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理化学研究所の笹井芳樹氏が8月7日に自殺したことをうけて、メディアが連日関連する話題を報道しています。日本において、著名人や何らかの騒動の渦中にある人が自殺した場合、かなり大きく、かつセンセーショナルに報道されることが多く見受けられます。

しかし、海外のメディアではそうでも無い場合があります。その理由の一つに、WHO(世界保健機関)の自殺予防プロジェクト「SUPRE」によって定められているメディアに対する報道ガイドラインがあります。

 

ウェルテル効果とは

WHOのガイドラインは自殺をメディアが報道することにより後追い自殺、いわゆる「ウェルテル効果」(Werther effect)を減らすためにこうしたガイドラインを作製しました。「ウェルテル効果」とは社会学者のデービッド•フィリップスによって明らかにされたマスメディアの自殺報道により後追い自殺が増加する現象です。

フィリップスは「自殺率は報道の後に上がり、その前には上がっていない」「自殺が大きく報道されればされるほど自殺率が上がる」「自殺の記事が手に入りやすい地域ほど自殺率が上がる」といった事実を実証的に明らかにしました。

ここで言う「ウェルテル効果」はあくまで相関的な事実、であり自殺報道と自殺者の増加の間に何らかの因果関係があることが示されたり、そのメカニズムが明らかにされたわけではありません。

「ウェルテル効果」の”ウェルテル”という言葉はドイツの作家であるゲーテの著書『若きウェルテルの悩み』に由来しています。この作品では、最後に主人公ウェルテルが自殺をしてしまいます。(ウェルテル自身は後追い自殺によって死んだわけではありません。)

日本でも「ウェルテル効果」による後追い自殺は見られ、古い例だと1903年に一高(今の東京大学)の学生であった藤村操(ふじむらみさお)が華厳の滝に投身自殺し、この事件を新聞が大きく取り上げたことによって後追い自殺が続出しました。

また、1998年にX-JAPANのメンバーであるhideが急逝した件について、これが自殺であるとメディアが報道したことによりファンの後追い自殺が相次ぎました。このことを受けて、X-JAPANの存命メンバーからこれ以上自殺をしないようにという趣旨の記者会見が開かれています。

 

WHOガイドライン

先述のWHOのガイドラインは次のような内容です。

•社会に向けて自殺に対する啓発、教育を行う

•自殺をセンセーショナルに扱わない、当然の行為のように扱わない

•自殺の報道を目立つところに、繰り返し掲載しない

•見出しの付け方には慎重を期する

参考:内閣府

この他複数の項目があります。詳しくはこちらをご覧ください。

 

極端な話ですが、新聞や雑誌、webマガジンといったメディアは部数が増えるほど、視聴者が増えるほど儲かります。そして、部数を増やす簡単な方法は出来事を必要以上に騒ぎ立て、人々の注目を集めることです。

しかし、既にそうして自殺に関する報道を過剰に行うことがさらに多くの人の命が失われる原因となる可能性があることが実証的に明らかになっている以上、日本のメディアもWHOのガイドラインに従いつつメディアの運営を行っていく必要があるでしょう。

photo by Arallyn!

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