実は影響力が強いあの会社、日経平均株価上昇の裏にひそむもの

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11月4日に日経平均株価が約7年ぶりに1万7千円台に回復したと日本経済新聞は発表しました。これは、日銀の追加の金融緩和を受けて、株式市場に資金が一段と流入するという思惑が広がっていることや、外国為替市場で急速に円安が進んでいることから、輸出関連企業の業績が改善するという期待が高まっているためだとされています。

このように一つの景気指標として扱われる日経平均株価ですが、そもそも日経平均株価はどのようにして算出され、どういった理由で上下するのでしょうか。

本稿ではそれについて解説していきます。

尚、本稿で扱う株価は11月5日の取引終了時点での値を取得しています。また用いた図表は全て参考文献から筆者が作成いたしました。

 

日経平均株価とは

日経平均株価は日本経済新聞が選んだ、東証第一部上場企業の中で市場を代表するに相応しいと判断された225銘柄の株価平均値によって構成される指標です。

なぜ225銘柄なのか、という疑問については日本経済新聞社が以下のように回答しています。

60 年以上も前(1950 年)から日々算出されているため、当時の詳しい経緯は不明ですが、指標性を保つために、売買高の多い銘柄を全業種からバランスよく選んだところ、この銘柄数になったとされています。

225という銘柄数に特別な意味づけはないと認識しています。ただ、いまでは「日経 225」「Nikkei225」との通称で世界中で広くご利用いただいている実態を尊重し、この「225 銘柄からなる株価指数」という基本コンセプトを大事に継承していきたいと考えています。

銘柄も過去選んだものをベースとして用いていますが、定期的に見直すことで市場の代表制を維持できるようにしています。225銘柄は産業構造の変化を反映できるように、「技術」「金融」「消費」「素材」「資本財・その他」「運輸・公共」、計6分野の中で代表性のある銘柄を選んでいます。

具体的にどの指標を判断基準とするのかについて明確に記載されてはいませんが、売買が活発に行われているかどうか、また安定しているかどうかが大まかな判断基準となるようです。

 

日経平均株価の推移

ここからは日経平均株価の推移を実際に見ていきましょう。

以下のグラフは直近一ヶ月の日経平均株価の推移の様子です。日経平均株価の市場取引終了時における値、終値を使用しました。

資料だよ8

一度下がってはいますが、結果として一ヶ月前と比べて指標自体は向上している様子が分かります。

次に示すのは直近一年間の推移を表したグラフです。

資料だよ7

今回はこれらの期間の指標推移について、底値を記録した日と現在における225銘柄の日経平均株価に対する寄与度ランキングから、日経平均株価に大きな影響を与えている銘柄について見て行きたいと思います。

*寄与度とは

株式を取引する際に、企業は一回の取引でやり取りする株式の発行数を予め決めています。1000株以上から取引するといった例が多いようです。このように、株式の取引下限が決まっていると、仮に1株1万円だとしたら10000000円からしか取引することが出来ません。個人投資家には非常にハードルが高くなってしまいます。

そこで株価が一定以上になった場合株式投資のハードルを下げるために、株式取引数を調整する企業が出てきます。こうして株式取引数は企業ごとにバラバラになってしまい、企業間で株価をそのまま比較することが難しくなります。

つまり、日経平均株価を構成する際そのまま各銘柄の株価を用いて計算を行うと、単純な株価の比較が難しいということになります。そこで”みなし値”というある一定の基準で株価を再設定したものを設けます。このみなし値は日本経済新聞が設定しています。みなし値によって日経平均株価は算出されます。

このみなし値が寄与度にあたります。みなし値が高いほど日経平均株価に対する影響が大きいことになります。

 

上位、下位10銘柄の比較

11月4日は冒頭で取り上げたように7年ぶりの大台に達した日、10月17日は直近一月における最低値を記録した日、そして4月14日は直近1年間の最低値を記録した日です。(終値基準)

資料だよ6

 

資料だよ2

それぞれ、複数回登場した銘柄は文字に色を付けています。

この中で今回注目するのはファーストリテイリングです。大台に達した11月4日には寄与度トップに、それ以外の低い値を記録した日にはどちらでもワースト1位になっているファーストリテイリングは非常に日経平均株価に対する影響力が強いことが分かります。

ではなぜ、ファーストリテイリングはこれほどまでに日経平均株価に対する影響が強いのでしょうか。

 

ファーストリテイリングの影響力の強さの源泉

ファーストリテイリングとはユニクロなど主に衣料品を扱うメーカーを子会社に抱える持ち株会社のことです。ファーストリテイリングの日経平均株価に対する影響力の強さはその株価にあると考えられます。

冒頭でも説明しましたが、日経平均株価は指標の健全性を保つために数値的な修正を施されているとはいえ、本質的には株価によって構成される指標です。単純に考えて株価が高い企業の動きは日経平均株価に反映されやすいことになります。

次のグラフは日経平均株価を構成する225銘柄の内、株価で並び替えた際の上位10銘柄についてのものです。

資料だよ4

ファーストリテイリングはこのように二位のファナックに対して2.16倍の株価をつけています。これは日経平均株価における9.84%を構成する値です。

現在、ファーストリテイリングの株価を構成する要因は同社が展開するユニクロの業績も勿論ありますが、日経平均株価をコントロール出来る株という部分が非常に大きいです。

次のグラフはファーストリテイリングを含む3銘柄について、3年前からの株価をグラフにしたものです。(調整後終値使用)

資料だよ5

 

元々、デフレ下にある中でも業績を上げてきた企業であり確かに評価されるべきではありますが、同時に表示した11月4日の寄与度2位のKDDI,株価2位のファナックと比較しても伸び方が明らかに異なっています。

高騰しているという表現を使っても間違いではないでしょう。

 

日経平均株価という指標への懸念

以上、見てきたように日経平均株価は現在非常に歪んだ構造になっています。市場全体を代表する値を選出して作成された指標であるにもかかわらず、ファーストリテイリング一社にかなり左右されるというのは指標の正当性を疑われても仕方ありません。

ニュースで日経平均株価が上昇したと言っていたとしても、もしかしたらそれは日本市場が盛況であることを表すのではなく、ファーストリテイリングが好調である場合もあるのです。

今回は取り上げませんでしたが、日経平均株価と同様に扱われる指標にTOPIXというものがあります。こちらは東証第一部上場企業全体で指標を計算するため、大きく一社に左右されることは少ないと言われています。

今後、日経平均株価を見る際には是非ファーストリテイリングの株価の推移、そしてTOPIXの動きにも注意して頂ければと思います。

photo by flickr

[参考文献]
 *Yahoo!ファイナンス,2014年,Yahoo!JAPAN(2014年11月5日, http://finance.yahoo.co.jp/)
*Bloomberg.com,2014年,Bloomberg.com(2014年11月5日, http://www.bloomberg.co.jp/)
*第174回 ファーストリテイリング株からみえてくる4つの現実,2013年,楽天証券(2014年11月5日, https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/adachi/adachi_20130314.html)
*日経平均プロフィル,2014年,日本経済新聞(2014年11月5日, http://indexes.nikkei.co.jp/nkave)
*日経平均株価、1万7000円台回復,2014年,NHK(2014年11月5日, http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141104/t10015913971000.html)

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