アップルがSIMフリーiPhoneを販売停止した本当のワケと中国の「黄牛」

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2014年12月9日に突然、SIMフリーのiPhone6とiPhone6 Plusの販売を中止したアップルジャパン。クリスマスを過ぎてもまだ販売を再開する気配がありません。

一方、12月16日に突然、オンライン販売を停止したロシアのアップルストアは、数日後に35%の値上げをして販売を再開しました。日本のアップルストアでの発売中止は、アベノミクスによる「円安値上げ説」が有力となっていますが、本当にそうなのでしょうか。

 

 中国の「黄牛」(フアン・ニォウ)の存在

中国には「黄牛」(フアン・ニォウ)という、日本でいう「ダフ屋」がいます。ダフ屋とは「運び屋」のことで、中国ではモノを運ぶのは牛であることから、この名がつきました。中国では入手が難しいあらゆるモノが転売を目的とする黄牛のターゲットになります。

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(写真:Pixabay. ライセンス: CC0 Public Domain)

現在では「黄牛党」(フアンニォウ・ダン)と呼ばれています。「」という言葉は、日本で言う「草食系」の「」のようなもので、社会現象化していること表しています。直訳すると「ダフ屋」のような感じです。

 

 SIMフリーiPhoneとアベノミクスがもたらしたもの

日本で発売されたiPhoneは、2013年まではSIMロックがかかっており、これは日本国内のあらかじめ決まったキャリアの回線しか使うことができませんでした。ところが、今年発売されたiPhone 6とiPhone 6 Plusは、SIMフリーであるだけにとどまらず、アベノミクスによる円安政策のため、日本では世界一安く買えるようになりました。この情報は中国版ツイッターである「微博」(ウェイポー)であっという間に広まっています。

そして9月19日、日本でのiPhone 6発売日に並んでいたのはほとんど中国の黄牛だったという事件が起こりました。つまり、通産省のSIMロック解除義務化への動きと、アベノミクスによる円安政策が相俟って、「黄牛党」が日本に殺到してしまったのです。

 

 世界一安い日本のiPhone 6とiPhone 6 Plus

実際、中国よりどれくらい安く買えるのか、本日(12月24日)のレートでグラフにしてみました。

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実際にはレート手数料などでこんなに差はないと思いますが、理論上は、値上げ後もiPhone 6(16GBモデル)は中国より最低でも2万6100円は安く買えることになります。

 

日本から転売された数と中国での販売台数の実態は?

公表されていない中国での販売台数ですが、予想することができます。まずアップルは2014年末までに7千万~8千万台の新型のiPhoneを生産するように発注しています。 「威锋网」(WeiPhone Network)の分析によると、中国発売月の10月売り上げは、おそらく1200万台ではないかとのことです。

また12月11日になって、新しいリーク情報が入ります。米国の市場調査会社であるiSuppli社の中国研究総監であるケヴィン・ワンは、自身の微博(ウェイポー)で、

iPhone 6とiPhone 6 plusの中国国内の人気が予想を遥かに超えている。アップルの中国での月間販売台数は11月に650万台を超え、年間販売台数は4000万台を超える見込み。iPhone 6/6 plusの生産良品率は高くないため、需給が逼迫する状況を短期に変更することは困難だ”

と発表しました(iSuppli Corp.中国研究总监王阳 Kevin王的日记本 の微博より筆者が翻訳)。

実際、12月11日の時点で、iPhone 6 Plus(128GBモデル)は、中国のアップルストアで発送時間が「2~3週間」という品薄状態でしたが、日本で販売が中止された後の時点で、同モデルは「5~7日」で発送できるレベルにまで回復しています。

 

SIMフリーiPhoneが発売中止になったワケは?

以上を踏まえ、2つの可能性が考えられます。

1、「やっぱり円安値上げ説」

2、「中国市場を優先説」

「1」説もまだ疑われますが、昨年iPhoneが値上げされた際には、2ヶ月後にSoftbankで、3ヶ月後にKDDIでも値上げをしています。もし円安が原因ならば、2015年春までに、各キャリアも値上げする可能性があり、またiPadなど他の製品も値上げされるでしょう。またこれだけが原因ならば、ロシアのように値上げをするだけで良いはずです。

「2」説の可能性は、SIMフリーのiPhone5sなどのモデルが依然と販売されていることからも言えます。中国では最新のiPhoneが人気なのであって「型落ちモデル」はニーズが少なく、転売利益もほぼ得られません。また、中国ではクリスマス・イブを「平安夜」(ピンアン・イェ)といって、これが中国語のリンゴの別称平安」(ピンアン・グォ)と似ていることから、リンゴを贈る習慣があります。「平安果」は「平安に過ごせますように」という発音とも同じで、とても縁起が良いとされます。中国ではiPhoneは「苹果手机」(リンゴのケータイ)と呼ばれているので、お金を持った人たちの間で、クリスマスイブに合わせてリンゴに取って代わり、大量のiPhoneがプレゼントされた可能性も否めません。

上記のように「1」説の円安による「黄牛」によるSIMフリーのiPhoneがほとんど中国に流れてしまっていることに加え、「2」説のように中国市場で予想の3倍以上の人気で品薄になったことが複合的に作用して、やむを得ず日本での販売を急遽中止したのかもしれません。この件に関してApple Japanはノーコメントのままです。

「中国市場を優先」した場合、利益優先をあからさまにして日本のユーザーを突然切り捨ててしまったことになるので、アップルの企業としてのブランド力を下げる可能性があります。真相はまだ明らかにされておらず、一日も早く説明責任を果たしてくれると嬉しいですね。

※Apple、iPhoneは、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。 ※iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。

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