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現在、小学館のビッグコミック・スピリッツに連載されている人気漫画「美味しんぼ」が『福島の真実』という題で、東日本大震災に伴い発生した原子力発電所の事故およびその後を福島の現状を表し、話題となっている。

その内容に、福島の市町村や瓦礫を受け入れる大阪市、閣僚などが批判的な発言をし、複数の市民団体からも批判の声が上がっているからだ。またそれに反発する形で、福島の市民団体からはそうした批判は「表現の自由」の抑圧するものだとする批判の声が上がっている。

 

前半は双葉町前町長

このように、様々な意見を行き交い紛糾する「美味しんぼ」の今週号を実際に読んでみた。ページを開くとまず目に入ったのが、話題となっているセリフ「被ばくしたからですよ」だ。これは、実名で登場する双葉町前町長の井戸川克隆さんのセリフである。

その後、放射線で鼻血がでる仕組みを分子などの話題も持ち出し科学的に解説している。この下りで作者が表現したかったことは、おそらく主人公の父・海原の発言にある。「放射線の被害というと癌のことばかり取り沙汰されるが、放射線は人間の体のすべての部分に影響を与えるのだ。」ということだろう。

その後、井戸川前町長の話が続く。事故発生当時に政府の情報開示が少なかったこと、そして放射性廃棄物の中間貯蔵施設が双葉町に建設されることとなり、井戸川氏が町長の職を辞することになったことなどだ。

井戸川氏の発言には、かなり恨みも籠っているように感じるが、同氏は最後に「どんな獣でも鳥でも自分の子供を守るために全力を尽くす。どうして人間にできないんですか。子供の命が大事でしょう。」と述べている。

 

後半は、福島大学行政政策学類准教授

後半は、福島大学行政政策学類准教授荒木田岳氏の主張を取り上げている。同氏は冒頭から「福島はもう取り返しのつかないまでに汚染された、と私は判断しています。」と述べる。

その後、自身が除染作業で体調を崩された経験や除染作業をして一時的に放射線の数値が下がっても、すぐにまた高くなってしまうことを述べている。そして最後に「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、私はできないと思います。」と閉めくくる。

確かにこの内容は、今現在も被災地の復興を目指して懸命に努力する人々には耐えがたいものだろう。一方でこの内容は極端な意見にも思えるが、強い問題意識をもち実際にこのような考え方をする人は一定数存在し、私も実際に会ったことがある。

「美味しんぼ」の内容は今のところ、井戸川前町長と荒木田氏という二人の強い問題意識をもつ意見を取り上げたものである。一方的と言えば一方的だがこれは漫画であり、ニュースなど公平性の求められる媒体ではない点には注意しなければならない。

確かに、影響力が強い媒体と作品ではあるが、このような考え方が存在するということを世に出した点では価値があるのではなかろうか。

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