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「風邪を引いたけれど、すぐ治したいから抗生剤が欲しい」「熱が出ても抗生剤をくれない医者には行かない」

そのように考えている方は意外と多いのではないでしょうか?

抗生剤は、一般的に風邪には効果がありません。そして、不要な抗生剤を使用すればするほど、耐性菌が増えてしまいます。

耐性菌とは、最初はある抗生剤が効果的であった細菌が、抗生剤を使用していくなかで、その抗生剤に対して「耐性」を獲得し、抗生剤が効かない細菌に変化したものをいいます。

耐性菌は、近年増加しており、世界的な問題となっています。WHOは、少なくとも世界で年間15万人が耐性菌によって命を落としているとしています。

今、耐性菌の増加から、抗生剤の適正使用の必要性が叫ばれています。

これまで「耐性菌との終わりなき戦い①抗生剤とは?」「耐性菌との終わりなき戦い②なぜ耐性菌は増えているのか?」の記事の中で、耐性菌に関する現状を説明してきました。

シリーズ最終回の今回は、これからの耐性菌対策について紹介したいと思います。

 

 抗生剤ができれば耐性菌が生まれる

まず、下の年表を参照してください。上段が、主な抗生剤が開発された年を表しています。下段がそれぞれの抗生剤に対する耐性菌が出現した年を表しています。それぞれの抗生剤を同じ色で示しています。

図1

(文献1を参考に筆者作製)

この図が示すことは2点あります。

・抗生剤ができれば、大抵の場合、数年で耐性菌が出現する。

・1970年代以降、新規の抗生剤の出現が少ない。(上段の密度を見てみてください。1970年を過ぎたあたりから、新規の抗生剤は減っています。)

すなわち、抗生剤ができれば、耐性菌は生まれるのです。このいたちごっこを繰り返しているのが現状です。細菌と戦うために人間は新しい抗生剤を開発し続ける必要があります。しかし、その開発の勢いは近年、失速しています。

※誤解のないように書き添えますが、耐性菌の出現と同時にその抗生剤が全く使えなくなるわけではありません。今まで効果を発揮していた細菌の一部に対して効果がなくなるという意味です。耐性菌の割合が増えていけば、徐々にその抗生剤の活躍の場は減っていきます。

ではなぜ、抗生剤の開発は失速しているのでしょうか?

 抗生剤の開発

「主要な製薬会社が抗生剤の開発から手を引いている」ということが抗生剤開発失速の大きな原因の一つと考えられています。理由は、

・抗生剤の開発には膨大な費用がかかる

・薬の開発には、患者を対象とした安全性や効果の確認試験を行う必要があるが、抗生剤を使用する状況は待ったなしの重大な感染症に罹っている場合も多く、その試験がやりにくい

・他の病気(高血圧、高脂血症、気管支喘息など)に対する薬は、長い期間飲まれることによって利益をあげやすいが、抗生剤は使用されてもせいぜい数週間程度であり、利益をあげにくい

・新しく開発された抗生剤は、他の古い抗生剤が使用できなくなってしまった状況に対する奥の手として温存されるので、なおさら使用する頻度が低く、利益にならない

この状況を打開するために、欧米では昨今、抗生剤開発研究への優遇措置がとられ始めています。国家レベルのこれからの耐性菌対策の一つとして、新規の抗生剤開発への支援があります。

 

 私たちができること

では、私たちができるこれからの耐性菌対策はどのようなことでしょうか。

誰にでも、抗生剤が本当に必要な感染症に罹る可能性があります。そして今この瞬間にもその状況にある患者さんがいます。もし、その感染症が耐性菌によるものであれば、治療の選択肢は大きく減ってしまいます。

そのような事態を避けるために、まず、日頃から抗生剤を適切なときにのみ使用する姿勢が必要です。繰り返しますが、一般的な風邪に抗生剤は必要ありません。このことを、医療者のみならず、社会全体が認識することが大切です。

この認識を持つことのほかに、肺炎球菌やHib(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)といった細菌に対するワクチン(子どもや高齢者が対象)を打ち、避けられる細菌感染を防ぐ、ということも有効です。

耐性菌との終わりなき戦いはこれからも続きます。抗生剤は人類共通の財産です。この財産を私たちは未来のためにしっかり守っていく必要があります。

Photo by NIAID  [参考文献]

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