戦争の犠牲になる子どもたち、後藤健二さんが伝えたかったこと

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 後藤健二さんの作品 “broken boy”

後藤健二さんの作品が2月18日まで東京有楽町の「ギャラリー日比谷」にて展示されていました。

展示されている作品は、後藤健二さんとアーティストの高津央さんが共同で制作した”broken boy”というものです。リベリアの紛争で犠牲になった子どもが埋葬されている写真に、コラージュが加わっています。コラージュが加わることで抽象化され、報道写真とは違った独特の世界観が表現されています。

(”broken boy”)

後藤さんは戦場の子どもたちを多く取材していたといいます。作品は、その後藤さんの子どもたちに対する想い、祈りを感じさせるものでした。

筆者は小児科医をしています。小児科医は常に、子どもの味方でありたいと思うものです。後藤さんの作品に何か通じるものを感じました。

後藤さんが伝えたかったことは何でしょうか。作品を見て筆者なりに今思うことは、「大人たちの争いに巻き込まれた子どもたちへの鎮魂」のような気がしています。

「子どもたち」のことを考えるとき、民族も宗教も国境も政治思想も関係ないのだと思います。紛争やテロの犠牲になってしまった子どもたち、その報復のための空爆の空の下にいる子どもたち・・・戦争に巻き込まれた全ての子どもたちに後藤さんは想いを馳せていたのではないかと思います。

 

 子どもたちにとって戦争の脅威は増大している

戦争は人々の生活、健康を脅かすとても大きな要因です。なかでも、子どもたちへの影響は甚大です。

まず、下の図をみてください。

2

(文献1を参考に筆者作成)

この図は、 近年、戦争において一般市民の犠牲の割合が増えていることを表しています。1980年以降においてはかなりの割合を占めています。理由として、

・空爆によって広範囲が攻撃されるようになったこと

・非戦闘地域が不明確になってきていること

・学校や病院などのこれまで安全とされてきた施設も攻撃の対象になってきていること

・テロ行為によって突然市民生活の場が攻撃されるようになったこと

などが考えられています。一般市民の中には当然子どもたちも多く含まれます。この「一般市民が戦争に巻き込まれやすい」という傾向はそのまま子どもたちへの戦争の脅威の増大と言えるのです。

次に、子どもたちの犠牲を数字でみてみます。それぞれ、全世界における1年間の推定値です。

・戦争で死亡する子どもの数:約20万人

・戦争で何らかの障がいを負う子どもの数:約50万人

・戦争で家を失ったり、孤児になる子どもの数:約200万人

これらの数字は戦争による直接の影響を反映しています。それ以外にも、感染症の蔓延や低栄養状態、貧困など様々な間接的影響がもたらされます。

シリアでは長引く紛争の影響で、ワクチン接種が十分になされず、国内から一旦消えていたポリオ※が再興しました。

(※ポリオ:ポリオウイルスに感染することで発症する。主に乳幼児に罹る感染症。生涯残る麻痺が生じることがある。世界的には激減しているが、パキスタンやアフガニスタン、ナイジェリアなどではまだ流行がみられる。)

また、これらに加え、世界では現在約30万人の18歳以下の兵士が戦闘に加わっている事実もあります。

数字が全てではありませんが、その”多さ”を実感として持っておくことは大切ではないでしょうか。

数字は、一人一人を匿名化してしまいます。しかし、後藤さんは、まさに一人一人に向き合って記録し、伝えようとしていました。

後藤さんの冥福を心よりお祈りいたします。

[参考文献]

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