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今年で91回を迎える東京箱根間往復大学駅伝競走、通称「箱根駅伝」が年明け、1月2日〜3日に行われました。今年は青山学院大学が往路復路を含めた総合優勝を成し遂げました。この箱根駅伝は毎年、日本の長距離界を担うスター選手を多く輩出しています。

例えば、15,000mの日本記録保持者である瀬古利彦さんは大学時代、早稲田大学にて箱根駅伝「花の2区」を4年連続で走っています。2012年のロンドンオリンピック日本代表の藤原新さんも拓殖大学時代、箱根駅伝に2回出場しています。そして、今年も注目選手がたくさんいました。

さらに2020年に迎える東京オリンピックでマラソン選手として走る選手もこの駅伝からでてくるのではないかという期待もあり、今年は例年に比べ、一層注目されていました。

このようなオリジナリティーあふれる選手もこの箱根駅伝の魅力の一つになっています。その人気を裏付けるかのように、毎年25%前後の視聴率を出しています。今年も平均視聴率28,3%で高視聴率となっていました。

この高視聴率を毎年出すという点では「国民的番組」とも言えるでしょう。

しかしながら、この「国民的番組」になり得たのは「走るのが好き」「走っているのを見るのが好き」「駅伝が好き」だからという単純な理由だけではないはずです。箱根駅伝は報道の中に人種差別的な要素を織り込んでいます。それこそが箱根駅伝を「国民的番組」にならしめたのではないかと筆者は考えます。

 

 ナショナリズムの確認作業

今まで、多くの外国人選手がこの箱根路を走ってきました。近年の有名外国人留学生選手としては山梨学院大学のモグス選手、同大学のコスマス選手、日本大学のベンジャミン選手などが挙げられます。

そして、この外国人選手のごぼう抜きとそれに抗う日本人選手の走りは5区の山登りと供に箱根駅伝の代名詞ともなっています。この「外国人留学生/日本人」という対立構図こそがが国民的番組になり得た理由の一つです。

そしてそれは「味方/敵」という構図にもなり得ます。こういった構図は、オリンピックやW杯で日本を応援していることと同等とも言えます。

しかしながら、この構図はステレオタイプから形成されています。

箱根駅伝に限らず、スポーツ全般でこのような対決を見る時に、アナウンサーによる「超人的な身体能力を持つ○○(黒人)」と「驚異的な精神力を持つ○○(日本人)」と言ったような解説を聞いた事がある人も多いと思います。それに加え、日本人選手の練習風景は外国人選手のそれよりもフォーカスされる傾向にあります。

そのような報道は「黒人が生まれながらにして足が速い」と「黒人は日本人よりも努力しない」という半ば間違ったイメージを構成しかねません。ではこの二つの情報がどのような点で間違っているのかをこれから述べていきます。(※本稿で登場する黒人という言葉は決して差別的な意味で用いているわけではありません。)

 

 誤解①「黒人身体能力神話」

一つ目の誤解は「黒人が生まれながらにして足が速い」というものです。

アメリカ研究を専門としている武蔵大学教授の川島浩平氏は日本では黒人身体能力神話が無批判に流布し、消費されていると述べています。川島氏は黒人の身体能力を否定している訳ではありません。黒人の優勢/劣勢的な身体能力は後天的(地理、経済、社会など)な影響が大きいため、先天的なものであるとは断定できないというのが彼の主張の趣旨です。

川島氏によると、黒人はスポーツ選手としての将来を期待されていて、それは「出世するには運動選手しかない」というものと表裏一体になっています。その通説が流布しているために、勉強をしっかりしたり、時間厳守に行動していたりすると「白人ぶっている」とみなされ、一部の黒人グループから疎外されてしまうこともあるそうです。

黒人身体能力神話という「ステレオタイプ」が黒人たちへの「期待」に代わり、それ故「出世するには運動選手しかない」というマインドになってしまいます。

 

 誤解②「黒人=怠惰」

二つ目の誤解は「黒人=怠惰」「黒人は努力しない」というイメージです。

箱根駅伝に関して言えば、第65回の箱根駅伝で「外国人留学生」が問題になりました。その対象となったのは山梨学院大学に所属していたジョセフ・オツオリ選手とケネディ・イセナ選手の2人です。

そしてこの大会で、山梨学院はシード権を獲得しましたが、その結果とは裏腹に、山梨学院、特に留学生に対しての批判が相次ぎました。外国人留学生がプロ野球で言うところの助っ人外国人扱いをされたのです。当時の監督は、その批判に対して納得ができなかったそうです。

なぜならば、そのような批判は山梨学院に所属している全選手の努力を否定するものだからでした。そこで強調しているのは留学生の元々の実力です。元々彼らは母国ケニアでは飛び抜けて速いランナーではなく、山梨学院入学後、相当な努力をしたそうです。それが、チーム内の競争力を高め、その結果、シード権獲得に至ったと言います。

 

 今後スポーツを見るにあたって

本記事で伝えたかった事は「黒人は努力せずとも足が生まれつき速い」というイメージは個人が持つステレオタイプによって間違って解釈されている可能性があるということでした。一概に「黒人が速い」と言っても、それは全てが全て生まれ持った才能によるものではないということです。

この知識は箱根駅伝に限った事ではなく、年始に行われたニューイヤー駅伝や駅伝以外のスポーツにも適用することができます。2015年、このような知識を持った上で、スポーツ中継を見たら、いつもとは違った視点で見れるかもしれません。

photo by Xiaojun Deng [参考文献]

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