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 マーク式テストの噂

私たちが受ける試験には記述式、マーク式といった大きく分けて二つの試験が存在しています。そしてマーク式テストの中で最も多くの人たちに馴染みがあるのがセンター試験ではないでしょうか。

センター試験に限らず、マーク式テストというものには問題の傾向に関して心理学的な観点から言われているいくつかの仮説が存在します。

本稿では二つの事象について取り上げ、それが本当に正しいのどうか、実際のセンター試験問題5年分を使って検討してみます。

 

 ”エの法則”

まず、問題作成者の観点から言われているものが”エの法則”です。これは作成者が受験者の正確な学力を測りたいという意図のもと、起き得る現象を指しています。

受験者が解答1から検討する傾向が高いという仮定のもと、仮に解答1を正解だとした場合、その選択肢の内容を読んで正確な知識を用いて解答する人もいれば、曖昧な知識で最初に読んだ選択肢だからという理由で選ぶ人もいます。

しかし、作成者としては出来るだけ受験者に選択肢を吟味させることが知識を測るために必要とするため、多くの選択肢を読んでもらおうとします。このままでいけば、正解は最後のもの、仮に5つあるとすれば”オ”になりますが、そのままでは最後の選択肢から検討する少数の受験者にとって同じ状況になってしまうので、最後から二番目の選択肢”エ”を正解とする、という判断がより合理的な結論ということになります。

 

 連続する回答に矛盾を感じる

次に、受験者の観点から言われているのが”認知的不協和理論”です。

今、あなたが受験者としてセンター試験問題を解いている、という状況を想像してみましょう。問題を解いている最中にあなたは自分の回答が非常に偏っていることに気づきました。解答1ばかりが5つも続いていたり、6問続けて解答4を選んでいるような状況です。

そうした時、自分の解答に不安を感じる人もいるのではないでしょうか。

これは、20世紀のアメリカの心理学者、レオン・フェスティンガーが提唱した認知的不協和理論によって説明することが出来ます。

認知的不協和、というのは自分の中に矛盾した認識が混ざり合っているような状況です。例として、喫煙者を考えてみましょう。喫煙には人によって程度の差はあれ健康に対して害を与える影響があります。しかし、喫煙者はそれを知りながら喫煙を続けているわけです。ここで、喫煙を続ける自分に対して矛盾が存在します。

「なぜ、私は自分自身に害があると分かっているのにタバコを吸うのだろうか」

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この時、認知1と認知2は矛盾しており合理的ではありません。こうした状況において、私たち人間はこのどちらかを変更することでバランスを保とうとします。

ある人は、禁煙を行うことで認知1を変更し、またある人は煙草を吸っていても健康な人が身近にいる、喫煙と健康被害に因果関係はない、という主張をして認知2の存在を否定します。

これが認知的不協和理論の説明する私たち人間の心理です。

これをセンター試験における受験者の心理に適用してみましょう。適用するには仮定が必要となります。

それは、受験者全員が”問題作成者は根拠もなく当てずっぽうで同じ回答だけ選ぶ受験生を落とすために、なるべく回答をばらしてくるだろう”という考えを持っている、というものです。

先ほどの喫煙者の例と同様に表にしてみましょう。

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認知aと認知bが矛盾していることは誰の目にも明らかです。この状況が受験生に対して不安を感じさせる一因ではないかと考えられます。

勿論、この場合にも認知を変更すればよいわけです。認知aについて、”エの法則”をもとに偏っていても問題ないと考える、または認知bについて、私はしっかりと考えた上で回答を選んでいるから大丈夫、などです。

 

 センター試験の回答に偏りは存在するのか

このようにセンター試験などマーク式テストについては色々な考え方が存在しています。では、実際にセンター試験の回答分布はどのようになっているのでしょうか。

本稿では、比較的選択肢の数が安定している英語と国語について過去5年分の正解に関する統計をとってみました。

英語は4つの選択肢があるもののみ、国語は5つの選択肢があるもののみを抽出しました。

まず英語について見てみましょう。

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解答1に集まる年もあれば、解答4に集まる年もあり、また全て殆ど均等という年もありました。英語に関しては特別に偏りがあるというわけではなさそうです。

連続した回答が最大幾つまで続いているかについても調べてみた結果が次のグラフです。5年間の平均を示したものとなっています。

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解答が2回連続することは1年に平均して2回は起こり得るようです。また、3回連続することは一年に1回あるかないか、4回連続については解答2・解答3の真ん中の選択肢にしか起こり得ませんでした。

次に国語について見てみます。

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こちらも年によってばらばらな分布となっており、特別に傾向が存在するわけではないようです。

同様に、連続解答の状況についても見ていきましょう。

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連続解答については英語と異なる結果になりました。3回以上解答が連続することがなく、2回連続についても1年に1回ある可能性も低い、というものになりました。これは英語と比べて回答数が少なく、且つ選択肢が多いことで生じたと考えられますが、逆に言えば問題作成者が意図して連続させているわけではないことを示したものだと考えることも出来ます。

以上の調べから、センター試験の解答分布には特別な偏りが存在しない可能性が高いことが分かりました。

英語と国語の過去5年間について調べた限りではありますが、他の教科についても方針を特別に変更する理由は考えにくいので、同じような状況になるのではないかと思われます。

 

 センター試験の解答分布に偏りは存在しない

センター試験を前にすると、様々な噂が耳に入ってくるものです。それは冒頭で紹介した”エの法則”のようなものから、解答1だけ選び続けても8割得点出来たなどと他者の噂などのようによくわからないものまで、試験前の緊張した状態では本当なのか嘘なのかも分からないようになってしまうかもしれません。

しかし、センター試験の解答分布には特に法則性は見られませんでした。結局は自分のやってきた勉強の成果を出せるよう自分を信じるしかなく、本番でその成果を発揮できるように最善の準備を行って試験を迎えるしかないのです。

自分自身が合理的に納得できる選択肢を選び、それを選んだ自分を信じてセンター試験を解いていけるよう、ご健闘をお祈りしております。

Photo by wikimedia [参考文献]

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