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消費税の制度が日本に導入されてから、25年が経ちました。初めは3%だった消費税も年月を経て、いつの間にか10%にするかしないかという議論が行われています。

今月に入って、来秋の再増税に向けて増税についての有識者会合が開かれました。この有識者会合では消費者団体の代表や経済学者らが意見をかわします。

そもそもなぜ、増税されるのでしょうか。この質問に対しては財務省がサイト上で答えています。

 

「なぜ所得税や法人税ではなく、消費税の引上げを行うのでしょうか?」

”今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。

また、ここ10年くらいで見ると、所得税や法人税の税収は不景気のときに減少していますが、消費税は毎年10兆円程度の税収が続いており、税収が経済動向に左右されにくく安定した税と言えます。”

引用:消費税引き上げの理由|財務省ホームページ

 

つまり、「引き上げの理由」に対する国の解答は

(1)消費税は消費額に比例して課税額が増えるので国民全体で広く負担することできるので、社会保障の財源確保にふさわしい。

(2)消費税は税収が経済の状況に関係のない安定した税である。

この2項目になります。

この財務省の回答を見ていると、「なるほど」と同意するかもしれませんが、そもそもこのような増税議論にはいくつかの盲点があります。

 

 増税議論の盲点

1.「消費税は消費額に比例して課税額が増え、国民全体で広く負担することできるので、社会保障の財源確保にふさわしい。」のか?

有識者会合に参加していたニュースサイト「シノドス」の荻上チキ編集長は著書の中でこのようなことを述べています。

 ”社会保障は「社会的な最低限度の生活を保障する制度」の言葉の通り「収入が少なくて困っている人を助けるための、再分配制度的意味合いが多分に含まれている制度」です。こうした理念を実行するためには、「あるところから多めにもらい、貧しいところは免除する」という、累進課税が可能な税制が一番に検討される必要があります。一方で、消費税は「富めるもの、貧しい者からも、等しい税率で召し上げる」といった側面を持った税金です。つまり、税の中でも、特に消費税には、貧しいほど重税感が増す「逆進性」の問題があるということです。「消費税を社会保障に充てる」という議論は持たざる者からも等しく召し上げた税金によって持たざるものに再分配するという話になる。”(文献1)

彼の要旨は国民全体が広く負担することできるが、この消費税は逆進性の問題をもっているということです。彼が述べるように社会保障はそもそも「社会的な最低限度の生活を保障する制度」である。

しかしながら、この増税議論は少子高齢化の問題にフォーカスするが故に、その「社会的な最低限度の生活」をおくれていない人たちからも税を徴収するという矛盾が生じているのです。これに加えて、消費税の増税は「消費に対する罰金」となり、消費を抑制してしまうまで可能性があるとも述べています。

 

2.「消費税は税収が経済の状況に関係のない安定した税である。」のか?

確かにこの回答は正解です。しかしながら、消費税の増税は国の税収入とは決して相関していません。

04a_big参考:消費税引き上げの理由|財務省ホームページ

 

1997年に消費税は3%から5%へ増税しました。1996年の消費税税収は6.1兆円、1997年は9,3兆円、1998年は10,1兆円と年々増加しています。(2000年代に入ると低下している)全体の税収を見ると1996 年は52,1兆円、1997年は53,9兆円、1998年には49,4兆円であり、消費税の増税が全体税収入の増加とは比例関係にないことがわかります。

確かに増加させる前年(1996年)と増加させた年(1997年)を比較すると、全体税収も消費税収も増えていますが、それは消費量が増加(景気が良くなった)ということは意味していません。

上記の図からもわかるように所得税、法人税は税のなかで低下しつつあり、消費税は所得税についで第二位の国家の財源です。消費税が経済の状況に関係なく安定した税であるから消費税を増税するということは「経済が不景気で所得税や法人税が低下するような状況になれば、消費税があがりやすい。そして不景気であるにも関わらず、消費への負担が大きくなる」ということです。

 

 増税の条件は「経済好転」

このように国が表明している「消費税を上げる理由」には二つの盲点があります。

一つ目は社会保障財源の確保のための増税であるはずなのに、社会保障の対象となる「社会的な最低限度の生活」をおくれていない人たちからも税を徴収するという矛盾が生じていること。

二つ目は税収が経済動向に左右されにくく安定した税であるために増税するという議論が国益(国民のため)の都合ではなく、厚生労働省(社会保障財源の確保)や経済の都合で議論されているということです。

2012年8月10日に、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税等の一部を改正する等の法律案」が可決され、消費税が増税となりました。その消費増税法でも記されていますが、安倍首相は経済の好転を条件に消費税10%への増税を明記しています。

有識者会合は今月18日まで計5回開き、当再増税への賛否や、必要と考える経済対策などを話し合います。いつ、再増税を決定するか引き延ばすのかが決まるのかはわかりませんが、この有識者会合がターニングポイントになることは間違いありません。

[参考文献]
1.荻上チキ,2012年,『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか 絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想』幻冬舎新書

photo by Alan Cleaver

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