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日本の死亡者数とその死因

厚生労働省の人口動態統計によれば、平成25年度に死亡した日本人は126万8432人で、1000人中約10人が死亡した計算になるとのことでした。その死因としては悪性新生物(いわゆるガン)が1位で全体の28.8%、ついで心疾患(心筋梗塞や心停止など)の15.5%、肺炎の9.7%でした。

しかし20~39歳のみに注目してみると、その死亡者数は15656人で死因として最も多いのは自殺となっています。(出典:厚生労働省|平成25年度人口動態統計月報年計)

 

20~39歳に注目すると

全死亡数者ということで見てみると、その大多数が65歳以上の高齢者であり、また三大死因となっているどの病気も年齢が上がるごとにそのリスクが上がっていくことから、日本が超高齢社会と呼ばれることも納得です。

しかし今回は特に20~39歳の死因は自殺が最多であったという事実について考えなければならないでしょう。

20~39歳の死亡者数は全体の1.2%という数字にとどまりますが、人生これからとも言えるこの年代で亡くなった人々のうち、平均40%ほどが自殺によって命を落としているというのは問題と言えるのではないでしょうか。(出典:内閣府|平成25年版 自殺対策白書)

国としてもこういった事態を問題視し自殺予防の対策をとっており、平成25年度では300億円を越す予算を投じています。具体的には、自殺予防週間と自殺対策強化月間の実施、職場におけるメンタルヘルス対策の推進や、生活困窮者への支援の充実になどが挙げられます。(出典:内閣府|平成26年度 自殺対策関係予算案)

 

自殺、わたしたちができること

では一体20~39歳の人々の自殺の原因とはなんなのでしょうか?

平成25年版 自殺対策白書によれば、20~39歳の人々における自殺の原因として最も多いのは「健康問題」とされ、その「健康問題」とは主にうつ病によるものであることが示されています。

原因が分かってはいないものの、うつ病とはなんらかの原因によって脳の機能不全が起き、脳内あるいは体内のホルモン分泌に異常をきたしているとする説が有力で、この点において「単なる気分の落ち込み」とは区別されるでしょう。薬による治療が存在し効果を示しているということも、その説を裏付けるものかもしれません。

しかしそれと同時にうつ病においては、治療者(医者のみならず、周囲の人も含みます)と患者が良好な関係にあることを前提とした言葉の介入がとても重要視されていて周りの人々の言葉が治療に与える影響も大きいと言えるでしょう。

そういった介入を無しに安易に薬物療法などに頼ることは危険であり、患者の背景や病状の理解に努め心理的教育を行っていかなければなりません。

身の回りでうつ病が疑われる方がいる場合は次のような対応をとることが重要です。

【共感を示す】
うつ病の患者さんは、「これは病気なんかではなく怠けだ」「性格だからどうしようもない」「もうダメだ」などのような否定的な考え方に陥りがちです。これを念頭において、まずは「共感」を示すことから治療は始まります。「こういった状況ですから、そうお感じになるのも無理はないでしょう」などの言葉が適しているかもしれません。

ここで治療者の立場として気をつけけなけらばならないのは、共感するあまり患者の感情に巻き込まれないようにするということです。あくまでも違った視点からアドバイスをしなければならず、具体的に患者が特に困っていること(例えば不眠で悩んでいるとか)に焦点を当ててゆくことが大切です。

【うつ病を伝える】
患者さんには「うつ病である」ことや「うつ病の可能性がある」ということを伝えなければなりません。そうして「今の状況は病気によって引き起こされているので、自分を責める必要はない」ということを伝えましょう。

そして、うつ病とは何が起きているのかをわかりやすく説明することで、その原因を排除しやすい環境にしましょう。具体的にうつ病では「ストレスを感じる→ものの見方が否定的になる→ストレスが増える」という悪循環が起きていることがあります。

「一旦ストレスから考えを離しましょう」とアドバイスしたり、「そんなにストレスに感じることはないんですよ」といったように患者さんのものの捉え方を変えてゆくことも必要となります。

