多くの人が間違っている松尾芭蕉の句「秋深し」は「秋深き」?

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テレビ朝日系列の番組『くりぃむクイズ ミラクル9』11月12日放送分のクイズの中で、松尾芭蕉のある有名な俳句を、多くの人が間違えて記憶していると出題されて、その元の句が話題になっています。

問題の句は、「秋深き隣は何をする人ぞ」。この句の上五の部分「秋深き」を、「秋深し」と勘違いしている人が多いというのです。

また、一般的にはこの句の意味は、「秋の深まりとともにもの静か空気が流れ、隣の人の生活音も聞こえて何をしてるのだろうかと気になる」と解釈されています。ところが、実はこれも芭蕉がこめた本来の意味とは少し違っているのだそうです。

この句は芭蕉の弟子である各務支考(かがみしこう)の『笈日記(おいにっき)』によると、元禄7(1694)年の9月28日に、大阪滞在中の芭蕉が弟子の根来芝柏宅で行われた俳句会に病気のためやむなく欠席したとき、句会の発句(最初に出される挨拶句)として書き送ったものとなっています。

ゆえにその句意は、句会の出席者に対し「こんなに秋が深まった良い季節に、皆さんは何をしているのですか? (句会ですか? 私は欠席してしまい、すみません)」ということになるのだそうです。

つまり、一見すると一般的な感慨や情景を詠んではいるのですが、暗に大阪蕉門の連衆を「隣人」に見立て、自身の欠席に対するお詫びを含めた挨拶句となっているわけです。

ちなみに、師匠の休んだこの日の句会は結局、流れてしまったらしく、興行記録は残っていないとされています。隣の人たちも、特に何かをしていたわけではなかったことになりますね。

なお、この日から芭蕉の容態は悪化の一途を辿ります。基角の『枯尾花』によると、起き上がることもできなくなり、弟子の呑舟に「病中吟」として、「旅に病で夢は枯野をかけめぐる」を書かせました。つまり「秋深き」の句は、最後から2番目に詠んだ句ということになります。

ちなみに、元文3(1738)年に刊行された野坡(やば)という弟子等が選んだ句集『六行会』には、この句は「秋深し」の形で載っているそうです。弟子たちの中にも、勘違いをした人がいたということなのでしょうか。

Photo by flickr

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