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顕在化する脱法ハーブ問題

2014年6月24日、暴走した自動車が歩道者の中に突っ込み、1人が死亡、6人が重傷を負う痛ましい事故が起きた。犯人は意識が朦朧とした状態で運転しており、事故当時の状況について「全く記憶がない」と話している。

どうしてこのような悲惨な事故が起こってしまったのだろうか。そのカギを握るのが、今回紹介する「脱法ハーブ」だ。日本では2010年ごろから流通が盛んになったといわれ、合法ハーブという名前でも呼ばれている。

本記事では、そもそも脱法ハーブとは何なのか、そしてこれほど問題をはらんでいるにも関わらず、脱法ハーブがなぜ世間から無くなってしまわないのかを概説したい。

 

脱法ハーブの「脱法」とは何か?

「脱法ハーブ」は、乾燥させたハーブ様植物に、大麻に似た作用を持つ化学物質を混ぜ込んだものである。大麻や麻薬のような向精神作用を持つ。先の池袋の犯人は、脱法ハーブを吸って意識が朦朧とした状態で運転したため、事故を引き起こした。

向精神作用を持つ化学物質は人体に悪影響を与えるため、薬事法、大麻法等の法律によって規制されている。ただ、規制を行うためには、化学物質の構造をいちいち指定しなければいけない。似たような効果を持つ化学物質でも、少し構造が異なれば、法律で取り締まることができなくなるのだ。

「脱法ハーブ」に混ぜ込まれる化学物質は、無限に近い類似構造を持つ。そのため、新しい物質を規制するたびに、また新しい構造を持つ物質が登場する。このいたちごっこのため、完全に取り締まり切ることが難しい。

このように、本来なら取り締まるべき薬物が、法の網の目を掻い潜り存在するため、法律を抜け出たハーブ=「脱法」ハーブと呼ばれている。

 

脱法ハーブ規制の実際

脱法ハーブに混入する化学物質は、まず薬事法の指定薬物に指定される。また、人への悪影響が強いと考えられれば、麻薬取締法によって麻薬に指定される。これらに指定された化学物質を用いた薬物は、販売、購入、所持が禁止され、違反すれば刑罰が科せられる。

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出典:厚生労働省

前述したよう、脱法ハーブに混入する化学物質は無限に近い類似構造を持つため、いちいち個別で指定していては規制が追いつかなかった。そこで、2013年に「包括指定制度」が導入された。

これはある構造を持つ化学物質を一括で指定する方法であり、類似物質が新規に出現しても、その構造を持っていればすぐに取り締まることができるようになった。しかしその後、全く新規の化学物質が開発されたため、包括指定でも対処しきれなくなってしまった。

そんな中池袋の事件が起きた。事態を重く見た政府は、脱法ドラッグの名称を「危険ドラッグ」に改称し、また「無承認医薬品の無許可販売」への規制を強化し始めた。

この規制は、脱法ハーブを「政府の許可を受けず製造、販売している薬物」と見なし、その製造、販売を規制する制度である。この制度を用いれば、化学物質を指定しなくても、その製造・販売を禁止することができる。

脱法ハーブをなくすには

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出典:政府広報オンライン

無承認医薬品の無許可販売規制によって、脱法ドラッグ規制は強化された。しかし、脱法ハーブを薬物として認定するには、業者がそれを薬物として販売していることを立証する必要がある。業者が、「これは観賞用のハーブとして売っている」と主張すれば、薬物として取り締まることは難しくなる。

脱法ハーブがなくならないのは、以上見てきたように、規制当局と販売業者のイタチゴッコが延々と繰り返されているからだ。当局は今後も新たな施策を講じるが、それに対して販売業者は必ず抜け道を見つけるだろう。

結局、脱法ハーブをなくしていくには、それを使用する可能性のある、私たち個人個人が気をつけ、生活していくしかないのかもしれない。

header photo by 政府広報オンライン

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