」です。

今回の記事には関係が薄いので詳しくは説明しませんが、インターネットサービスを広義のメディア(情報の仲介役をする媒体)と定義すると、アメリカや日本等の国は「自由主義理論」、ロシアは「全体主義理論」を拠り所としています。

「全体主義理論」というのはソビエト連邦で発達した考え方で、社会の発展と維持のためにはメディアが国家によって所有されるべきだという考え方です。ソビエト連邦は崩壊しましたが、この考え方はロシアにも残っており、今回の施策に繋がったと言えます。

インターネットを含めたメディアに対する根本的な考え方が私たちとロシアでは異なるということがわかります。冒頭に書いた海外の国や文化圏の「違和感」を理解するためには、現在起こっている現象だけではなく背後に潜む思想や歴史を見ることが必要なのかもしれません。

[Photo by mkhmarketing]

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