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遅れている日本の予防接種政策

2014年10月から、水痘ワクチンの定期接種が始まりました。水痘は、いわゆる「みずぼうそう」で、全身にかゆみを伴う小さな水ぶくれがたくさんできる感染症です。小さいころにかかったことがある方も多いかもしれません。

変更前は、任意接種という、接種するかしないかは保護者の判断に任され、接種費用も自己負担となる接種方法でしたが、定期接種になることで、国が接種を推奨し、かつ無料で接種可能となりました。

下のグラフは、米国において2006年に2回の水痘ワクチン定期接種が始まったことをきっかけに、水痘患者数が激減していることを示しています。黒い線が人口10万人あたりの水痘患者数の推移です。諸外国でも同様の傾向がみられています。

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出典:Centers for Disease Control and Prevention

そんな中、日本では未だに年間約100万人の水痘患者が発生しています(2014年現在)。今度、定期接種化によって、罹患者数の減少が期待されます。

水痘ワクチンの定期接種化は、米国より9年遅れました。水痘ワクチンは日本で開発されたというのに、現状は諸外国に大きな遅れをとっています。水痘に限らず、日本の予防接種政策は遅れているのが現状です。

 

集団免疫という概念

今回は、予防接種の大きな意義の一つである、「集団免疫 (herd immunity)」という概念をご紹介します。

予防接種の意義をおおまかにまとめると、

1, 予防接種を受けた人を感染から守る

2, 感染の拡大を抑える

3, 予防接種を受けられない人たちを感染から守る

の3点があります。1と2に関しては、当然のこととして理解できると思います。3つ目が、「集団免疫」に関わることです。この場合、予防接種を受けられない人たちとは、生まれたばかりの新生児や、何らかの理由で免疫力が低く、予防接種を受けられない人たちを指します。

すなわち、感染症にかかると重症化する可能性のある人たちが、まさに予防接種を受けられない人たちということです。この人たちを守るためには、周囲のなるべく多くの人たちがワクチンを接種することが必要なのです。

657出典:K.D.Shives 

このイラストを見てください。

青い人は、ワクチン未接種で、感染もしていない人を表しています。赤い人は、ワクチン未接種で、感染し、かつ周囲に感染力のある人を表しています。黄色い人は、ワクチン接種済みで、感染しない人を表しています。

左側が、集団の中で感染者が発生した状況を示し、右側の状況に移行する様子を示しています。1段目と2段目のイラストでは、青い人のほとんどが赤い人に変化し、流行が起きています。

2段目は、任意接種の状態を示しています。予防接種を受け、免疫がついた人には感染は起きませんが、流行や、重症化する可能性がある人たちへの感染は防ぐことはできません。

3段目のイラストのように、黄色い人が増えることで、例え集団の中に感染が持ち込まれても、大規模な流行を防ぐことができるのです。重症化する可能性がある人たちへの感染も防ぐことができます。

これを達成するためには、定期接種となって、ほとんど全ての人が予防接種を受ける必要があります。

免疫力の低い人の多くは、病院の中にいます。病院で感染が発生すると、本当に大変です。感染していなくても、免疫力の低い人には追加の治療が発生してしまったり、病院機能自体が停止したりすることさえあります。もし、免疫力の低い人に実際に感染してしまうと、死に至ることもあります。

予防接種は、子どもたちが受ける機会が多いと思います。その意義は、目の前の子どもを感染から守るだけでなく、その先にいる違う誰かの命も守っていることを想像してみてください。

小児科医として、集団免疫の概念が広く理解されるようになることが、社会全体に予防接種が受け入れられることを後押しするきっかけになればと思います。

 

2015/4/4加筆

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