なだ万買収にみるアサヒビールの成長戦略

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アサヒビールは、日本料理の老舗であるなだ万の子会社化を発表しました。なだ万は、1830年創業の高級日本料理店として知られています。飲食店とビールメーカーは、ある意味隣接業界だと言えますが、今回のなだ万買収にはどのような背景があるのでしょうか。

まず、日本のビール市場について考えてみましょう。ビール業界のここ数年の売り上げ(ビール+発泡酒+第3のビール)をみますと、2003年から2007年にかけては若干の増加傾向にありましたが、2008年以降は減少傾向にあります。

大きく伸びてはいませんが、大きく減少してもいない、まさに飽和市場と考えられます。つまり、ビール系飲料に関して言えば、国内市場ではこれ以上大きな伸びは期待できないということです。

だとすれば、世界をマーケットにすることが必然となりますが、日本メーカーの規模は、世界のトップメーカーと比べると決して大きいとは言えません。生産量ベースでみると、日本のトップメーカーでも、欧米のトップメーカーと比べると数分の一から十分の一程度に過ぎません。

ビール業界に限ったことではありませんが、「規模の経済性」(例:大量生産によりコストを抑えること)、「比較優位性による国際分業」(例:各自が生産性の高いものだけをつくること)はグローバライズされた現在の経済では、競争優位性を得るための重要な要素です。

その点で、日本のビールメーカーには世界的には決して強者ではないということです。

世界との差を埋めるための近道は、やはりM&Aということになります。今回のアサヒビールによるなだ万買収は、その方向性に沿ったものだと考えられます。同社は今年度の事業方針に「進化する総合酒類企業」を掲げています。

つまり、ビールメーカーとしての立ち位置をベースとしながらも、その枠に拘らない事業展開を目指すということです。なだ万は日本で高級料亭というブランドを持ち、かつ海外にも中国やシンガポールに料亭7店を所有しています。

なだ万のブランドを活かし、そうした高級店で提供されるアサヒビールのブランド価値向上と認知度アップを図る。そういう意味で今回の買収は、アサヒの事業方針に合致した、メーカーとしての立場にとらわれず、かつ世界を見据えたブランド戦略であると考えられます。

Photo by Wagner T. Cassimiro “Aran on flickr

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