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最近、増税に関する議論が活発化してきました。2015年10月に消費税を10%に引き上げるか否かについての有識者会合が11月4日に行われ、また甘利経済産業大臣の発言に注目が集まるなど各所で関心が高まっています。

消費税に関する論点を知りたい方はこちらの記事もご一緒にご覧いただければと思います。“本当に国民のためになるの?〜知っておくべき増税議論の盲点〜”

本稿ではそうした消費税に関する議論を細かくすることはいたしません。少し視点を変えて、消費税に関する議論をする上で当然欠かせない景気について論じていきたいと思います。

そして、本稿で景気状況を知るために用いるのが景気動向指数です。

尚、本稿で用いた図表は全て参考文献から筆者が作成いたしました。

 

景気動向指数とは

”景気動向指数は、生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、 景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された指標である。”(内閣府 景気動向指数利用の手引きより)

実際の景気状況を知るための景気指標には様々なものがあります。2014年5月の”本当に景気は良くなっているのか?複数の景気指標から現在の景気を知る”では、私が恣意的に選んだ景気指標を幾つか取り上げ、その推移を見ました。

今回注目する景気動向指数は、幾つもあるそうした景気指標をまとめて算出するものです。

 

3つの異なる系列

景気動向指数には先行系列・一致指数・遅行指数があります。

*先行系列…景気の動きに先行して反応する指数です。数カ月後の景気を表すものとされています。

*一致系列…景気の動きと一致して反応する指数です。現在の景気を表すものとされています。

*遅行系列…景気の動きに遅れて反応する指数です。数ヶ月前の景気を表すものとされています。

これら指標は次のような経済指標から成り立っています。本稿ではこれら用語に関して細かい説明は省かさせていただきました。参考までにご覧下さい。

先行表

一致表

値公表

 

CIとDIという二つの種類

先ほどの先行指数などの分類は目にされる方も多くいるかと思います。しかし、CI・DIという種類を完全に把握している方は少ないかもしれません。世間一般に扱われる景気動向指数はどちらか片方のみであるからです。2008年まではDI、それ以降はCIが中心に公表されてきました。

 

*Composite Index[CI]

景気拡大や後退の速度・程度を表す指標です。各経済指標について、ある年度を基準としてその変化率を求め、その値から算出されます。

CI遅行指数を求める場合を考えます。2010年を基準として、例えば完全失業率がどれだけ変化したか、そのパーセンテージを求めます。同じことを、遅行指数を構成する他の経済指標でもおこなって、全ての変化率の平均を取り、この数値を用いることでCI遅行指数は求まります。

実際にはその後、幾つか別の操作が行われますが基本的な考え方は変化率を使う、というところです。

この後見ていく値の基準値は2010年を100としています。

 

*Diffusion Index[DI]

指数に採用している経済指標の中で、景気の改善を示している指数の割合を示したものです。DIによって分かるのは、景気の方向性です。

もう少し細かく、今度は先行指数を例にとって考えます。

先行指数を構成する経済指標は全部で11個ありますが、この11個の指標が改善したか、変化がなかったか、悪化したかを3ヶ月前と比べて判断します。改善した場合を1、変化しなかった場合を0.5、悪化した場合を0としてカウントし、次の計算式に代入します。

DI=(カウントした合計値)/(指数を構成する経済指標の数)*100(%)

先行指数で考える場合では、5つが改善、3つが変化なし、3つが悪化だとしますと

DI=((5*1+0.5*3)/11)*100=59.9% という計算結果が出ます。

50%以上であれば景気改善の兆しあり、以下であれば後退の兆しありという判断が出来ます。

簡単にCI、DIを、景気を川に例えて考えます。CIが川の流れる速さ・水の量だとすればDIは川がどの方向に流れていくのかを表したようなものだと考えて頂ければイメージがつかみやすいかと思います。

 

実際に数値を見ていく

導入が長くなってしまいましたが、ここからは実際に数値を見て行きましょう。

第二次安倍内閣が発足したのは12月26日ですが、変化を見るという意味も込めて、今回見る期間はその少し前である2012年10月からの値としました。

先行指数・一致指数・遅行指数という順番でCI・DIを合わせて見ていきます。特に注目するのは、第二次安倍政権によって景気が回復していたのか、そして今年4月の消費税増税の影響がどのように表れているのかという二つの点です。

以下のグラフは全て筆者が参考文献から作成いたしました。またグラフは左の数字がCI・右の数字がDIに対応しています。単位はどちらもパーセントです。

 

*先行指数

先行1
CIを見ると、第二次安倍政権によって基準値である100よりも高い位置に位置するようになったのが分かります。ただ、2013年の上向きは現在に至るまでにかなり落ちてきています。4月の増税の影響なのか、先行指数なので2013年末から下降傾向が見て取れます。現在は大きな改善も悪化も見られないようです。

今後の景気の行き先については、DIを見るとあまり芳しいものであるとはいえないようです。一番新しいところを見ると、かなり下降しています。これは先行指数ですから、今後景気は下向きに推移する可能性が高いということかと考えられます。

 

*一致指数

一致1
第二次安倍政権発足以降、一致指数は順調に上昇していたようです。特にDIは2014年始めまで常に50%以上を維持しています。

また最近の状況についても、CI・DIどちらもそれほど悪くはないと言えるのではないでしょうか。特に9月のDIはかなり上向いているので(55.6%)、現在の景気状態は決して悪化していない、むしろ改善状況にあると判断できます。

消費税増税の影響を見ますと、4月にかけてDIが大きく減少していたことが分かります。CIも減少していますが、さほど大きく変化したようには見えないかと考えられます。

 

*遅行指数

遅行1

遅行指数は約半年から一年遅れて反応するとされています。

第二次安倍政権の影響はCIではっきりと見て取れますが、DIに関しては50%のあたりに留まっています。

また一番新しい9月が下方傾向にあるということからも、約半年前の消費税増税の影響が顕著に表れていると言えるかと思われます。

 

消費税増税の影響が表れているか

以上、景気動向指数をCI・DI、そして先行・一致・遅行という分類で見てきました。最終的にわかったことをまとめますと、

消費税増税の影響ははっきりと日本経済に打撃を与えている。現在は均衡状態にあるが、DI先行指数の大きな減少を考えると決して増税の影響を脱し切れたとは言えないのではないか

ということになるかと思われます。

実際に景気が悪化していると言い切るには、勿論これだけでは判断材料が足りません。CI指数が3ヶ月連続した場合に景気が後退しているという基準を前提に考えれば、CI指数は9月で下げ止まっているので景気後退の局面入りを脱したという表現が適切かもしれませんが、やはりDI先行指数が気になる所ではあります。

ですが、本当の景気状態を見極めるためには景気動向指数を構成する他の要素についても丹念に見ていく必要があるということにご留意下さい。景気動向指数はあくまでもひとつの基準に過ぎません。

景気の大きさを知るCIと景気の方向性を知るDI、今後景気動向指数を見る際にはこれら二つの属性があることに注意することも大事ではないでしょうか。

photo by wikimedia
[参考文献]
*景気動向指数利用の手引き,2014年,内閣府(2014年11月9日,http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di3.html)
*景気動向指数 結果,2014年,内閣府(2014年11月9日,http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di.html)

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