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マイナビニュースによると、9月下旬政府は、お菓子やパン製造に使われる脱脂粉乳、バターやケーキの製造に使われる生乳が不足することから、安定供給を図るためにバター3,000トン、脱脂粉乳1万トン 計1.3万トンの追加輸入を決定した。(文献1)

 

脱脂粉乳、バターは、どう作られるのか?

そもそも、脱脂粉乳とバターはどう作られているのか?

実は、脱脂粉乳とバターは、同じ生乳から作られている。詳しく言うと、製造工程の違いにより同じ生乳から脱脂粉乳、バター、チーズ、ヨーグルト、牛乳、アイスクリームなどが抽出されているのである。(文献2)

 

減少する生乳生産量

農林水産省で公開されている生乳生産量の数値から、筆者が作成したグラフが以下である。

年間生乳生産量

1993年からの2014年の11年間の統計を見ると、平成5年では9000トン近くあるのに、ここ数年は約7000トンを推移しており減少具合がよくわかる。

*農林水産省では、一番古い記録が昭和41年(1996年)からある。ここでは、誤解がないように連続した年間の推移で比較するために除外した。(文献3)

農業共同組合新聞でも、牛乳の生産量は、前年度をやや下回る程度で推移している。「乳飲料」は比較的堅調、「はっ酵乳」は好調に推移することが、予想される。牛乳類の上期生産量は、前年比99.1%の250万8000kl(2208t *1000kl=1トン)の見通しとなる。

脱脂粉乳、バターなどに使われる特定乳製品の上期生産量は前年度を大きく下回る。バターは前年比89.6%の3万tと大きく減少すると予想される、とあるように脱脂粉乳、バターだけが不調と報道されている。(文献4)

 

なぜ脱脂粉乳、バターが不足するのか?

では、なぜ脱脂粉乳、バターが不足するのか。同じ生乳から抽出されるのは、脱脂粉乳、バター、アイスクリームなどがあるのに、なぜ、脱脂粉乳とバターだけが不足し、輸入する事態になってしまったのか。

その理由は、北海道依存という乳牛業界の構造にある。というのも、消費地との距離が遠い北海道では、運送しやすいようにほとんどの生乳が脱脂粉乳とバターに加工されてきたからである。

一方、ほとんどが国産で供給される牛乳は、都府県が出荷することで対応していた。(文献5)

このことから、脱脂粉乳とバター不足の原因特定のためには日本全体の生乳生産量の推移ではなく、北海道の生乳生産量を調べる必要がある。以下の図は、農林水産省で公開されている地域別生乳生産量の数値から筆者が作成したグラフである。(文献6)

北海道と都府県の生乳生産量

北海道と他の都府県を比較すると、生産量にほとんど差が見られない。つまり、全体を見渡すと国内の生乳生産量はその約半数を北海道に依存していることがわかる。

従来から根室、釧路、稚内と、酪農しか適していない土地がある北海道に依存してきたわけではなく、都府県の生乳生産量が減少してしまい、北海道の生乳生産量への依存度が高くなってしまったことが高い依存度の原因のようだ。(文献7)

さきほども指摘したように他の都府県が牛乳を、北海道が脱脂粉乳とバターを供給している為、それぞれの製品に対する需給を調べる必要がある。

需給状況について全国酪農協会は、国産牛乳・乳製品は、需要の減少が見込まれており需給が縮小均衡状態にある。第3四半期の脱粉需給は、生産量3万3200t(4.0%減)、消費量3万5900t(5.5%増)。バター需給は、生産量1万4800t(4.0%減)、消費量2万600t(1.1%減)と発表している。(文献8)

上記の発表から、都府県全体で供給している牛乳は需要が落ちてきているので、都府県での生産量の減少は問題にならない。一方、脱脂粉乳とバターの需要は増加しているのに、それを一手に支えてきた北海道の生産量が減少していることが、追加輸入を決定しなければならないほどの不足を引き起こした、と結論付けられる。

大半がバター、脱粉など国産の主要乳製品の原料となっている北海道の生産量がマイナスになっていることが、生乳不足をより深刻にしている、と言われるのである。(文献9)

 

まとめ

脱脂粉乳とバターの輸入決定の裏には、国内の脱脂粉乳とバターの生産量が北海道に依存していること、北海道の酪農家が減少している背景がある。現在、安倍政権が掲げる強い農業にも関係があり、また甘利経済産業大臣が交渉を進めているTPPの締結内容と大きく関係する分野である。今後の動向に注目が集まる。

[参考文献]
文献1、2014年、「農水省、「バター」と「脱脂粉乳」を緊急輸入–安定的な供給を確保」、マイナビニュース、(2014年10月16日 http://news.mynavi.jp/news/2014/09/29/053/ )
文献2、2014年、「CBPってどうやってつくられるの?」、CBPってどうやってつくられるの? | CBP専門サイト」、(2014年10月17日 http://cbp-jp.com/koutei.html)
文献3、2014年、「牛乳乳製品の生産動向(平成26年8月分)(PDF:168KB) 生乳生産量及び用途別処理量」、農林水産省、(2014年10月17日 http://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/lin/ )
文献4、2014年、「上期の生乳生産量 前年比2.4%減の見込み」、農業共同組合新聞、(2014年10月17日 http://www.jacom.or.jp/news/2014/05/news140528-24326.php )
文献5、2014年、「牛乳の過剰問題」、独立行政法人 経済産業省研究所(2014年10月18日 http://www.rieti.go.jp/users/yamashita-kazuhito/serial/009.html)
文献6、2014年、「牛乳乳製品の生産動向(平成26年8月分)(PDF:168KB)地 域 別 生 乳 生 産 量」、農林水産省、(2014年10月17日 http://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/lin/ )
文献7、2014年、「第78回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会」、一般社団法人日本乳牛協会、(2014年10月17日 http://www.nyukyou.jp/topics/20140717.html)
文献8、2014年、「「生乳需給は縮小均衡状態に」―牛乳値上げ、動向注視・Jミルクが第3四半期の見通し」、一般社団法人 全国酪農協会、(2014年10月18日 http://www.rakunou.org/newspaper/201311/detail/01A.html)
文献9、2014年、「生乳減産が深刻化 乳製品の需給逼迫 脱粉国際価格も上昇」、日本農業新聞、(2014年10月17日 http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=25787)

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