新聞の社説にはクセがある~統計学的分析でわかった「物語」と「構造」〜

【読了時間:約 3分

画像1 (1)  photo by Pixaboy

2012年に、京都大学で実践的社会科学に関する研究を行っていらっしゃる藤井聡教授が共著で発表した論文を紹介します。タイトルは「公共政策に関する大手新聞社説の論調についての定量的物語分析」です。藤井聡教授の研究室のホームページから閲覧することが可能となっています。

 

新聞の社説で主張されていること

この論文では新聞社が社説の中で展開している論説内で、潜在的に共有している経済政策に関する物語を抽出しそれらを分類しています。定量的な分析を加えるために、全国的なシェアが高い読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞の全国5社の、2010年9月12日から2011年9月11日まで(東日本大震災の前後半年ずつ)の一年分の社説を対象として調査を行っておられます。

社説には基本的に”政策への提言”という核となる物語があり、それらを構成する要素として「現状認識要素」と「処方箋提案要素」があるという想定のもとで各社説を分解し、その割合について統計学的分析を行っております。

この論文で得られた知見の中で特に注目に値すると感じたものを次の三点にまとめました。

*自由貿易や構造改革の推進を声高に主張する一方、財政破綻の危機を煽りつつ、緊縮財政に基づく財政再建を主張する新自由主義のイデオロギーに整合する物語が支配的であること。

*財政政策や金融政策を通した政府主導の内需拡大により、経済成長を主張するケインズ経済学に基づく論調は殆ど新聞紙上で展開されていないこと。

*デフレという現状を認識していない論調かつ、デフレ脱却を謳うが具体的且つ包括的な策が提示されたことは皆無であること、特に増税・構造改革・公共事業削減については「現状認識要素」が殆どないまま「処方箋提案要素」しかないような構造的に不安定な社説が多かったこと。

画像2 (1)

 

社説には”クセ”がある

こうした分析を目の当たりにすると、確かに新聞の社説の中で真新しい解決策が提示されているものを読んだ記憶は私の中にはありません。

上にまとめた3点に共通しているのは、読者に対して、細かい論理は置いておいてとにかくある程度の共感が得られ、政府に関して今までなされてきた批判であり、且つ構造改革に代表されるようなある種刺激的な表現に終始している、ということではないでしょうか。

 

読者を増やしたい思いの表れか

新聞の売り上げは年々減っています。そのような状況では、読者の目を引くためにも、建設的で少しずつ解決を図っていくような内需拡大政策よりも、構造改革のように抜本的な改革を要するセンセーショナルな論説を展開せざるを得ないということなのでしょうか。

画像3 (1)出典:日本新聞協会 (単位:億円)


個人的には、テレビのニュース番組では経済に関する話題が、主にどういった取り上げられ方をしているのか、ということも気になるところです。

Credoをフォローする