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 変わる大学入試

2014年、中央教育審議会が大学入試改革に関する答申案を出し、従来のセンター試験に変わって高校時代を通じ複数回行う「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を実施することを提案しました。

特に、英語については「読むこと」「聞くこと」「書くこと」「話すこと」の4技能を総合的に評価するために、TOEFLなどの外部試験を活用することも検討されています。

グローバル化が叫ばれる中、大学入試改革を通じて高校における教育のあり方を変え、積極的にネイティブともコミュニケーションをとれるようにしようと考えているとみて間違いないでしょう。

以前から日本の大学入試は「読むこと」と「聞くこと」を偏重する試験であると指摘され問題視されてきました。大学入試そのものが見直される中、センター試験はどのような役割を持つのか。英語力の正しい評価法という観点からその特徴を見ていきたいと思います。

 

 英語力を評価する正しい尺度とは?

言語の習得度をどのように測定するかという議論は、教育学と言語学双方の観点からなされてきました。

一口に英語力といっても様々な能力が含まれます。例えば「読むこと」に含まれる力も細かく見れば語彙力や文法、構文理解など様々な要素に分類できるでしょう。

こうした要素は構成概念と呼ばれそれぞれの要素が複合的に組み合わさることで外国語は習得できます。これらの要素の何を測るかを明確に認識した上で、それらの項目が適切に測られているか実証されることが正しい英語力測定のためには不可欠です。

つまり、テストの制作者が良い問題を作ろうと思うならば、「話すこと」や「聞くこと」など、どの能力を計測したいのかそれぞれの問題ごとに明確に認識している必要があるということです。

この時、問題作成者はテスト細目と呼ばれるテストの設計書を作ります。文書や表などの形で分かりやすく示すことで、試験の目的とかけ離れた点数の偏りが出ることなどを防ぐことができます。

 

 受験者の能力を正確に表すために必要な等化

さらに良いテスト問題を作るには「点数の等化」という作業が必要です。例えば、TOEICのように回ごとに問題の内容が違う場合、それぞれの試験で難易度がバラついてしまうと受験者の語学力を比較することができなくなってしまいます。

難易度が極端に変わったり、特定の回の受験者が有利になることを防ぐため、それぞれの問題ごとの点数の尺度を同じ程度に抑えておかなければいけません。このことを「点数の等化」と言います。

センター試験でも他教科との間で難易度が著しく点数の価値が異なることがないよう点数の等化が行われています。(他教科との間で著しく平均点が異なる場合などは得点調整が行われます)。

 

 変わるセンター試験の役割

こうしたことを踏まえてセンター試験の役割について考え直してみましょう。大学入試センターのHPによればセンター試験は、

“大学(短期大学を含む。以下同じ。)に入学を志願する者の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを主たる目的とするもの”

と定義されています。そのために、大学入試センターは、高等学校教育の程度や範囲を超えた難問奇問を排除した良質な問題の作成を目指しています。

それでは、センター試験(英語)では、高等学校教育の程度や範囲をどのようにして決めているのでしょうか。

高校での外国語教育の指針を定めているのが文部科学省の制定する学習指導要領です。学習指導要領は約10年ごとに改訂され、最近ではゆとり教育への批判を受け、平成25年度(2013年度)に新学習指導要領へと移行しました。

最新の学習指導要領を見ると英語の科目名にも大きな変化があったことに気づきます。文部科学省の『高等学校学習指導要領解説』によれば、外国語の科目名を従来の呼び方から変更し、「コミュニケーション英語I・II・III・基礎」「英語表現I・II」「英語会話」という風に変えています。

これらの変更はビジネスなどの場面で英語が必要とされる社会の変化を受け、文部科学省が「聞くこと」「書くこと」「読むこと」「話すこと」の4技能を総合的に活用できるコミュニケーション能力を育成することを目的に改善されました。

新学習指導要領が発表される以前からセンター試験でも英語は少しずつ試験の形式を変え、「広告文の読み取り問題」や「イラスト説明問題」などが取り入れられました。これらの問題はいずれもイラストや表などを含めてそこに書かれている内容を総合的に判断する能力が必要とされます。

このように文部科学省の新学習指導要領への移行を受け、センター試験においても総合的に「コミュニケーション能力」を測ろうという試みがなされています。

 

 コミュニケーション能力をどう測るか

では、コミュニケーション能力を構成概念として分類し、正確に測定することは可能なのでしょうか? 実は、コミュニケーション能力を正確に分類し、測定することができるかどうかということはまだ研究の段階にあり、言語学者によってコミュニケーションに必要な能力の分類も異なっているのです。

そのため、現状では、文部科学省が4技能に基づいた「コミュニケーション能力」の習得を高等教育で定めているにも関わらず、その習得度を正確に把握する手段というのは確立されていないと言えるでしょう。

さらに、英語教育学の中では、どの目的にも合致する最善のテストを作ることはできないということが指摘されています。もしあなたが自分の英語力をきちんと知りたいと思うならば、英語力というものも時代のニーズに合わせて変化するものであり、普遍的な「英語学力」というものは存在しないということを知っておいた方が良さそうです。

そうしたことを踏まえることで、自分の目的に合った英語学習法と英語力測定テストを選ぶことができ、自分のレベルに合った学習が可能になるのではないでしょうか。

[参考文献]

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