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ナポレオンの逸話

偉大な軍人・政治家として歴史上に燦然と輝くナポレオン・ボナパルト、いくつもの逸話の中でもとりわけ興味を惹かれるのが、彼の睡眠に関するものです。

「ナポレオンは一日に3時間しか睡眠をとらなかった」

このようなエピソードは聞いたことがある方も多いかもしれません。
ナポレオンの他にも、発明家のトマス・エジソンやレオナルド・ダ・ヴィンチなども一日の睡眠時間が短かったことで有名です。

みなさんは一日何時間寝ていますか?6時間?それとも7時間?

5時間を切るときついなぁなんて人も多いかと思いますが・・・。記事の題名にもあります超ハイテクなアイマスク「Neuro:On」を使えばみなさんも偉人たちの仲間入りができるかもしれません。

 

ハイテクなアイマスク「Neuro:On」

この度、睡眠時間を4時間も短縮させることが出来るとするハイテクアイマスク「Neuro:On」がメディアに発表されました。販売は来年の一月からということで、まだ手にすることはできないのですが、同製品のホームページによると

neuroonThe neuro:on is a professional sleep and rest manager that helps you feel refreshed after waking up and relaxed throughout the day.

The neuro:on is a wearable sleep mask that measures your biological signals,
(引用元:Neuro:On -an intelligent sleep mask | Intelclinic)

眠っている間の脳波や筋肉の動き、体温など様々なものを計測して、睡眠・休息の質を管理するデバイスのようです。

そして寝起きの気だるさを最小化するようなタイミングで起こしてくれるようですが、その「起こし方」は、なんとアイマスクに内蔵された光源を使い「人工的な夜明け(artificial dawn)」を作り出すことで付けている人を起こしてくれるとのことで、なかなかユニークなアイディアではないでしょうか。

こちらの商品はアメリカのクラウドファンディングサイト「Kickstarter」に登録されているもので、サイト上で出資を募り商品化にこぎつけたようです。その「Kickstarter」上ではこのように紹介されています。

NeuroOn: World’s first sleep mask for polyphasic sleep
(世界で最初の多相性睡眠専用アイマスク)

through great sleep efficiency, Polyphasic sleep can give you an extra 4 hours of free time every day.
(多相性睡眠による短くかつ質の良い睡眠は、あなたに毎日4時間のフリータイムを提供します。)
(引用元:KICKSTARTER | NeuroOn)

つまり多相性睡眠を通して、われわれの睡眠時間は4時間短縮される(一日2時間程度の睡眠で良いことになる)ということを謳っています。

でもそもそも多相性睡眠(polyphasic sleep)ってなんですか?思った人も多いかと思います。とりあえず、浅い眠り(レム睡眠)の時に起こしてくれるのかなぁということは想像がつくかと思いますが・・・

これ以降は「多相性睡眠」と「レム睡眠・ノンレム睡眠」ということを絡めて、なぜ「2時間睡眠でも大丈夫」と彼らが語るのかを詳しく解説していきたいと思います。

以下今回の記事を読む時の前提となる知識ですが、

レム睡眠=浅い眠り
ノンレム睡眠=深い眠り

ということを覚えておいてください。

それでは睡眠の科学、スタートです!

 

多相性睡眠ってなに?レム睡眠・ノンレム睡眠とは?

【多相性睡眠とは】
「多相性睡眠」とは簡単に言ってしまえば通常一回でまとめてとる睡眠を、何回かに区切り良く小分けしてとる睡眠ということができます。(詳しくは一番最後に書いたので、興味のある方は読んでください→「多相性睡眠のわかりやすい解説」)

発明家のエジソンなどは、「日に2~3回、1時間くらいうとうとするだけでほとんど睡眠を取らなかった」と言われていますが、これがまさに「多相性睡眠」に当たると考えられます。

【レム睡眠とは】
睡眠中に現れる浅い眠りのこと。
・眠りは浅い
・眼球が急速に動いている
・脳は活発に動いている
・反対に体は完全に休息している(筋肉が弛緩している(力が入らない)ので、原則動くことができない)

レム睡眠とは本来REM睡眠と表記しますが、これはRapid Eye Movementの略で、もともと睡眠中に眼球が急速に動いているのを発見したのがレム睡眠の始まりであると言われています。

また、よくある勘違いですが「眠りが浅くて何度も寝返りをうってしまう」という時の「浅い眠り」というのはレム睡眠のことではありません。浅い眠りであるレム睡眠中は、体が弛緩しきっていて動くことすら出来ないからです。

