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9月半ば、大阪を中心に展開するスーパーやまもとが、顧客の釣り銭が上限に達すると金額を上回る額面のギフト券と交換するポイントカードサービスを提供していたが、破産手続きの際ポイントカードに残高のあった顧客が破産したスーパーの債務者となった。

通常、破産手続き時には、ポイントカードは失効する。しかし、今回のスーパーやまもとでは、ポイントカードが失効しなかったため、顧客までもが債務者になってしまった。弁護士でさえ前代未聞と話すほどの珍事例となった。(参考文献1)

 

資金繰りとは、お金のやりくり

活動をするにあたり、現金不足にならないようにやりくりすることを、資金繰りという。今回は資金繰りを、大学生の資金繰りと経営者の資金繰りの2つにわけて考えていく。まずは、簡単に大学生の資金繰りから資金繰りについてのイメージを掴んでいく。

 

大学生の資金繰り

大学生にも必要な資金繰りというお金のやりくりについての考え方を知るために、2つ例を用意した。

例1,コミケで出展する場合、決済手段は何を用意する?

あなたがコミックマーケットで、自作のマンガを200円で売るとする。いまの現状として、金欠でいますぐ遊ぶお金が欲しいとする。さて、決済手段はどうするか?ここでは、現金支払いがベストになる。なぜなら、現金はすぐお財布に入るからである。

もし、クレジットカード決済をさせていたならば、利用者は、翌月 or 翌々月払いで振込をする。それまで、売れてるのに実質としては手元に現金がない状態が続く。だから、遊ぶお金が足りないなら、現金支払いがベストなのである。

例2,夏休みは、派遣のバイト。

夏休みはプール行きたい、旅行したい、デートしたい、だから臨時のお金が欲しい。バイトといえばコンビニだけど、給料は時給制で月末締め翌月払いが一般的とされている。それまで待てない。派遣であれば即日、週末払いのある仕事の募集もかかっている。翌月払い、即日と週末払いでは、後者のがすぐ収入が入る。だから、夏休みなどの長期休暇には、いますぐお金がほしい人向けに即日収入というウリ文句が書かれたバイト募集が求人サイトに多く掲載されるのだ。

このようにお金が欲しいから、モノを販売するときにクレジットカードではなく、現金払いを要求した、コンビニバイトではなく、派遣に登録してサクッと稼ぐことは、お金の流れを考えた立派な資金繰りとなる。女子大生であれば、個人レベルでのお金のやりくりをする考え方を身につけることで、夫婦生活の家計のやりくりにも応用することが出来る。

 

経営者の資金繰り

大学生の資金繰りの事例を通して、「資金繰りってそういうことだったのか」とわかっていただけただろうか?次は、経営者の資金繰りを紹介する。複雑ではあるが、現金の増減に注目して見ていただきたい。

企業の使命は、利益を出すことで現金を増やしていくことである。利益第一ではなくfacebook創業者マーク・ザッカーバーグのように「要するに、金儲けのためのサービスを作るのではなく、少しでもいいサービスにするためにお金を稼ぐ」(参考文献2)という考えを持つ人もいるが、どちらにしても企業の成長にはお金が必要なのである。

また、企業を経営するにあたり重要なのは、極論ではあるが現金が足りなくなることを防ぐことある。「あそこの企業は、赤字出した。」とは聞こえは悪いが、赤字であっても現金さえあれば倒産しないのである。

なぜなら、不振続きの任天堂のように「任天堂には8,128億円の現金預金がある、というのは大量の財務データに埋もれた驚愕の事実であろう。仮に毎年200億円の経営損失を出したところで2052年までは十分持つ計算となる。任天堂は同時に建物・設備・投資に4,690億円ほどの資産があり、それらが全て尽きたときに初めて(2075年となるが)破綻前の自社IP売却の手続きに移る必要性に迫られるはずだ」と、いうことが起こるからである。(参考文献3)

 

経営者として企業の資金繰りは、次のような3つの例がある。

1、出資を受ける。自社で成長性が高い事業があるが、この先成長していくには現金が少ない。そこで、成長の見込みがある事業を行っている会社だということを、利害関係者(業界用語 ステークホルダー)へ説明し現金を増やそうとする。こうして事業を成長させていくことができる。

2、融資を受ける。

3、取引先との料金価格の改訂、人件費、広告費の支出額を抑える。

*なお、投資と融資は、お金を受け取る行為であるが、意味は違う。投資とは、返済する必要のないお金を受け取ることで、融資とは、返済する必要のあるお金を受け取ることである。(参考文献4)

企業経営の豆知識

今回のスーパーのポイントカード導入による現金増加は、借金になる。しかし、企業の経営では決して悪いことではない。なぜなら、返済する必要のある負債を増やせば、その分の資金が資産となる。売上に自信があれば、負債も決して悪いものではない、とする考えがあるからである。(参考文献5)

 

企業の資金繰りを、実践シミュレーション

ここからは、大学生と経営者の資金繰りで学んだ資金繰りを、スーパーやまもとの経営者になった気持ちで実践的にシミュレーションしていく。

キャッシュバックの仕組みについて。スーパーやまもとは、顧客の100円以下のお釣りを預かり、貯蓄されたお釣りが2000円になると、プラス500円上乗せでキャッシュバックをする仕組みをポイントカードでしていた。経営の言葉で説明すると、スーパーは、顧客から2000円の借金をする。

