【妖怪ウォッチ】子どもをターゲットにしたクロスメディア戦略の功と罪

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妖怪ウォッチとは

妖怪ウォッチはゲーム開発会社レベルファイブが手掛けたゲームソフト、及びそのアニメや漫画のことを指します。ゲームソフトとしては、2013年7月に1作目の”妖怪ウォッチ”が発売されました。以下、公式サイトから引用したあらすじとなります。

”ある日、妖怪執事ウィスパーと出会い、妖怪を見ることのできる妖怪ウォッチを手に入れた主人公が、至る所に出没する妖怪達と友達になり、彼らと協力し、町の人々の悩み・問題を解決しながら物語の裏に潜む謎に迫る。”

妖怪ウォッチは2014年夏に続編である妖怪ウォッチ2(本家・元祖)を発売しました。2014年11月19日時点でニンテンドー3DS歴代ソフトにおいて、1位のポケットモンスターX・Y(累計販売本数4,440,459、発売日13/10/12)、2位のとびだせどうぶつの森(累計販売本数4,194,911、発売日12/11/08)、3位のモンスターハンター4(累計販売本数3,532,662、発売日13/09/14)、これらタイトルに続いて次回作の妖怪ウォッチ2元祖/本家はわずか4か月で歴代4位の売上本数に到達しています。(累計販売本数2,862,387、発売日14/07/10)

妖怪ウォッチは何故ここまでのヒット作となることが出来たのでしょうか。このヒットの裏にはゲーム開発会社レベルファイブのクロスメディア戦略があるのではないかと考えられます。

 

レベルファイブが核とするクロスメディア戦略

クロスメディア戦略とはゲームソフト以外にも漫画やアニメ、グッズなど様々な形でIP(Intellectual Property: 自社オリジナル商品のこと)を展開させる戦略のことを指します。

ゲームソフトから様々なメディアに展開していった例として挙げられる中で有名なのは”ポケモン”ですが、ポケモンがゲームソフトとして発売された1996年2月から1年余り経った1997年4月にテレビアニメの放映がスタートしたのに対して、妖怪ウォッチはゲームソフト発売以前から既にアニメ、漫画での展開が織り込み済みでした。

2013年7月にゲームソフトとして”妖怪ウォッチ”が発売された後、2014年1月からアニメ、また月刊コロコロコミック・ちゃおなどでのコミックでの展開も始まり、同時期に発売された”妖怪メダル”というグッズは売り切れ寸前になるほどの人気ぶりを見せました。

レベルファイブはそれ以前にも”イナズマイレブン”や”ダンボール戦機”といったタイトルでゲームソフト、コミック、アニメ、グッズといった多角的展開を行って成功してきた実績があり、妖怪ウォッチではそれまでに培ったノウハウを生かしたと言えるのではないでしょうか。

また、プレイヤータイプの分類という観点からもクロスメディア戦略の優位性を確認することが出来ます。

 

レベルファイブのターゲットユーザ

レベルファイブのターゲットユーザの大きな特徴は、従来ゲーム市場が対象としてきた小学生・中学生のような層です。スマートフォンのような汎用機ではなく、ニンテンドー3DSなど専用のゲームハードが必要な家庭用ゲームソフト市場で昨今20代向けの商品が多く展開される中、レベルファイブはターゲットを変えないままソフトを作り続けてきました。

コアなゲーマー層には物足りないストーリー・システムだと評されることも多いですが、それでも子供向けの市場で成功を収めてきたことは事実です。

さて、ここまでは年齢という視点でレベルファイブのターゲットユーザについて述べてきましたが、次にプレイヤータイプという視点で述べていきます。

ゲーミフィケーション1

この図はCredoの“クックパッドVS楽天レシピの例から見るゲーミフィケーションの有効な使い方” という記事で用いた”バートルテスト”という分類方法に基づくプレイヤータイプの位置づけを表したものです。それぞれのユーザタイプの特徴は簡単に次のようにまとめられます。

・アチーバー(Achiever)…ゲーム内で提示された目標を達成することで満足感を覚える傾向が強い

・エクスプローラー(Explorer)…ゲーム内の世界に関する新しい発見をすることで充足する

・ソーシャライザー(Socializer)…他のプレイヤーとの友好的な関わり合いを好む

・キラー(Killer)…他のプレイヤーに対して自身が優越している状態を目指す

 