【ノンレム睡眠とは】
睡眠中に現れる深い眠りのこと。
・眠りは深い
・眼球はゆっくりとしか動かない
・脳は休息している
・反対に体は動かすことができる

眼球が急速に動いているレム睡眠に対して、眼球の動かないNon-REM睡眠というものも定義されました。睡眠において重要なのはこのノンレム睡眠の方で、10時間寝ようが6時間寝ようが、深い眠りであるノンレム睡眠時間の合計が一定時間以上であれば、全体の睡眠時間が短くても問題ないということが知られています。

ここにNeuro:On「2時間睡眠」宣言の謎を解く鍵が潜んでいそうです。

 

Neuro:On「2時間睡眠」宣言の謎を解明!

さて、ここで謎を解明するためにはみなさんに1つ新しい知識を持ってもらう必要があります。それは「ノンレム睡眠の中にも4段階ある」ということです。

深い眠りとされるノンレム睡眠の中にもさらに眠りの深さ別に、4つの段階があることが知られていて、レム睡眠と合わせると、人間の眠りは深さごとに5段階で分けられるということになります。つまり眠りの深い順に、

ノンレム睡眠段階4→段階3→段階2→段階1→レム睡眠

と書く事が出来ます。

そしてみなさん先ほどの「謎を解く鍵」、覚えていますでしょうか。

「ノンレム睡眠時間の合計が一定時間以上であれば、全体の睡眠時間が短くても問題ないということが知られています。」と述べましたが、これは正確に言うと、「ノンレム睡眠段階3+4の合計時間が一定時間以上であれば、全体の睡眠時間が短くても問題ない」となります。そしてその目安が、健常男性ではおよそ2時間であると言われています。

やっとここでNeuro:On「2時間睡眠」の謎解明となりました。「Neuro:Onはノンレム睡眠段階3+4だけを抽出し、実質一日2時間睡眠をも可能にしうる装置」ということです。

でもどうやって?

人間においては、ノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)とが交互に訪れ、この二つで1セット(人間では約90分で1セット)を4~5回繰り返すことで一回の睡眠が成り立っていると言われています。

さらに、その1セット中の「ノンレム睡眠段階3+4」の割合は、第1セット目が最も高くなっています。つまり寝始め最初の約90分が最高質の睡眠ということが出来ます。

そしてさきほどから出てくる「多相性睡眠」とは、この1セットごとに起きる睡眠パターンでした。(わかりやすい解説はこちら→「多相性睡眠のわかりやすい解説」)

「Neuro:On」はこの第1セット目の質を最高に高め、その約90分の睡眠を一日に数回取るだけで長時間寝たのと同じだけの「ノンレム睡眠段階3+4合計時間」を稼ぐ装置だったというわけです。

長い道のりでしたがみなさんおわかりいただけたでしょうか?ここまで全てを理解したかたはもう睡眠知識のエキスパートです。この「Neuro:on」がなくてもある程度自分の睡眠を管理できることと思います。

最後に・・・この記事は、製品として「Neuro:On」の効果や宣伝文句を保証するものではなく、あくまでも「なんで2時間でも大丈夫って言えるの?」という疑問を解明したいという動機に基づいています。

【多相性睡眠のわかりやすい解説】

人間においては、ノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)とが交互に訪れ、この二つで1セットを4~5回繰り返すことで一回の睡眠が成り立っていると言われています。これは「単相性睡眠」と呼ばれる普通の睡眠です。

これに対し、ノンレム睡眠・レム睡眠の1セットごとに一回起き(覚醒し)、それを何回か繰り返すのが多相性睡眠です。
多相

1セットの長さは動物によってまちまちですが、ヒト以外の多くは「多相性睡眠」をすると言われていて、もともと動物の本能から考えればこちらの方がより原始的であるとする説があります。というのも動物は寝ている時が一番殺される可能性が高くたびたび起きるようでないと生き残れなかったからです。
しかしヒトは「住居」というシェルターを開発したことにより自分で身を守る必要がなくなり、睡眠パターンは「多相性睡眠」から「単相性睡眠」へと進化していったのでしょう・・・。

 

[参考文献]
日本睡眠学会,2009,『睡眠学』朝倉書店.
本多和樹,2007,『眠りの科学とその応用―睡眠のセンシング技術と良質な睡眠確保に向けての研究開発―』シーエムシー出版.

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