病気の子どもたちの願いよ叶え“おりがみツリー”完成:【連載】「優しい世界」(2)

【読了時間:約 7分

「優しい世界」という連載を担当している、Credoライターの橋本です。小児科医をしています。 この連載は題名通り、「優しい世界」づくりを目指したものです。自分ではない誰かの立場に立って考えることから、「優しさ」は生まれると思います。

この連載が、そのような機会になればと思います。様々な境遇で生きる人たち、そうした人たちに寄り添う人たち。そんな人たちに会い、インタビューをしていきます。あと1ミリでも世界が優しくなれたら。そんな願いをこの連載に込めました。

第1回目は、こちらの記事を参照してください。第2回目の今回は、成育医療研究センターという東京都世田谷区にある日本最大規模の小児病院内に完成した“おりがみツリー”を取り上げます。このツリーは、入院中の子どもたち、その家族、職員が皆で折った折り紙作品でできた大きなツリーです。

 

 おりがみツリーとは

3年前、病院に勤務する小児科医が発案し、始まった企画です。クリスマスを病院で過ごさなくてはいけない子どもたちに、何かよい思い出をプレゼントしたいという思いが始まりでした。病院内で評判が広まり、5000を越える折り紙作品が集まり、7mもの大きなツリーができました。「みんなが元気になりますように」皆が皆の幸せを願うメッセージを折り紙作品に書いてくれました。

そして今年の冬、3度目となる“おりがみツリー”が完成しました。

IMGP0176完成したおりがみツリー

 娘が病気になるということ

東城薫乃(ゆきの)ちゃんは脳腫瘍と戦う小学4年生の女の子です。おりがみツリーのための折り紙をお母さんと一緒にたくさん折ってくれました。今回、お母さんにお話を聞くことができました。(私は担当医師ではありません。Credoのライターとしてお話を伺いました。)

IMG_7706ゆきのちゃんとお母さん

橋本:おりがみツリー企画はどうでしたか?

お母さん:楽しく参加できました。ゆきのもだいぶ細かい作業ができるようになったので、楽しく折っていました。みんなの願いが叶うといいなと思います。

(ゆきのちゃんは、病気の影響で左半身が動かしにくくなっています。日々の治療やリハビリを頑張り、少しずついろいろなことができるようになってきています。)

橋本:ゆきのちゃんの病気はいつわかったのですか?

お母さん:今年の3月にわかりました。もう、何が何だか全く理解できませんでした。それまで本当に健康そのものの活発な女の子だったので。ある日突然頭痛と嘔吐が始まって、気づいたら手術になっていました。

橋本:そこからの治療はどうでしたか?

お母さん:本当に大変でした。声を出せなかったり、体をほとんど動かせないような時期が6か月ほどありました。本人も相当ストレスがあったと思います。声を出せるようになった9月ごろから、少しずつ本人の活気も出てきました。

橋本:ゆきのちゃんが脳腫瘍であると知ったとき、どのような気持ちになりましたか?

お母さん:なんでゆきのなの?と誰にもぶつけられない問いばかり頭に浮かびました。私から生まれなければよかったのかなとすら思いました。私もずっと泣いていました。でも、今はそんなことありません。

橋本:今はどのような気持ちですか?

お母さん:今は、前向きになっています。ゆきのが頑張っている姿を見てきたのと、やはり、ゆきのが話をしてくれるようになったことが大きいですね。将来あんなことをしたい、こんなことをしたいって、未来の話をしてくれるんです。強いなあって思います。そして元気をもらいます。

IMGP0006
インタビュー中のお母さん

 社会復帰に向けて

橋本:この先、治療が終わって普段の生活に戻るにあたって、何か不安なことはありますか?

お母さん:やはり、完全に元通りとまでは戻っていないと思いますので、そのゆきのをみんながどう受け止めてくれるか、それが不安ですね。でも、最近はそう思ってしまう私に問題があるのかなとも思ってきました。

橋本:お母さんの問題とはどういうことでしょうか?

お母さん:最近のゆきのは、本当に立派です。治療の合間に家に帰ったときも、人通りの多い商店街にも買い物に行きたいと自分から言うんです。誰かに会っちゃうかもしれないけど、大丈夫?って私だけが心配していました。こんなに本人が強いんだから、私も胸を張らなきゃって最近は思うようになりました。あと、ゆきのには小学2年生の弟がいるんですが、彼に「ねえね(ゆきのちゃん)は変わったと思う?」って私が聞いたら、「そう?変わってないと思う」って言われました。子どもは本質を見ているなあとそのときはっとしました。

 

 みんなが笑顔でいられますように

橋本ゆきのちゃんが病気になって、社会へのイメージは何か変わりましたか?

お母さん:小児病院に来て、世の中にこんなにも病気と戦っている子どもたちがいるんだと率直に驚きました。今までの人生で全く知ることはありませんでした。そして、入院している子どもたちみんな、辛い思いを知っているから本当に優しい。ゆきのも、もともと優しい子ですが、きっと人の痛みの分かる、さらに優しい子に育ってくれるんじゃないかなと思います。

橋本:お母さんは、折り紙にどんなメッセージを書いたのですか?

お母さん:私は、「みんなが笑顔でいられますように」と書きました。ゆきのや私を含め、なるべく誰も涙を流すことがないように、そんな願いを込めました。

橋本:ありがとうございました。

IMG_2201ゆきのちゃんの作品(ハート、サンタ、リース)、お母さんの作品(星)

 子ども中心の社会に向けて

 主催者の1人である利根川医師に話を聞きました。

橋本:どのような思いをおりがみツリーに込めましたか?

利根川医師:子どもたちが持っているエネルギーや、親御さんたちの想いを一つの大きな作品として表現したいと思いました。子どもたちには、入院中にみんなで何か一つ大きな作品を作ったという思い出にしてもらえればと思います。親御さんには、同じような状況で頑張っている人がこんなにたくさんいるんだと少しでも勇気にしていただければと思っています。

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利根川医師

橋本:社会に期待することはありますか?

利根川医師:病院はどうしても閉鎖空間になりがちです。本来、病院は社会から孤立した空間ではなく、社会の一部であるべきです。多くの子どもたちは病院を出て社会に戻ります。元気になって戻る子、何か後遺症や合併症を抱えながら戻る子、さまざまです。そんな子どもたちがしっかり前を向いて生きていける社会であってほしいと思います。このおりがみツリーがこうしてメディアを通じて広く知られるようになることで、社会と病院をつなぐ架け橋になればと思います。

 筆者が小児科医として思うこと

病気になったことは確かに辛いはずです。しかし、おりがみツリーから感じ取れるものは、子どもたちのパワーです。子どもたちに向けた企画であるにも関わらず、ツリーを前に、元気や優しさをもらっているのは実は大人のほうであることに気がつきます。

もし社会が病気=不幸と短絡的に決め、哀れみだけを抱いているのなら、それは必ずしも正しくはありません。病気と勇敢に戦う子どもたちがいます。帰る先の社会は、彼らをどう迎えることができるでしょうか。“おりがみツリー”はクリスマスに世間が湧いている今、きらきらとその輝きを放っています。

※おりがみツリーの詳しい情報は、ホームページを参照してください。

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