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10月も終わりにさしかかり、肌寒い日が続くようになりました。これからの季節に気をつけないといけないのが「インフルエンザ」です。そして、この「インフルエンザ」が流行する季節になると、ある噂も流れはじめます。

「インフルエンザワクチンって効かないらしいよ」

「インフルエンザワクチンって打たないほうがいいらしい」

今回の記事では信頼ある情報に基づいてこの噂について検証していきます。
インフルエンザワクチンは任意接種ですので、

この記事を読んで、打つか打たないかはご自身で決めてください。

 

数値で見る、インフルエンザワクチンの有効率

現在、数多くの論文がワクチンによるインフルエンザの感染予防・重症化予防の有効性について、ある程度の結果を示しています。

まず初めに簡潔に言いますと、インフルエンザワクチンの効果は、「感染予防の有効率約60%、重症化予防の有効率80%前後」と言えます。

この数値は、CDC(アメリカ疾病予防センター)が根拠としている文献から引用しました。また、詳しい数値を下の表にまとめます。(文献1)
(追記: 都合のいい古いデータをとってくるのではなく、2013年にCDCが発行した文献を元に最新のデータを用いて議論しています。)

対象 結果指標 有効率
成人(18~65歳) 感染 59%
基礎疾患のある成人(60歳以下) 入院 87%
78%

(出典:筆者作)

では、有効率59%とはどういう意味なのでしょうか。よく誤解される値なので分かりやすく解説します。下の図を見てください。

9(出典:筆者作)

有効率とは、インフルエンザワクチンを打たずにインフルエンザにかかってしまった人が、実際ワクチンを打っていた場合どれくらいかからずにすむかを表すパーセンテージです。

ワクチンを打った人の中で59%にしか効かない、といった数値ではありません。注意してください。

 

感染予防の「有効率約60%」という数値を評価する

実はこの値、ワクチンとしては低いほうなのです。

基本的にワクチンは、免疫の二度なし現象(1回かかった病気に2度とかからないこと)を引き起こすことを意図して作られています。たとえば、黄熱病ワクチンは一度接種しておけば一生涯黄熱病の感染をほぼ100%防ぐことができる(有効率もほぼ100%になる)と言われています。

しかし、インフルエンザのワクチンに関して言えば、期間も1シーズンしかもたない上に感染予防も59%しか期待できないのです。

これは、インフルエンザワクチンの目的が少し違ったところにあることを示唆します。

ここで、先ほどの表の「基礎疾患のある成人」の項目を見てください。基礎疾患のある成人というのは、インフルエンザにかかった時に重症化しやすいと考えられている人たちです。この人たちの中でインフルエンザワクチンがどのくらい重症化を予防できるか調べると、

「入院が必要になるほどの重症化を87%の有効率で予防してくれて、死に至るほどの重症化を78%の有効率で予防する」との結果となっています。

無題

(出典:筆者作)

これはとても高い数値といえます。ワクチンを打つことで今までインフルエンザで亡くなっていた10人に8人の命が救われるという計算です。

実際アメリカなどの海外の多くの国ではインフルエンザワクチンの接種の目的は「高齢者などのハイリスク者における重篤な合併症や死亡を予防すること」としています。

インフルエンザワクチンの有用性の議論がよくすれ違う理由は、われわれに「ワクチン=感染を予防するもの」という強いイメージがあるからなのかも知れません。

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