このプレイヤータイプの分類を前提に妖怪ウォッチのゲームシステムを見ていきます。大きく3つの要素に分けることが出来ます。

1-身近に感じられる日常設定の中にコミカルな妖怪が登場し、プレイヤーをゲーム内世界に違和感なく没入させる…エクスプローラー

2-200種類以上の妖怪が存在し、コレクター欲を掻き立てられる…アチーバー・エクスプローラー

3-攻撃に秀でた妖怪、防御が得意な妖怪などそれぞれの特徴を持つ妖怪たちを6匹選出し、バトル中は前衛・後衛に振り分けてバトルをする。通信対戦では成績に応じて自分の持つランクが変動する。…キラー・アチーバー

ここまでであれば、見せ方は違えど他のゲームソフトでも勿論同じような構成要素が見られます。しかし、レベルファイブにとってここまで挙げた要素はあくまでもソーシャライザーに対する起爆剤でしかありません。

レベルファイブ最大の強みは、殆ど毎日友人と顔を合わせる環境にある小学生・中学生の層に対してゲームを先行発売して間もなくアニメ・コミック・グッズで展開することでゲーム外の世界でも”妖怪ウォッチ”の世界観を共有させられる環境を作ったという点にあります。

ゲームソフトだけでは満たせないソーシャライザーのニーズを、レベルファイブは素早いクロスメディア戦略によって掴みました。

また毎年のように新しいシリーズを生むこと、そしてシリーズ展開を加速させることでユーザーを飽きさせないことも重要な戦略方針であると言えます。次の表は筆者が作成したレベルファイブ自社発売のタイトル一覧です。これらは全てCERO A、つまり全年齢向けタイトルであり、CERO B(12歳以上対象)以上のタイトルは殆どありません。

れべふぁ

 

レベルファイブが抱えるジレンマ

このように子供をターゲットとしてクロスメディア戦略を絡めながらゲームソフトを作ってきたレベルファイブですが、そこにはターゲットユーザを子供、そしてソーシャライザーに注力しているが故の構造上抱える課題があります。

それは子供向けにソフトを作っているがゆえにストーリーに奥深さを持たせられず、シリーズ展開してもマンネリ化してしまうというリスクです。逆にいえばレベルファイブはマンネリ化を防ぐために新しいIPを作り続けなくてはならないというジレンマに囚われているとも考えられます。

現在も放映されている”妖怪ウォッチ”のアニメは基本的に一話完結であり、手軽に楽しむことが出来ますが、逆にいえば一話ずつが独立しているため世界観に広がりを持たせることが難しいと考えられます。つまり、ゲームでもアニメでも徹底した子供向けのターゲッティングがなされているということです。

このことは、将来的に少子高齢化が進む現在の日本で展開するにはあまりにも将来リスクが高い戦略であります。つまり、子供をターゲットに据えることは成長規模の限界があることを承知の上での戦略とも言えるのです。

 

ポケモンとの対比

「妖怪ウォッチの躍進と共にポケモンの地位が危ぶまれる」という声もありますが、プレイヤータイプの分類上、そしてユーザの年齢層を考えたとき、この二つは交わらないのではないかと考えられます。

ポケモンは大部分の低年齢層に対しては前述した妖怪ウォッチと同じようなゲーム要素構成となっており、アニメや漫画・映画も子供向けのストーリーになっています。クロスメディア戦略など共通するところも多いのは確かです。

しかし、ゲームソフトという点で考えた場合、ポケモンが今日まで優位を保ってきたのは技構成・隠しパラメータを駆使したバトルシステムの奥深さに起因しているのではないかとも考えられます。

初代の赤・緑バージョンの頃からポケモンシリーズには努力値・個体値・種族値という隠しパラメータが存在してきました。この隠し要素は低年齢層というよりも、奥深い駆け引きを求める中高生以上のユーザーを獲得する要因となってきました。

どういった対戦相手を想定してどこまで調整するか、6体のポケモンそれぞれにどんな役割を持たせて数ある技の中からどの4つを選ぶか。こうした心理戦がポケモンバトルでは繰り広げられるのです。これは妖怪ウォッチが持つソーシャライザー志向とは全く異なる一面であります。

つまり、ポケモンは一見すると妖怪ウォッチと同じターゲット層を意識しているようで、また別の顔としてそういった駆け引きの要素を十二分に持つキラータイプのユーザをターゲットとしたゲームであるとも言えるのです。

大学生以上のユーザも奥深く遊ぶことが出来るゲームとして成立しており、長い歴史の中で固定ユーザーを抱えているという点で、ポケモンは市場規模の縮小に対してそれほどリスクを感じる必要はないのではないでしょうか。

妖怪ウォッチ、それを抱えるレベルファイブが今後どのようなユーザ、プレイヤータイプに対して展開していくのか。注目が集まります。

photo by photozou [参考文献]

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