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宝くじというのは普段からロト6なども販売されているのですが、ジャンボ宝くじは毎年の節目に開催される期間限定のもので、賞金が高額であることで有名です。

販売実績については、宝くじ公式サイトによると、平成24年の年末ジャンボ宝くじ(第633回全国自治宝くじ)は、1枚300円で販売実績額1,795億円(約5億9,865万枚)でした。仮に一人10枚購入だと仮定すると、5986万人が宝くじを購入したことになります。

宝くじに限った話ではありませんが、ギャンブルを好む人というのは少なからず存在します。では、そうした人たちというのはなぜお金を失う可能性があると分かっていながらもギャンブルに興じるのでしょうか。

「ワクワクを買っている」「年末年始の非日常感のせいだ」「散財したい時なんて誰にだってある」などなど、色々な方向から説明できることだとは思います。本稿では、その理由を数字で示してみたいと思います。

 

 年末ジャンボ宝くじは得なのか損なのか

そもそも、年末ジャンボ宝くじは得なのか損なのかを実際に計算して確かめてみましょう。期待値という概念をここでは用います。実際に得られる金額にそれを得る確率をかけたものが期待値となります。

期待値というのは、ここでは一回宝くじを買うとどれくらいが返ってくるか、の見込みを表したようなものです。年末ジャンボ宝くじは1枚300円なので、期待値が300よりも大きくなれば私たちは宝くじを買うことで得をすることが出来る、ということになります。

2014年の年末ジャンボ宝くじの当選金額と本数はこちらの表のようになっています。

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販売本数の合計は4億9千万本ですので、それを用いて確率を計算しました。計算いたしますと、期待値は全部で約150円ということになります。1枚300円なので、1枚買うごとに150円損をするということが分かりました。

となると、より疑問が強まります。なぜ私たちは損をするとはっきり分かっているものにお金を出してしまうのでしょうか。

 

 リスクを求める時と求めない時

ここで、ある心理学的実験をご紹介します。次の二つの選択肢の中から一つを選んでください。

[問題1]
あなたは今、10000円を持っています。
A:確実に5000円もらえる
B:50%の確率で10000円もらえるが、50%の確率で何も得られない

もう一つ、質問をいたします。同じように二つの内どちらかを選んでください。

[問題2]
あなたは今、20000円を持っています。
A:確実に5000円を失う
B:50%の確率で10000円を失うが、50%の確率で失わずに済む

 

以上の二つの質問であなたはどちらを選択したでしょうか?

恐らく多くの人が問題1ではAを、問題2ではBを選んだかと思われます。しかし、ここにはある矛盾が存在します。

二つの選択肢Aを比べてみます。問題1では5000円もらえる、問題2では5000円失うという選択肢Aですが、どちらも最終的な所持金額は15000円です。同様に選択肢Bについて見てみます。これも期待値に換算すれば同じように所持金額が15000円になります。

つまり、今の二つの質問は期待値ベースで考えれば全て同じ所持金額になります。私たちが合理的に物事を考えられるのであれば、回答に傾向が生じるのはおかしいはずです。どれを選んでも、数字で考えれば結果は一緒になるのですから。

しかし、そうはなりません。

 

 プロスペクト理論

このことは2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが確立した”プロスペクト理論”によって理論付けられました。

私たち人間にはある傾向が存在します。

一つ目はある値を基準とするとき、人間は得られる価値を小さく感じ、失う価値を大きく感じるというものです。更に、どちらも値が大きくなればなるほどその価値を感じにくくなるのですが、効果が弱まりにくいのは損失の方だとされています。

プロスペクト理論で用いられる価値関数のグラフを使って、先ほどの状態を考えてみましょう。

価値関数というのは、実際の数字を私たちが体感する価値に直すとどのくらいの数字になるのかというのを対応させたものです。下にグラフを示しておりますが、横軸が実際の数字で、縦軸が私たちが実感する価値となっています。

グラフ中に、プロスペクト理論に基づいて計算される値を書いてありますので確認してみてください。利益よりも損失の方が大きい値になっていることが分かるかと思います。

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二つ目は、人間は非常に低い確率・非常に高い確率における変化を感じやすいというものです。更に、真ん中くらいの確率の変化はそれらよりも小さく感じるという傾向もあります。

どうやっても賞金を得られない場面で、仮に5%まで可能性が上がったら大きく確率が上がったように感じはしないでしょうか。同じように、対人スポーツで100%勝てると見込む相手がいたとして、それが95%の勝率の相手に変わったとしたら、それは非常に大きな変化だと感じないでしょうか。しかし、50%成功すると思っていた勝負が45%に変わっても、あなたは大した変化を感じないかと思います。

ここまで例を挙げたものは全て同じ5%の変化でしたが、その変化を同じように感じたでしょうか。そうではなかったはずです。

下のグラフは今の例で挙げた状況を表しています。なお、利益を得る時と、失う時とで若干形状が異なります。

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ここまでで分かった値を使って、再度期待値を計算してみましょう。

その結果がこちらの表です。

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問題1ではAを、問題2ではBを選ぶ方が得をすることは明らかですね。

こうして、プロスペクト理論の下で考えれば、どちらを選べばいいのかというのは数字としてもはっきり分かるようになりました。

 

 結局、宝くじは得なのか損なのか

もう一度、宝くじで考えてみましょう。プロスペクト理論のもとでは、宝くじは得なのでしょうか、それとも損なのでしょうか。

ということで改めて計算してみた結果を次の表にまとめました。

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プロスペクト理論に従うと、期待値の合計は約38000円となりました。プロスペクト理論は私たちが体感する主観的な感覚を表したものなので、今回の計算で得られた数字で考えれば、私たちは一回宝くじを買うことで約38000円返ってくる見込みを感じているということになります。

年末ジャンボ宝くじの1枚300円という費用を大きく超える利益(約38000円)を私たちは体感してしまうのです。

Photo by Pixabay  [参考文献•注釈]

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