感染経路は生カキだけじゃない!ノロウイルス予防に手洗いが有効な理由とは?

【読了時間:約 8分

「生カキを食べて、おなかを壊した・・・」

本格的な冬を迎え、牡蠣の美味しい季節になるとそういった話が増えてきます。その原因の多くが「ノロウイルス」という病原体であり、「生カキ」=「ノロウイルス」という図式が多くの人の頭の中に出来上がっていることと思います。

しかし、「ノロウイルス」の脅威は「生カキ」による食中毒だけではありません。ノロウイルスはヒトからヒトへも感染する病原体なんです。

嘔吐や下痢、腹痛などを引き起こすとてもつらいノロウイルスの感染を予防するために、そして他の人に広めないために、僕たちに何が出来るか考えていきましょう。

 

 食中毒の原因として最多!!ノロウイルスの脅威

まずは、食中毒の原因としてのノロウイルスの怖さについてみていきましょう。

下の図を見てください。

1
(グラフ:著者作)
日本で起こる食中毒のうちの、61%はノロウイルスが原因だと考えられています。人数で言うと、平成25年度の1年だけで12,672人もの人がノロウイルスによる食中毒に苦しんでいます。

ノロウイルス感染の症状としては、24~48時間の潜伏期間ののちに、突然の嘔吐、下痢、腹痛などを主症状とする急性胃腸炎が引き起こされます。熱は出ても37~38℃であり、高熱となることは稀です。基本的に1~3日で症状は回復します。

 

 ノロウイルスの主要な4つの感染経路

ノロウイルスは、実は生カキの摂取以外にも多彩な感染経路があり、現在大きく分けて4つの感染経路が想定されています。

その経路とは、

(1)「汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合」
(2)「家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ接触感染や飛沫感染する場合」
(3)「食品取扱者(料理する人など)が感染しており、その人を介して汚染した食品を食べた場合」
(4)「ノロウイルスが大量に含まれる患者の嘔吐物や排泄物から人の手などを介して二次感染した場合」

の4つです。

(1),(3)にみられるような食べ物を介するノロウイルス感染を「ノロウイルスによる食中毒」と呼びますが、そもそも、注意すべき食べ物が生カキと限定されるような感染経路は(1)しかなく、(3)の経路で起こる食中毒に関してはその発生原理からどのような食べ物でも食中毒を起こしうるということが理解できると思います。

つまり、生カキだけでなく、人の手によって作られる全ての食べ物がノロウイルスの食中毒の原因となりうるわけです。また、(2)のように風邪のような感染様式もあります。

そして、ノロウイルスの感染予防を考える上で大事なのが(4)の感染経路です。ノロウイルス感染の特徴として、嘔吐や下痢という症状が発症中の人の嘔吐物と排泄物から大量のウイルスが排出されていることがあります。また、症状回復後も約1週間もの間排便と共にウイルスを排出し続ける特徴も大切です。

つまり、ノロウイルスに感染していた調理人が、トイレ後の手洗いをしっかり行わなかった場合などに、(3)のような食材を介したノロウイルス感染(食中毒)が起こりうるわけです。

 

 どのようにノロウイルス感染を防ぐべきか?

では、このような多彩な感染経路をもつノロウイルス感染の前にどのような予防策が考えられるでしょうか。分かりやすいように、先程の4つの感染経路ごとに見ていきましょう。

(1)のような、生カキを食べることによる食中毒に関しては、単純に加熱して食べることが推奨されます。加熱の目安としては、中心の温度が85℃以上で1分以上の加熱によってウイルスは不活化すると言われています。

(2)のような、風邪のような感染経路では、手洗いやマスクなどが有効です。風邪の対策に準じてください。

(3)のような、ノロウイルスに感染している人が食材を調理することによる感染には、やはり手洗いが大切です。実はノロウイルスには、インフルエンザウイルスなどには有効とされる「アルコール」があまり効果がありません。

「手洗い」によって、手に付着したウイルスを物理的に流し落とすことが最も効果的な予防と考えられています。
「手洗い」の有効性を数字で見てみましょう。

ノロウイルス
(表:著者作)

この表のように、手洗いをしっかり行うことで実際に手に付着しているノロウイルス量を0.0001%にまで激減させることができます。このように物理的に手に付着するウイルス量を減らすことがノロウイルスの感染予防にはとても大切です。
そして、アルコールによるウイルス量の減少効果は、簡単な手洗い程度にとどまることが分かります。

先程述べたように、ノロウイルスに感染した人は、症状回復後から約一週間排便とともにウイルスを排出し続けます。さらに言うと、ノロウイルス感染の約50%は「不顕性感染(症状は出ないが、ノロウイルスは体内にいる状態)」であることが知られています。つまり、症状が全くない人でもノロウイルスを排出している可能性があるのです。

ですから、寒くなってきたこの季節には、ノロウイルスの感染のあるなし、症状のあるなしに関わらず、食べ物を調理する人は入念に手洗いをしてください。特にトイレ後は排泄物に汚染されやすく注意が必要です。

(4)のような、嘔吐物や排泄物からの感染を予防するためには、基本的にはトイレ後の手洗いと嘔吐物の処理の2つが大切になってきます。手洗いに関しては上記したので、嘔吐物の処理について書きます。

例えば、カーペットの上でノロウイルスに感染した子供が吐いてしまった時。嘔吐物を取り除いてもノロウイルスの汚染は起こっていて、カーペットの中で感染力のあるウイルスが生き延びている可能性があります。

12日前にノロウイルスに汚染されたカーペットからノロウイルスの感染が起きた例が、実際に報告されています。

理想の対応としては、使い捨てのエプロンのようなものをして、手袋とマスクを装着の上、汚物上のウイルスが飛び散らないようにそっと嘔吐物をペーパータオルなどで包みこみ捨てます。

その後は、次亜塩素酸ナトリウム(これを含む塩素系漂白剤でも代用可)で床を浸すようにして拭き取り、最後に水拭きします。これが理想の対応ですが、ここまではしないとしても嘔吐物にはかなりのノロウイルスがいるということを留意して対応してください。

さらに、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、人の口に入ってきて感染を成立させてしまうので、嘔吐物や糞便は乾燥しないうちに迅速に処理する必要があります。

 

 まとめ

ノロウイルスは、食べ物を介して感染する場合や接触感染する場合など主に4つの感染経路を持つことを示しました。牡蠣をしっかり加熱しないことによるノロウイルス感染は、この4つの感染経路のうちの1つにすぎません。

そして、その他の3つの感染経路に関して言えば、感染予防に最も効果的だと言えるのが「手洗い」です。

ノロウイルスは、感染者の嘔吐物や排泄物に大量に存在します。このウイルスの排出は症状回復後も約1週間続きます。さらには、そもそも症状がないのにノロウイルスに感染していて(不顕性感染)、知らない間にウイルスを排出している人もいます。

全員がしっかり手洗いを行うことが重要です。特にトイレの後、食事の前、食べ物を調理する時、には気を付けてください。手洗いは、アルコールなど消毒が効きにくいノロウイルスにおいて、最も効果的な予防法です。

小さい頃、誰もが一度は親に言われた「ちゃんと手を洗いなさい」の言葉。今一度みんなが心に留めて、ノロウイルスで苦しむ人を1人でも減らしたいものですね。

Photo by flickr [参考文献]

Credoをフォローする