その借金を事業の資産として、成長させる。そのおかげで成長させた収益から、顧客に上乗せ500円で返済をするということになる。返済するということは、支払い分の現金を用意しておく必要がある。これには、総額で常時2000円に達するだろう見込みの借り入れた人数分の2500円を支払えるようになっていないといけない。お金がないので、キャッシュバックできません、というのは避けなくてはいけないからである。

公式サイトで決算書を公開していないため実数はわからないが、おおよその試算はすることができる。小売業界をはじめ、2:8の法則 2割の客が、8割の収益をあげる法則があるが、ここでは、ポイント会員の稼働率が必要になるので、稼働率を7割として計算する。

すると、常時カード会員のうちポイントを2000円まで貯め、2500円キャッシュバックされる確率が高いとした場合の対象者は、1万3000人の7割 9100人になる。

*ここでの稼働率とは、リピーターとしての稼働率という意味で用いる。

スーパーは、この人数分のキャッシュバックをできるだけの現金を保有していないといけない。年間に1回だけキャッシュバックをするなら、9100人×2500円=2275万円が必要だとわかる。

しかし、スーパーへ買い物に行って、年間で1回だけしか2000円分のおつりにしかならないことは不自然である。利用頻度が異なる顧客がいて当然であるからだ。そこで、顧客を買い物に来る頻度別に分類をして、より実生活に近い計算をしてみる。

あったらいいなぁ、スーパーマーケットの新サービスとは?のアンケート結果から、全体の7割以上が「1日置き」の頻度で、20、30代は、まとめ買いでスーパーを利用とあるので、これを会員に当てはめる。顧客を2つの利用頻度別に分類し試算すると、

A、9100人の7割 3170人は、2日に1回の頻度で買い物をする。

B、残りの3割 780人は、7日に1度買い物をする。

スーパーは、年間4778万円の支出となる。この金額の現金を保有していないと、キャッシュバックを提供できなくなるのだ。詳しい計算については、この記事の最後で紹介している。

 

上記の金額を保有していても人件費、固定費、販促費などの支出があるため、それ以上の現金を持っている必要がある。昨今は、野菜、乳製品の仕入れ額が高騰になり、事業が芳しくないと、赤字が出る。最初は切り崩せた現金も、徐々に余裕がなくなる。

すると、建物を売却して現金を増やす、リストラ、賃金ダウンによる人件費の削減、広告費の削減などで支出を減らすなどの手法を取る。

銀行に融資を貰うにしても、収益が本業のスーパー事業の好調さではなく、人件費の削減、販促費の削減によるものとされると、不調な事業にお金を貸しても返済されないと考えられ、融資をしてもらえない。となると、余裕がない現金を増やす手立てが見つからずに、現金がなくなり、倒産してしまう。

今回のスーパーは、11億円の赤字だったそうだが、倒産したとなると任天堂のように赤字が出ても補填できるほどの現金が手元になく、融資も受けられずに倒産したといえる。

以上、スーパーやまもとを事例に、実践的な資金繰りのシミュレーションをした。大学生と経営者の資金繰りを含め、ここまでで学んできたのは、お金の流れを意識することだった。企業経営者だけが必要だと思われがちな資金繰りだが、実は個人の日常生活にとっても重要である。知っておいて損はないだろう。

 

計算方法

*スーパーやまもとでは、100円以下のお釣りを2000円になるまで貯めていたので、1度に30円のお釣りが貯まると仮定をして計算をする。この30円は、平均的なおつりの金額は、227円である、という結果から100円以下の端数27円を四捨五入した金額である。(参考文献6)

A、9100人の7割 3170人は、2日に1回の頻度で買い物をする。

1度に30円のお釣りが貯まると、2000円は67日分で達成する。2日に1回ペースであれば、134日で2000円になる。

年間365日を、134日で割っていくと、2.71・・・なので、年間で3回キャッシュバックを受けることとする。

一回目の支払いで、6370人×2500円=1592万5000円が必要。

それを、年間5回繰り返すと、1592万5000円×3回=4777万5000円。

B、残りの3割 780人は、7日に1度買い物をする。

1度に30円のお釣りが貯まると、7日に1回であれば、469日で2000円になる。

次の年の支払金額に組み込まれるが、1年間の日数を超えて支払いをすると日数がズレていき難しくなる。

そこで、1年間で支払うことができるタイプAの顧客にだけ必要なキャッシュバック金額を計算すると、4778万円、約4780万円という計算結果になった。

[参考文献]

1 2014年、「スーパー倒産、買い物客1万3000人が債権者になる異例の事態 」、まとめ2ch、(2014年10月2日 取得)
2 エカテリーナ・ウォルター、2014年、『マーク・ザッカーバーグの思考法』 、講談社、 P72
3 2014年、「【無敵】任天堂は38年間赤字でも大丈夫なほど預金がある」、オレ的ゲーム速報@JIN(2014年10月6日 取得)
4 2014年、「投資と出資と融資の違い」、Money Magazine、 (2014年9月26日 取得)
5 並木秀明、2011年、 『マンガ 早わかり財務諸表入門 (サンマーク・ビジネス・コミックス)』、サンマーク出版、P57
6 2008年、「支払い、お釣りの平均金額」、お釣り、(2014年10月2日 取得)
2014年、「あったらいいなぁ、スーパーマーケットの新サービスとは?」http://www.asahigroup-holdings.com/company/research/hapiken/maian/bn/200902/00274/、アサヒホールディングス、(2014年9月26日 取得)
山田真哉、2012年、『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』、小学館

Photo by Steven Depolo

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