【がんばらない、気晴らさない】
「がんばろう!」という声かけによって「なにをがんばればいいかわからない」「がんばれない自分はダメだ」などの否定的な考えに陥ることがあるので安易に励ますことはあまり望ましくありません。

また患者さんは喜びや興味を喪失している状態にあるので、「気晴らし」で楽しい思いが出来ないかもしれません。気を晴らすどころか「断ってはいけないんだ」という心理的ストレスを与えてしまう可能性があります。

【医療機関をすすめる】
うつ病はその病気の性質から、うつ病とわからず医療機関にかからない人やかかってもうつ病と診断されていない人がかなり多いと言われています。きちんと処方された薬は効果が良く出るので、医療機関をすすめることも周囲の人ができることでしょう。

また大切なこととしてうつ病以外のなんらかの病気が原因となったり、その飲んでいる薬の副作用としてうつ状態に陥っている場合があります。

その原因となる病気を適切に治療したり、薬を変えることでうつ状態が消えることがあります。そういった意味でも医療機関をすすめるのは良いのかもしれません。

【約束する】
治療者と患者さんとの間に信頼関係があるのであれば「約束」が意味をなしてきます。具体的には「うつ病による一時の極端な感情に振り回されないこと。あるいはその感情によって大決断をしないこと」(大決断=自殺などを含む)を約束することに当たります。

 

うつ病とは

一般的に使われる「うつ病」というのは、医学的には「気分障害」と大きく分類される中の「うつ病性障害(大うつ病)」となります(本記事ではでは簡便のため、「うつ病」と呼んでいます)。気分障害の中には他にも双極性障害(躁うつ)などがありますが、本記事では一般的である「うつ病(大うつ病)」について書きました。

米国精神医学会によるうつ病の診断基準によれば

・以下9つある症状の5つ以上が当てはまる
・①か②を少なくとも一つ必ず含む
・それら症状が2週間以上ほとんど毎日存在している

この3つを満たす場合にうつ病と診断されます。

①一日中気分が沈んでいる
②何に対しても興味が湧かず、喜びを得られない
③一ヶ月で5%以上の体重減少または食欲減退
④不眠、あるいは眠っている途中にたびたび目覚める
⑤動作や会話が緩慢である、あるいは落ち着きがなくいらいらとしている。
⑥疲れやすく、気力が湧かない
⑦自分に価値がないと感じたり、自分を責める気持ちになる。
⑧物事に集中したり、なにかを決めるということができない
⑨死にたいと考える

また、上の3つの条件を満たさない場合でも①~⑨のいくつかの症状がそれなりに長い期間続いている場合には「気分変調性障害」と診断されることが有り、これも「気分障害」のうちの1つです。

さて、「うつ病」の特徴ですが、重要なこととして女性において男性の2倍多く、20代半ばで発症することが多く、日本人の7~15人に1人は一生のうちに一度はうつ病を経験するということが挙げられます。(出典:標準精神医学)

また、身体に病気を抱えている場合にうつ病にかかるリスクは上がってしまうという事実があり、痛みを伴う慢性の病気では2~3人に1人、ガン患者では3人に1人程度が発症してしまうと言われています。(出典:同上)

原因として詳しいことは未だに分かっていませんが、ストレスとなる出来事や、親からの不十分なケアなどの経験を含めた環境的要素が発症に関与していることが知られていて、これらに加え遺伝的要素も無視できないという事実もあります。

 

【最後に】

20~39歳の日本人の最多死因は自殺です。しかしこの自殺を引き起こすうつ病は「単なる怠けである」などといった間違った認識を持たれやすく、診断に至っていないケースが多いと言われています。そういった認識を改めれば、他の病気よりも周りの人々が治療に参加できる程度が高いとも言えるでしょう

日本うつ病学会においても、うつ病と診断されていない”潜在的うつ病患者”がとても多いことを問題視していて、「言葉によってケアすること」と併せて「医療機関に導いてあげ、適切な治療を受けてもらう」ということも周囲の人々が出来る「治療」に他なりません。
Photo by flckr [参考文献]

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