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スクウェア・エニックスは2014年10月6日,Wi-Fi接続されたスマートフォンやタブレット端末で同社のゲームタイトルを楽しめるストリーミングサービス”DIVE IN”(iOS/Android)の環境テストを実施するため、当初予定されていた10月9日のサービス開始日を変更すると発表しました。

独自のストリーミングサービスという新しい領域に挑戦していくスクウェア・エニックスの今後の動きには注目が集まりますが、スクウェア・エニックスがこうしたサービスを提供する背景には何があるのでしょうか。

本稿ではスクウェア・エニックスが公開する決算書から2010年3月期から2014年3月期までの業績を主に収益性・効率性・セグメントという観点で、”DIVE IN”が発表されるに至った経緯を考察していきます。

今回の前編では、考察の背景知識としてスクウェア・エニックスに関する業績分析を主に扱っていきます。(後編はこちら)

なお、今回用いた図表は全て参考文献から筆者が作成いたしました。

 

スクウェア・エニックスとは

スクウェア・エニックスは2003年に”ファイナルファンタジー”をブランドに持つスクウェア、”ドラゴンクエスト”を売りとするエニックスが合併して出来たものです。

実際にこれらブランドがどれだけの本数を売り上げてきたのかについて、乱暴ではありますが単純にシリーズ売上本数を合計し、他社ブランドと比べたものが次の表となります。

本数1

シリーズの歴史の長さもバラバラなので一概に比較はできませんが、十分な存在感を示していることが分かるかと思います。

このようにゲーム業界において非常に大きな力を持つ企業が誕生したのですが、昨今の業界全体の傾向としてゲームハードの高性能化に伴い開発費が高騰しており、その費用を回収しきれずに経営を圧迫しているということがあり、スクウェア・エニックスも苦しい経営を強いられていると言われています。

次に本稿で中心に見ていく”DIVE IN”について説明していきます。

 

”DIVE IN”とは

このサービスは専用アプリ(無料)を用いて『ファイナルファンタジーVII インターナショナル』、『ファイナルファンタジー XIII』などスクウェア・エニックスが家庭用ゲーム機向けに提供してきたゲームをスマートフォンやタブレットなどでプレイできるというものです。

今後、タイトルは現時点で発表されている3タイトルから過去作のリメイクを中心に増えていき、将来的には新作ゲームも提供していくと松田社長はインタビューで語っています。

インタビューの内容はこちらのページから見ることが出来ます。

今までゲーム専用機でしか動かせなかったタイトルをスマートデバイス上で動作出来るという点に大きな新規性があることは勿論ですが、ただ動作するというものでもなく、Wi-Fi環境下で6Mbps以上であればタイムラグもなく高画質にプレイできると社長の松田洋輔氏は述べています。

スマートフォンやタブレットというソーシャルゲームが主流のプラットフォームに、新しい風を吹かせるものだと考えられます。

サービス提供の最大の狙いは、ゲーム専用機に比べて圧倒的に普及率の高い汎用機(スマートフォン・タブレット)で同社の看板商品であるファイナルファンタジーシリーズなどをプレイできるようにすることでユーザーを取り込んでいく狙いがあるのは明らかなことです。

本稿ではその狙いについて、少し深読みをして、同社の業績などのデータに理由を求めていきたいと思います。

 

3つの経営指標からの分析

本項では決算書から得られるデータに対して、経営指標を算出し、スクウェア・エニックスの経営状態について見ていきます。

まず指標に関して、厳密ではありませんが端的な説明を行っていきたいと思います。本稿で用いる指標は以下の3つです。

  • ROA(Return On Assets)
  • 売上高利益率
  • 総資産回転率

これらの指標は損益計算書・賃借対照表から計算することが出来ます。損益計算書と賃借対照表はその企業の経営状況を、それぞれ違う視点からまとめたものです。

損益計算書は主に収益と費用について、賃借対照表は資産(会社として持っている財産)と負債(会社として借りた借金など)についての諸表となります。

次にこれら諸表について説明していきます。

・損益計算書

損益計算書1
青い枠の部分は基本的に商品から得る利益ではなく、諸々の費用を表しています。右に行けば行くほど費用を除いて利益だけが残っていきます。こうして最終的に得られるのが(当期)純利益です。

・賃借対照表

賃借対照表1
資産には負債を含めた総資産と、負債を含めない純資産とがあります。表の中ではこのように表現されます。

 

それでは指標の説明に移っていきます。

*ROAとは

総資産利益率と訳されます。計算式は次の通りです。

ROA = 当期純利益 / 総資産

roa1

会社が事業を行う際に用いるのが総資産です。その形は資金であったり工場施設であったりと様々ですが、それら資産を用いることで費用を除いた利益をどれだけ獲得できたか、ということを表すのがROAです。

*売上高利益率とは

計算式は以下の通りです。(純利益以外を用いるものもあります)

売上高利益率 = 当期純利益 / 売上高

売上高総利益率1

この指標が大きければ大きいほど、企業は事業を行う際に費用を削減し純利益を確保することが出来ている、つまり効率的に事業を進めることが出来ていると考えることが出来ます。

*総資産回転率

計算式は次の通りです。

総資産回転率 = 売上高 / 総資産

回転率

売上高が総資産の中に占める割合を計算することで、事業に投資した総資産がどれだけ有効に活用されているかを示す指標です。値が大きいことは、それだけ資産を投資した際の反映率が高いと言えます。

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