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2014年9月6日付け日経新聞の夕刊に、つぎのような記事が出ていました。

学校の安全対策を評価する世界保健機関(WHO)の国際認証制度「インターナショナル・セーフスクール(ISS)」の取得を目指す動きが徐々に広がっている。校内や通学路での事故、子供を狙った事件が相次ぐなか、事故の予防策や防犯体制を検証し、有効な対策につなげるのが狙い。学校側は「子供が自ら危険を予測し、回避できる力を育てたい」としている。

引用元:2014年9月4日 夕刊 日本経済新聞

「インターナショナル・セーフスクール(以下、ISS)」という言葉はあまり身近ではないと思いますので、簡単に解説をしていきたいと思います。もしかしたら皆さんのお住まいの近くの学校も認証取得に動き始めているかもしれませんので、ぜひこれを機会に内容を理解してみてください。

 

1.ISS認証制度とは何か?

ISS認証制度は世界保健機関(WHO)の地域安全推進センターが創設した国際的な認証制度です。ISSに認証されるということは「通学路や学校区内も含めて、生徒にとって安全な仕組みが確立され、機能している学校であることが国際的に認められる」ことを表します。

本当にざっくりいってしまえば「ミシェラン~3つ星小中学校~」みたいなものです。この認証を受けると「安全を保障するために地域ぐるみで努力している学校」という評価が与えられます。

認証条件としては、大きく5つあります。

  1. 教師、生徒・学生、事務・技術スタッフ、保護者の協働を基盤とした、安全向上に取り組む運営体制が整備されている

  2. ハイリスクのグループ・環境および弱者グループを対象としたプログラムがある

  3. 根拠(エビデンス)に基づいた取組を行っている

  4. 事故・暴力や自傷などによる外傷の原因の頻度・原因を記録するプログラムがある

  5. 学校政策、プログラム、そのプロセス、変化による効果について評価する方法がある

(出典:http://www.jisc-ascsc.jp/safeschool.html

認証を目指す学校は、校長がJISC(日本でISS取得を促進する社団法人)に意思表明を行い、書類審査や訪問審査をうけて認証に至ります。

 

2.ISS認証が広がる背景

ISS認証制度がこのような形で広まっているのは、「学校、そして通学路を含めた安全性」が国・地方自治体・そして各家庭のレベルにおいても重要視されているからでしょう。

その背景について有事と平時に分けて考えてみたいと思います。

(1)有事の際

ここでは自然災害が起こった場合について考えていきます。2011年3月の東日本大震災発生の際に、宮城県石巻市のある小学校では学校にいた児童・教職員の多くが津波の被害を受けて亡くなるという痛ましい出来事が起きました。

また、児童や教職員だけでなく有事の際は、地域住民も学校に避難することになります。震災や洪水、大型台風などあらゆる自然災害やその避難場所としての安全性を、学校だけでなく保護者を含めた地域住民と一緒に高める取り組みを行うことは非常に重要です。

(2)平時の際

平時の際においては、例えば通学路に車が突っ込み児童が負傷死する事件や学校内での事故が相次いで起こっています。

保護者が安心して子どもをおくりだせる用に、学校と地域が連携して、日常の暮らしの中で児童や生徒が危険に巻き込まれやすい場所(校内も含め)を把握し対策を講じておくことは想定外のリスクを減らすことにつながります。

運動中の心肺停止してしまった生徒の救命率を高めるために、学校にAEDが完備されるようになったのはその良い例でしょう。

 

3.ISS認証の意義

以上、ISSが広がる背景について述べてきましたが、最後にISS認証の意義について考えてみたいと思います。

意義として、まず1つ目は、学校や校区内での深刻な事故や事件が数多く起きている中で、学校として「生徒の安全のためにどこまで対策を講じればいいのか」ということについて一つの客観的で分かりやすい目標ができるということです。

ただし、指標ができることによって、”それを満たせばそれ以上は必要ない”という思考停止が起きて不測の事態に対応できなくなるということも言えるかもしれません。

2つ目は、このISSの取得達成には地域やPTAのバックアップが不可欠であるため、地域、PTAそして学校の連携の強化や地域住民の学校への理解を深めることにつながります。

学校が国際的な認証を受けるということは、その学校の魅力は増していきます。今後学校選択制などが増えていくと仮定すると、他校との差別化という点でもこのような制度は大きな影響を持ちます。

今回の場合は「安全性」という観点での質の保証でしたが、「教育の質」「生徒の学力」「設備」など本当のミシェランみたいに公立学校が評価されるようになれば、「面での平等」=どの学校に行って同質の教育を受けられること、をモットーに掲げてきた日本の教育制度を大きく揺さぶるものとなります。

このISS認証制度はこれからの教育に対し、非常に示唆的であると言えるでしょう。

Photo by John Morgan

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