【読了時間:約 10分

前編では、今回の考察を進めるにあたって、その背景知識としてスクウェア・エニックスの過去五年間の指標推移、そして過去十年間の開発費の推移を見てきました。

前編で得られた結論は次のようなものになります。

スクウェア・エニックスは過去五年間においては、純利益がマイナスになるほどの費用を計上してしまったために不安定な指標推移を見せていた。費用をおおまかに開発費と販売費として大別して考えた時、開発費を過去十年間で調べてみるとこちらに関しては経営を圧迫しているというものではなかった。

(※前編での考察で、開発費として本稿ではコンテンツ制作勘定を用いました。研究開発費やソフトウェアを用いる場合もありますが、今回はゲーム開発の全体工程で捉えたかったのでコンテンツ制作勘定を用いています。)

後編では、続いて販売費の状況を見ていきます。

その後、スクウェア・エニックス自身が経営問題をどのように意識しているのかを同社が出しているアニュアルレポートの中から引用していきます。

そして、本稿の趣旨である”DIVE IN”がもたらす影響について述べていきたいと思います。

用いた図表は全て参考文献から筆者が作成いたしました。

 

販売費及び一般管理費を見ていく

本稿で見ていくゲーム販売に関わる費用は、損益計算書内の”販売費及び一般管理費”の中に含まれています。勿論、それら全てが販売に関わる費用ではなく人件費なども含まれています。

そこでまず、全体の内訳を見ていきましょう。過去10年間の金額を合計して、売上高における比率に関して簡単にまとめたのが次のグラフです。

ていせい2

(参考資料:過去十年間の内訳推移)

今回注目すべきは広告宣伝費・販売促進費、そして給料及び手当(人件費)となります。他の用語の説明に関してはここでは割愛させて頂きます。

人件費は開発費とも関連してくる部分なので、今回は主な考察の対象には含めませんでした。

 

広告宣伝費・販売促進費について

では、次に広告宣伝費・販売促進費について開発費と同じようにどのような傾向が存在するか見ていきます。

ていせい5

ということで、過去十年間の広告宣伝費・販売促進費を合計して抽出したのが上のグラフです。

前編で扱いましたが、純利益がマイナスになった2011年・2013年に注目すると売上高における比率がどちらも前年に比べて上昇していることが分かるかと思います。

比較のため、前編で扱った開発費に関するグラフをもう一度掲載します。

ていせい4

また両者の売上高における比率を同時に表したものが次のグラフです。

ていせい3

開発費の方が大規模なので全体として販売関連費用が圧迫しているという印象は確かにありません。しかし、ここでも2011年・2013年に注目します。特に2013年は開発関連費用と販売関連費用が逆の動きをしていることが分かるかと思います。

以上から、スクウェア・エニックスの経営不振時には販売関連費用が関係している可能性を示せたかと思います。

 

スクウェア・エニックスの認識

ここからは実際にスクウェア・エニックスがどのように経営状態を認識しているかについて、同社が公開しているアニュアルレポートから該当部分を見ていきましょう。主として2011年・2013年期のものから引用します。

アニュアルレポートは要所を抜き出す形で引用させて頂いております。

なお、レポート内で用いられているHDゲーム事業とはHigh-Definition、高解像度ゲーム(主に家庭用ゲーム機専用ソフト)のことを指しています。

[2011年]

当年度は新作において結果が出ませんでした。
家庭用ゲームソフト市場の競争は激しさを増しており、トップレベルのものと全く収益に繋がらないものとの極端な二極分化の様相です。こうした環境であるにもかかわらず、対応が中途半端でした。新規タイトル立ち上げを急ぐあまり完成度につき詰めが甘かったこと、また、中堅クラスでデビューして次回作から飛躍しようという漸進策をとったこと、これらが敗因だと考えます。

続けて2013年のものを見ていきます。

[2013年]

HDゲーム事業において、当社は当年度、欧米中心に3つの大型タイトルを投入いたしました。
これらのタイトルは、いわゆる家庭用ゲーム専用機に向けて開発をしていたもので、多くのゲームメディア等から高い評価をいただき、ゲーム開発面においては相応の成果を達成したものと評価しております。
一方で、販売面においては、他社の競合大型タイトルの投入が相次ぐなか競争が激化し、価格政策面で非常に苦戦を強いられました。
小売店向けへの値引費用や価格維持費用、また販売促進協力費用が大きくかさみ、出荷本数は稼げても収益がそれに見合わないといった状況となりました。これらは、損益計算書において、返品調整引当金繰入額が39億27百万円と、前年度よりも大きく増加して、利益にマイナスに働いた大きな原因であります。

以上のように、やはりスクウェア・エニックスはこれまでに開発費用・販売費用を投じざるを得ないHDゲームなどへの投資を回収しきれなかったことが業績不振に繋がっているという認識のようです。

ここまで見てきたグラフと合わせて考えてみると、2011年度は主にHDゲームに対する開発費用が、2013年度は小売店販売における費用が純利益を圧迫し、ROAなどがマイナスになってしまったのだと考えられます。

セグメント

もちろんスクウェア・エニックスはゲーム以外にもゲームセンターのようなアミューズメント部門、月刊少年ガンガンなどの出版事業など様々な展開をしています。ですが、やはりゲームを手掛けるデジタルエンタテイメント事業が屋台骨であることは上に示したグラフからも明らかです。

こうした状況の中、スクウェア・エニックスはデジタルエンタテイメント事業の構造を変えようとしてきました。

つまりHDゲームのリスク分散化を進めることです。その取り組みの一つとして挙げられるのがスマートフォンアプリ市場への進出だと考えられます。

スクウェア・エニックスのスマートフォンアプリ市場への進出は近年顕著になってきました。今回、その点について詳しく解説することはしませんが、スクウェア・エニックスはリスク分散化の取り組みの一つとして収益機会を増やすために新しい市場への進出を進めてきたということが推測できるかと思います。

次のページへ>>「”DIVE IN”はスクウェア・エニックスの新しい武器となるか」

Credoをフォローする