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余命半年を宣告された末期ガン患者のブリタニー・メイナードさん(29)は、「尊厳死」として自らの命を断つ宣言を動画配信サイトに公開し、その後11月1日、医師から処方された薬を服用し自宅で自らの命を断ちました。

「尊厳死」「安楽死」ということを巡って世界中の人々が考えさせられる出来事になったことでしょう。このニュースに関するもう少し詳しい内容については、Credoのこちらの記事を参照してください。

1つ気をつけなければいけないのが、ここで言う「尊厳死」とはアメリカの「Death With Dignity」を直訳したものであり、日本で一般的に使われている「尊厳死」とは意味が違う場合があるということです。

これら言葉の使い方は日本国内でもあまり整理されておらず、さらにはアメリカでの使い方とも異なっているため混乱が生じているのでしょう。これら「尊厳死」という言葉そのものについて詳しくは、Credoの別記事を参考にしてください。→「知らずに使っていませんか?「尊厳死」という言葉の意味

さて、アメリカでは自分が不治の病にかかった時にどのような最期を迎えるかということについて、比較的広く一般的に議論されているようです。メイナードさんは不治の病であっても意識がしっかりとしていてコミュニケーションをとることが出来たので、動画配信サイトに投稿することで自分の最後の意思表示を行いました。

みなさんはどのような最期を迎えたいですか?

それを決定する権利は当然みなさん自身が所有しています。しかしいざ意思表示したいという時に、病気によってコミュニケーションがとれない状況であればどうしたらいいのでしょうか。こういう場合の自己決定を保証するのがリビングウィルという考え方であるとされています。

 

最期のあり方を自分で選ぶリビングウィルとは

リビングウィルとは

”治る見込みがなく、死期が近いときの医療についての希望をあらかじめ書面に記しておくもの”
引用元:日本尊厳死協会ホームページ

と説明されています。

現代の世の中では医療技術の発達などや終末期医療の台頭などにより、「意思表示が出来ないほど病状が進んでしまっていても、生きていられる」状況が実現されてしまうようになりました。そういった時にこのリビングウィルによって自分の最期を選ぶことができるとされていて、日本尊厳死協会なども普及活動を行っています。

このリビングウィルの所持率というのはアメリカで40%を超えていますが(塩谷2014)、日本ではまだまだ認知度が低く、所持率がどれくらいなのかほとんどわからないような状況です。

アメリカが早くから尊厳死・安楽死問題を直視し、法整備を行ってきたことがこの数字に現れていると考えられますが、その根源には宗教観の違いが原因として根深く横たわっているとの考え方もあります。

国民の約80%がクリスチャンであるアメリカでは、その宗教的理由から「死」というものを身近に考えるのにそれほど抵抗がないと考えられます。対して日本では「死」という話題を極力避け、タブー視する傾向にあると言われています。

日本人は身近に「死」を考えられる環境にないからこそ、リビングウィルの保持率が低くなっているとも考えられます。

 

リビングウィルの問題点とは

なにがなんでもリビングウィルは必要との考えになりがちですが、問題点もあります。まず一つ目ですが「死ぬ間際の選択を、そうではない元気な時に行うというジレンマ」です。リビングウィルというのはもちろんいつでも変えることができますが、いざ実際に死と直面してみて初めて本当の自分の意思に気付くということもあり得るでしょう。

例えば少し極端な例ですが「意識ははっきりしているが、体が動かずコミュニケーションがとれない」という状況を考えてみてください。かつて何気なく記した「延命措置を行わない」という意思表示が、周りの手によって遂行されようとしている時に「やはりなにがなんでも生き残りたい」と思いが変わったらどうなるでしょうか?リビングウィルを表明する際にはよくよく考える必要があることが分かります。

もうひとつの問題として、「家族と思いの共有がなされていない」ということが挙げられます。日本において、自分の死に際について考えがあったとしても、それを家族と話し共有している例と言うのがかなり少ないという事実があります。

しかし実際に死の直前、自分の意思表示を遂行するのは家族である場合が多いでしょう。またいくら「自己決定」とは言ってもやはり血のつながった家族ですから、彼らの「生きていて欲しい」などの意思をある程度考慮にいれる人も少なくはないと考えられます。

リビングウィルを普及させることの重要性もありますが、以上の点から「意思表示すればいいというものではない」「その意思表示に気軽さがあってはならない」ということがわかります。今一度、自分の死ということについて真摯に向き合い、それを周囲の人と共有することが大切なのではないでしょうか。

[参考文献]
小松美彦,2012,『生権力の歴史 脳死・尊厳死・人間の尊厳をめぐって』青土社.
日本尊厳死協会,2005,『世界のリビング・ウィル』日本尊厳死協会.
日本尊厳死協会,2014,”リビングウィルQ&A”,日本尊厳死協会(2014年11月5日取得,http://www.songenshi-kyokai.com/question_and_answer.html).
塩谷千晶, 2014, 「高齢者のリビングウィルの啓発活動に関する研究 ー作成した冊子による個別介入の効果ー」『弘前医療福祉大学紀要』5(1): 39-46.
DEATH WITH DGNITY NATIONAL CENTER,2014,”Physicians’ Frequently Asked Questions”,DEATH WITH DGNITY NATIONAL CENTER(2014年11月5日取得,http://www.deathwithdignity.org/resources/physiciansquestions)
Oregon Health Authority,2014,”Frequentlly Asked Qustion”, Oregon.gov(2014年11月5日取得,http://public.health.oregon.gov/ProviderPartnerResources/EvaluationResearch/DeathwithDignityAct/Pages/faqs.aspx)
岩崎賢一,2013,”終末期の事前指示書はなぜ普及しない”,apital朝日新聞の医療サイト(2014年11月6日取得,http://apital.asahi.com/article/kochiapi/2013061700010.html)

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