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19世紀ドイツを代表する思想家・カール・マルクスの言葉に「歴史は繰り返す」というものがある。現在世の中で起きている事象に目を当てると、似たような原因を持つ事象が過去に必ず起きているものだ。

例えば日本赤軍とオウムのテロ事件や、日本の右傾化による軍国主義の再来など、しばしばネガティブなものが例として挙げられる。

しかし歴史が繰り返されるのは、なにもそんなにお固いニュースばかりではない。華やかなイメージが強いファッション業界でも、トレンドという綺羅びやかな名に隠れて、実はしっかりと歴史が繰り返されている。

 

蘇ったルーズソックス

「90年代ファッション」という言葉を聞いたことはあるだろうか。実はいま、この90年代ファッションが10代後半〜20代の若者の間でトレンドのファッションスタイルとなっている。

90年代後半に女子高生の間で大ブームとなった「ルーズソックス」。あの白く弛んだ足元のシルエットは当時のイケてる女子高生のアイコンであり、街中ではルーズソックスを履いたコギャルたちで溢れていた。それがいつしか「ルーズソックス」という言葉は死語となり、街中からルーズソックスを履く女子高生は姿を消した。

それが最近、ルーズソックスの系譜を引いたファッションが一気に注目されている。若者ファッションのメッカ・原宿表参道エリアでは、スニーカーと白ソックスを合わせるスタイルがトレンドとなっているのである。

これは、あの白いルーズソックスが一度姿を消し、形を変えて再びファッショントレンドとなった代表的な例である。「流行になっている」といってもトレンドの移り変わりは激しいもの、白ソックスが話題になったのはやや古い話だ。

今年の冬から春先にかけて、ファッション誌などがこぞって取り上げた。そのため、もう白ソックスを流行語として扱っている雑誌は無い。

しかし、街に出れば未だに白ソックスを足元においたコーディネートは、男性誌・女性誌問わず頻繁に目にする。つまり白ソックスは、トレンドの域を超えてお洒落ファッションのスタンダードスタイルとして定着したのである。

おそらく今後のファッションスタイルの選択肢の1つとして、消えること無く残っていくのだろう。歴史は繰り返す。しかし、必ずしも同じ運命をたどるわけではないのだ。

 

シティーボーイへのあこがれ

他にも、再びトレンドの中心となった90年代ファッションは多く存在する。その中でも最も注目すべきは「スニーカー」である。ここ1〜2年でブームに火が付いた「ニューバランス」のスニーカー。これも、90年代のファッションが再び登場しトレンドとなった例だ。

90年代前半〜中頃にかけて当時の若者の間で大流行したのが、ナイキの「エアマックス」「エアジョーダン」といったスニーカーである。90年代は、漫画『ビーバップハイスクール』が大流行した期間でもある。

10代後半〜20代の男性が、少し尖った男性性の強い男に憧れ、少し荒れているくらいがかっこいいという価値観が広く根付いていた時代だ。『ビーバップハイスクール』の影響は大きく、ストリート系ファッションが流行した理由の1つには、ビーバップハイスクールが大きく関係しているを考えられている。

そんな当時のファッションシーンで欠かせないもの、それがナイキのエアジョーダンやエアマックスなどの、ややゴツめで目を引くスニーカーだった。その人気ぶりから売り切れが続出し、新品中古問わず高値で取引され、中には「エアマックス狩り」という犯罪まで発生するようになり社会問題になった。

ではどうしていま、ニューバランスやナイキのスニーカーがブームになっているのか。それは、数年前にマガジンハウスが発行する「POPEYE」という雑誌がリニューアルをし、その目玉として「シティーボーイ」特集を組んだことが1つのきっかけだと言われている。

「シティーボーイ」とは、都会風で流行に敏感な若い男性たちのことを指す。フレッピースタイル・アメカジなど全体的にスポーティーでカジュアルな、それでいてスマートで知的な雰囲気を感じさせるスタイルというのが、都会でイケてる若者たちの象徴となったのだ。

このような経緯があり、いまのスニーカースタイルが再び若者たちの間に戻ってきたということなのである。

 

ファッションのトレンドは一見奇抜で全く新しいもののように思える。しかしその新しいように見えるもののほとんどが、過去にあったスタイルが形を変えて表れているだけ、なのである。

トレンドというのは必ずしも、天才デザイナーが閃く0→1ではない。華やかで近寄りがたいイメージのあるファッション業界でも、しっかりと”歴史は繰り返されている”のだ。

photo by Vincent Samaco

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