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錦織圭選手が全米オープンで準優勝、続くマレーシアオープンでも優勝、そして楽天オープンで優勝し、今全世界的に大きな注目を集めています。

上海マスターズでは連戦の疲れからか敗退してしまいましたが、しっかり疲れをとってまた次の試合に臨んでほしいと思います。

錦織選手が次に出場すると思われる最も大きな大会は来年1月19日に開催される全豪オープンです。

全米の放送権は、地上波と衛星波を一緒にしたセット販売で、wowowが両方の権利を保有していましたが、全豪はばら売りでwowowが保有しているのは衛星波だけとなっています。

空いている地上波放映権を民放各社が獲得すれば、錦織選手の活躍をwowowに加入せずとも見られる可能性はあります。

 

錦織選手が世界で戦えている理由とは

こうして注目が集まっている錦織選手ではありますが、テニスの試合を殆ど見たことがないという人もいるかと思います。テニスの試合は試合時間がどうしても長くなりがちで、全ポイントを集中して見るのはあまり経験がない人にとっては難しいかもしれません。

そこで本稿では、錦織選手が世界を相手に何を武器として戦っているのかを錦織選手の今シーズン統計データから分析していきたいと思います。見るべきポイントの一助となれば幸いです。

本稿で用いたデータは全てプロテニス協会(Association of Tennis Professionals)で閲覧することが出来る各選手のATP Match Factsから引用しています。

 

 テニス用語、各項目についての説明

まず基本的なテニスの用語について説明いたします。

テニスのポイントの流れは、サーバーとレシーバーを1ゲーム(基本的に4ポイントでゲームを獲得出来る)ずつ交代しながら進んでいきます。

サーバーがサーブを打ち、レシーバーがそれを返すところから全てのポイントは始まります。サーブは二回打つ権利があって、それぞれを1stserve,2ndserveと呼びます。二回サーブを失敗するとダブルフォルトという扱いになり、その時点で自分の失点となります。

自分がサーブするゲームのことをサービスゲームと呼び、逆にサーブを返すゲームのことをリターンゲームと呼びます。そして、サービスゲームを取ることをキープ・またはホールド、逆に相手のサービスゲームを取ることをブレイクと呼びます。

一般的に、サーブはテニスの中で唯一相手の影響がなく打てるショットなので、サービスゲームを出来るだけ確実にキープすること・同時に相手のサービスゲームをいかにしてブレイクするかがテニスにおける試合の焦点になることが多いと思われます。

 

次に今回用いたデータに関する説明をいたします。

*1stserve…1stserveが入った確率を表します。

*1stserve points won…1stserveが入って、ポイントを取得した確率を表します。

*2ndserve points won…2ndserveが入って、ポイントを取得した確率を表します。

*Break points saved…相手にブレイクポイントを握られた時、そのポイントを守った確率を表します。

*Service Games Won…自分のサーブするゲームを取った確率を表します。

*Service Points Won…自分がサーブするポイントを取った確率を表します。

*1st Serve Return Points Won…相手の1stserveが入ってきたリターンポイントを取得した確率を表します。

*2nd Serve Return Points Won…相手の2ndserveが入ってきたリターンポイントを取得した確率を表します。

*Break Points Converted…自分がブレイクポイントを握った時、何回そのポイントを取ることが出来たかの確率を表します。

*Return Games Won…自分がリターンするゲームを取った確率を表します。

*Return Points Won…自分がリターンするポイントを取った確率を表します。

*Total Points Won…自分がプレイした全ポイントをどれだけ取得できたかの確率を表します。

 

まず、錦織選手個人の統計データを見ていきます。

現在錦織圭選手はランキング6位です。

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ただやはり錦織選手個人のデータを見るだけではよくわからないと思います。

そこで次に、同じくATPから取得できるランキング100位以内の選手全員のデータを用いて錦織選手がどの位置にあるのかを見ていきたいと思います。

項目毎に上位10人、そして錦織圭選手の順位・数値を合わせて表にしました。

並び替え時のランキング10位以内の選手には、名前の後ろに現在のATPランキングを()で付け加えています。

 

サービスゲームに関する確率

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ここまでがサービスゲームに関するデータとなります。やはり日本人選手は体格が小さいためかサービスに関する項目で上位10人に入ることは出来ていませんでした。

男子テニスでは、サービスで主導権を獲得できることが必要不可欠であると言われていますが、錦織選手を世界6位に押し上げた力はそこではないということがデータからも分かるかと思います。

 

リターンゲームに関する確率

続けてリターンゲームに関する確率を見ていきます。

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このように、リターンゲームに関して錦織選手は世界に通用する成績を残しています。相手にとって有利なサービスゲームを約3割取っていること、リターンポイント毎の確率で言えば4割取得できていることは非常に大きなアドバンテージであると言えます。

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サービスでランキング10位以内に入ることは出来ていませんでしたが、リターンというアドバンテージを生かして総合的なポイント取得率では6位に位置することが出来ています。

 

回帰分析で錦織選手の武器と、ランキングとの関連性を調べる

このように、錦織選手がリターンを武器にしていることがデータから読み取れたと思います。

では、錦織選手が10位以内に入っていた項目はランキングとどれだけ関連性があるのでしょうか。本稿ではそれを同じくランキング100位までの選手のデータをサンプルとして用いた回帰分析によって調べてみました。

なお、重回帰分析では有効性が見られず、単回帰で結果が出たのでそちらを表示します。

 

回帰分析に関して簡単に説明しますと、数式では次のような表示になります。

Y(ランキング値)=(回帰係数)*X(各項目の値)+(調整値)

こうした数式を仮定して、100人分のデータから回帰係数を推定します。そして算出された値に対して統計処理を行ってその有効性を確認します。

今回はt検定と呼ばれる方法でその有効性を確認することが出来ました。

(※t臨界値は95%信頼水準で算出しています。)

 

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以上の表はその結果です。各項目が1ポイント増えたときにランキングの値がどれだけ変化するか表しているのが回帰係数となります。

全て大きなマイナスの値となっているので、これらの値が増加することはランキングを上げることに大きく寄与していると言えます。

 

錦織選手の強みがリターンにあること、そしてそのことはテニスにおいて大きな意味を持っているということがデータから実証できたかと思います。

今後、殆どテニスの試合を見たことがないという人でも錦織選手の試合を見る機会があるかと思います。

そういった時には是非錦織選手のリターンの精度に注目する、もしくは自分で注目する所を決めて見て頂ければよりテニスの試合を楽しめるのではないでしょうか。

Photo by wikimedia commons

[参考文献]
*日刊スポーツ.com, 2014年, 錦織争奪戦 全豪放送権に地上波も名乗り(2014年10月7日, http://www.nikkansports.com/sports/news/p-sp-tp0-20141007-1378546.html)
*ATP,2014年, ATP Match Facts(2014年10月12日, http://www.atpworldtour.com/Matchfacts/Matchfacts-Landing.aspx)

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