【読了時間:約 6分

2014年9月18日付けでオバマ大統領が「耐性菌対策の強化」を求めた大統領令を発表しました。(リンクはこちら

耐性菌とは、最初はある抗生剤が効果的であった細菌が、抗生剤を使用していくなかで、その抗生剤に対して「耐性」を獲得し、抗生剤が効かない細菌に変化したものをいいます。

アメリカにおいて、毎年約2百万人が耐性菌に感染し、そのうち約23000人が死亡しているといわれています。(文献2)

この事態に対して、国をあげて対策を講じると大統領令の中で述べています。抗生剤は、命に関わる「細菌による感染症」と戦う最も大切な治療薬です。20世紀最大の発明の一つともいわれています。

耐性菌が増えれば、従来の抗生剤では押さえ込めない感染症が増え、私たちの健康が脅かされます。いま、耐性菌問題が、アメリカだけではなく、日本を含めた世界の問題となっています

これからの私たちの健康に大きく関わるこの問題について、複数回にわたって取り上げたいと思います。

初回の今回は、まず、抗生剤について解説します。

 

抗生剤とは?

細かな意味の違いはありますが、抗生物質、抗生剤、抗菌薬はほぼ同じ意味の言葉です。恐らく、一般的には抗生剤という呼び方が一番なじみがあると思いますので、この呼び方を記事の中では使用します。

抗生剤は、細菌に感染した人に投与する薬で、細菌の増殖を抑えたり、細菌を殺したりする働きを持ち、感染を沈静化させる薬のことをいいます。飲み薬や点滴薬があります。軟膏や目薬に含まれていることもあります。

人に感染し、悪さをする病原体は大きく分けて、①細菌 ②ウイルス ③真菌(カビ)の3種類があります。抗生剤は、細菌による感染症の治療に使用します。ウイルスや真菌による感染症には、全く効果がありません

ヘルペスなど一部のウイルス(風邪のウイルスはほとんど含まれません)には、抗ウイルス薬があり、真菌には抗真菌薬があります。

 

風邪vs抗生剤?

皆さんが一番身近な病気は、「風邪」だと思います。

風邪の多くはウイルスによる感染症です。すなわち、基本的に風邪の治療に抗生剤は必要ありません。

風邪などの本来では抗生剤が必要ない状況での抗生剤の不必要な使用が、耐性菌の増加を加速させる

と指摘されています。少し解説を加えます。抗生剤を使えば使うほど、耐性菌は生まれやすくなります。これは、細菌も生き残りをかけて対応してくるので、しかたのないことであり、避けられません。ただ、不必要に抗生剤を使用してそのスピードを早めるのはやめようという意味と考えてください。

抗生剤の適正使用が耐性菌増加を食い止めるためにとても重要ということです。

  • あるアメリカの論文では、18歳以下の子どもたちがよく罹る、急性中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、上気道炎、咽頭炎の5つの感染症のいずれかに罹った子どもたちのうち、27.4%のみ細菌感染が関わっていたと考えられるものの、実際には、56.9%の子どもたちに抗生剤が処方されていたと報告しています。必要の2倍の抗生剤が使用されていた可能性が示唆されています。(文献3)
  • また、イギリスからの報告では、一般開業医(General Practitioner: GP)の55%が患者からのプレッシャーを感じた上で、本当に必要か確信がない中でも抗生剤を処方しているとありました。(文献1)

これらはいずれも海外からの報告ですが、日本でも、「風邪を引いたけれど、すぐ治したいから抗生剤が欲しい」とか、「熱が出ても抗生剤をくれない医者には行かない」と思っている方はいるのではないでしょうか?

抗生剤の適正使用のために、処方する医師側の意識、また患者側の理解、ともに改善していく必要があります。

Abx

出典:CDC

これは、アメリカ疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)による抗生剤の適正使用啓発ポスターです。

「その抗生剤は、あなたが本当に必要なときにきちんと効きますか?」と女の子のおでこに書かれています。写真の下には、風邪のようなウイルス感染には抗生剤は効かない、不必要な抗生剤使用は、将来の感染を治療困難にするなどと書かれています。

誰にでも細菌感染によって抗生剤が本当に必要なときがくる可能性があります。その際に、きちんとその薬が使えるように、不必要な抗生剤の使用は、なるべく減らしていかなくてはいけません。

次回は、なぜ耐性菌が増えているのか?ということについてもう少し説明する予定です。

[文献]

  1. Andrew Cole, 2014, “GPs feel pressurised to prescribe unnecessary antibiotics, survey finds,” BMJ, 349:g5238.
  2. Centers for Disease Control and Prevention, 2014, “Antibiotic/Antimicrobial Resistance,” Atlanta, GA:Centers for Disease Control and Prevention, (Retrieved September 27, 2014, http://www.cdc.gov/drugresistance/).
  3. Kronman MP, et al. 2014, “Bacterial Prevalence and Antimicrobial Prescribing Trends for Acute Respiratory Tract Infections,” Pediatrics.
Credoをフォローする