「子どもの貧困率」が過去最悪に、脅かされる子どもたちの健康

【読了時間:約 6分

残念なことですが、日本において「子どもの貧困」という言葉をよく耳にするようになりました。そして今、「子どもの貧困」は悪化しています。

1

上のグラフは、2014年の7月15日に発表された2013年の「国民生活基礎調査」の結果をもとにして作成したものです。子どもの貧困率の推移を表しています。

今回、子どもの貧困率は16.3%と過去最悪の数字となりました。

小児科医として、この傾向は心配です。なぜなら、貧困と健康は密接に関わっているからです。今回は、子どもたちの健康に焦点をあて、この問題を考えてみたいと思います。

 

子どもの貧困率とは?

国民ごとの所得を多いほうから順に並べ、真ん中にあたる所得の半分の額を貧困線とみなします。この額よりも低い所得の世帯で暮らす17歳以下の子どもの割合を、子どもの貧困率としています。要するに、日本に住む全ての子どものうち、約6人に1人の子どもが貧困線よりも低い水準で暮らしていることを示しています。

下の図は、ユニセフがまとめた主なOECD(経済協力開発機構)諸国における子どもの貧困率を示したものです。

2

下にいくほど貧困率が高いことを表しています。この図に載っている20カ国中、日本は下からから4番目の子どもの貧困率の高さです。(日本のデータは2009年の所得に基づいています)

「日本の子どもは恵まれている」という認識は間違っていると言わざるをえません。

 

貧困と子どもたちの健康

「子どもの貧困」は目をつぶることのできない問題です。なぜなら、子どもたちの健康と密接に関わっているからです。

主に海外で蓄積されたデータから、貧困と子どもたちの健康の関連性が指摘されています。1986〜1995年にアメリカで行われた全国調査をまとめたデータを示します。(毎年約12万人ずつのデータを基にしています)

まずは、0-17歳の子どもの全体的な健康と家族の収入の関係です。グラフは、年齢層別になっています。縦軸は、5段階で評価した子どもの健康です。数値が低いほうがより健康となります。

3

文献 2)改変

各年齢層において、右下に下がっていくカーブを描いています。これは、「家族の収入が高いほど子どもたちは健康」ということを示しています。言い換えれば、「家族の収入が低いほど子どもたちは不健康」ということです。

この解釈は、以下に紹介する各グラフでも同じです。

4

疾患別に傾向をみてみます。縦軸は各疾患の有病率です。聴覚障害、消化器の疾患、心疾患、てんかん、知的障害の有病率は、各年齢において家族の収入が高いほど低く、収入が低いほど高いことがいえます。

喘息は、低年齢層(0-3歳)において同様の傾向がみられています。

この他にも、

・家族収入が低いほど低出生体重児を出産する確率が高い 3)

・家族収入が低いほど子どものワクチン接種率が低い 4)

・家族収入が低いほど重症外傷を受傷する子どもが多い 5)

・貧困が児童虐待に与える負の影響 6)

なども指摘されています。

これらの結果をまとめると、子どもの貧困と子どもの健康は同時に考えなくてはならない問題ということになります。

 

以上のデータの限界として、貧困と健康の関連性は示されたものの、因果関係までは示されていないという点があります。つまり、貧困を解決すれば、これらの疾患の有病率が減るかどうかまでは証明されていないということです。その証明はこれからの課題といえます。

もちろん、貧困だけが子どもの健康を規定しているわけではありません。しかし、直感的には貧困世帯のほうが子どもたちの健康が脅かされやすいということは容易に想像がつきます。

この国の子どもたちの健康の背後に、「子どもの貧困」が暗い影を落とします。子どもたちの健康を考えることは、その国の未来を考えることです。

「子どもの貧困」、それはこれからの日本が、しっかりと向き合っていくべき重要な課題の一つといえます。

[参考文献]
1) Measuring child poverty New league tables of child poverty in the world’s rich countries , unicef 2012
2) Anne Case, et al. Economic Status and health in Childhood: The Origins of the Gradient. Am Econ Rev. 2002;92(5):1308-1334
3) Maren E. Olson, et al. Impact of Income and Income Inequality on Infant Health Outcomes in the United States. Pediatrics. 2010;126(6):1165-1173
4) R. Monina Klevens, et al. U.S. Children Living in and Near Poverty Risk of Vaccine-Preventable Diseases. Am J Prev Med. 2001;20(4S):41-46
5) Xiangming Fang, et al. Socioeconomic status and the incidence of child injuries in China. Soc Sci Med. 2014;102:33-40
6) 中嶋裕子. 子どもをめぐる貧困と虐待に関する研究―イギリスの施策から学ぶ―. 社会事業研究. 2012;1:128-132

photo by roger alcantara

Credoをフォローする