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フォートラベル株式会社は、同社が運営する「旅行のクチコミサイト フォートラベル」にて、「今まで訪れた中で一番良かった国内旅行先」について実施した調査結果を発表しました。

旅行好きのフォートラベル会員を対象に、「今まで訪れた中で一番良かった国内旅行先」を聞いたところ、もっとも人気の都道府県は「沖縄県」でした。特に良かったスポットとして、「石垣島」「宮古島」などの離島や、「美ら海水族館」が多く挙がっています。

これらのスポットの特徴は「非日常的であること」です。実際、アンケートにも「喧騒から離れ、のんびりと流れる時間に癒やされた」といった選択理由が記入されています。旅に非日常性を求める人は多いのではないでしょうか。

 

昔は日常の延長だった

実は昔は旅は、「日常から離れた体験、場所」という意味での非日常ではなかったと言われています。「昔」というのはまだあまり交通機関が発達しておらずほとんどの人が徒歩で旅を行っていた時代のことです。

徒歩で旅をしていた時代であれば、出発地から目的地まで足で歩くためその行程が視覚的にも身体的にも体験として残ります。あくまで、日常を拡張した先に旅というものがあったのです。

古くは「土佐日記」から、有名どころの「奥の細道」まで昔の旅行に関する書物は目的地のあり様を描くというよりは、旅行の過程に焦点をあてたものがほとんどでした。このことからも昔の人にとっての目的地の行程というものが旅行体験にとってどれだけ重要なものであったかがわかります。

 

いつから非日常になったのか

ところが、鉄道の発達により多くの人が徒歩ではなく交通機関を使って旅をするようになってから状況は変わってきます。ドイツの社会学者シヴェルブシュは鉄道旅行の普及による旅行者の体験の変化を次のように描写しています。

昔の旅人は通り過ぎていく風景と関係を保っていた。彼らは、自分がこの全景の一部であることを自覚していたし、この意識が彼らと風景を結びつけていたし、その風景が遥か彼方まで広がっていようとも、彼らの意識は風景の中に彼らを編み込んでいたのである。(中略)パノラマ的にものを見る目は、知覚される対称ともはや同一空間に属していない。(『鉄道旅行の歴史』p80)

鉄道の登場によって、出発地点と目的地の間にある景色は変容しました。徒歩の旅行であれば、旅人は自分がその景色の一部であることを意識していたとシヴェルブシュは言います。 鉄道から見る景色は次々と眼前を通り過ぎてゆき、旅行者によって自分がその一部であると認識することを許してくれません。

こうした移動体験の変化によって、目的地が日常から切り離されていきました。日常の延長ではない場所として旅の目的地が捉えられるようになったのです。

 

現代における旅

現代においては、旅の目的地が日常から切り離される現象はさらに進んでいます。主な旅の手段として、徒歩、自転車、車、鉄道-船、新幹線、航空機の順に移動速度は早くなり、移動途中の形式から旅行者が切り離される度合いが強くなっていきます。

空港に降り立って外に出た瞬間に別世界に来たような体験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。航空機に乗っている時の私たちは雲の上という日常から隔離された空間を体験します。日常から一度隔離され、そして目的地に到着することで目的地を非日常(別世界)と感じる感覚がさらに強まるのです。

私たちが旅に使う交通手段は旅の非日常感を大きく規定するものであり、鉄道や航空機が旅を非日常にしたということが言えます。

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[参考文献]

ヴォルフガング•シヴェルブシュ『鉄道旅行の歴史』(1982年)法政大学出版局

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