佐藤慶一×小川未来×前島恵「ウェブ生まれの編集者が本屋で語る、これからの編集•メディア論」先行インタビュー(後編)

【読了時間:約 10分
前島
それでは後編では二人が現在のメディアまわりに対して持っている問題意識と、それを踏まえて今回のイベントで伝えたい事、来て欲しい人などについて聞いていきたいと思います。 

前編はこちらから。『佐藤慶一×小川未来×前島恵「ウェブ生まれの編集者が本屋で語る、これからの編集•メディア論」先行インタビュー(前編)

小川
「編集」が礼賛されすぎているような印象を持っています。少し前から「デザイン」という言葉と同じように、拡張されてもてはやされたような位置に今「編集」はいますよね。「編集」が枕詞につく書籍を目にするようになりました。スタートアップ向けの求人サイトなんかでも、編集職の求人がたくさん出ています。 
小川
でも、今のwebメディアの状況を見ると、編集とは少し違うことをやらされる可能性が高い。編集という概念は拡大して盛り上がっているのに、いま表面的に最も編集者を欲しているwebメディア周りのひとたちが言う編集は、ずれてきてしまっている気がする。今後webメディアはもっと良くなって欲しいし、ぼくや慶一くんよりもさらに若い編集者の仲間も増えてほしいと思っているので、そうした若い人に今回のイベントに来て欲しいというのはありますね。 
前島
今回のイベントで取り上げるような書籍の中で言われている「編集」と、ネット上で求人されている「編集」では意味がずれていると感じることはありますね。もちろん合致している場合もあるけれど、さっき言ったバイラルメディアとかだとバズりそうなコンテンツ持って来てコピペしてみたいな場合もありますよね。そうした仕事に今編集者やりたいって言っている若者が吸引されていく状況は気の毒だと思いますね。 
小川
前編の慶一君の話で出てきた、「なぜこのメディアなのか、なぜそのネタをとりあげるのか」という問いは、日々の記事更新や収益化で大変な新興webメディアには無いものかもしれないですね。
前島
NPOの特徴としてあると思ったのは、商業性に支配されずに学生に対してそうした問いをできるところですよね。商業メディアですと、そうした時間はなかなかとれないかもしれません。「いくらで何記事書いて、何PVくらい稼げるのか?」という世界なので。
佐藤
そうですね。ですから今のバイラルメディアやキュレーションメディアに最初に入るとそうした問いを立てないままになってしまうかもしれないですね。
前島
それは若手に対して重要なメッセージですね。

 

 

 「編集者」になるハードルが下がったことの弊害

 

前島
どの時代にも功名心や自己承認欲求が強烈に強い層は一定いるわけですが、そうした人の欲求が今の文脈で言う「編集者」「ライター」という手段によって実現されやすくなっているとは思います。自分でコンテンツをつくるためには取材にいったり、知識をつけたりといった一次情報を生み出すのは結構大変です。しかし、コピペしてwebで記事書いて、「編集者」「ライター」と名乗れるようになって、PVも稼げてしまうので、そうした人たちが容易に欲望を満たされやすい時代ではありますよね。
佐藤
時間をかけて取材するとかおもしろい切り口でキュレーションやれば凄く面白いんですよね。たとえばFRIDAYが小渕優子さんの騒動の時に「小渕優子の『政治資金を使った』グルメの名店18リスト」というリスト記事を出していて面白かったですね。
小川
それはNAVERまとめ的なものをキュレーションと呼んで良いのかという議論とも繋がってきますよね。そういったものだけを編集と思われると困るというのはありますね。メール対応が重要みたいな話はすごくわかります。実際、編集者の仕事は9割が調整だと思います。僕がアシスタントをやっている大物編集者でも、華やかに見えて調整にほとんどの時間を割いていますね。華やかな裏には苦労があって、それなのにキュレーションメディアは、制作を編集の華やかな部分だけで実現してしまっていますよね。
佐藤
キュレーションメディアは 調整がいらないからね。
前島
現状のソーシャルメディアやGoogleが今は規制していないから良いけど、もし規制されたらキュレーションメディア、バイラルメディアでつけた力は恐らく役に立たないですよね。「すぐに役に立つものはすぐに役に立たなくなる」ということですね。つぶしの聞く力はついていないですよね。さっきの調整力みたいなものってメディアが何であろうと使えるであろうことは想像できます。編集の一面を「編集」と呼んでしまっていることはもったいないなあと感じますね。
小川
承認欲求高いクラスタの一員としては気持ちはわからなくもないですが(笑)、「キュレーションメディアのインターンで1万PVゲットしたやったー」で満足してしまうのは残念だと思います。自分では何も生み出していないですし。そうした人が増えるとweb上のコンテンツの質はどんどん下がっていく。
佐藤
そうした人は別の都合の良いフォーマットが見つかったらそそくさとそちらに行ってしまうのではないか思います。
小川
さっき前島君が言っていたように編集のスキル自体はものすごくポータブルなものですよね。それが何なのかということは意外と本では見えづらいのかもしれない。紙メディアの人がwebのスタートアップとかに移っていくのは良いことだと思うのですが、そうなっていかないのはwebの編集ってやっぱり面白くないから。取材も行かせてくれないし、ぱぱっとキュレーションしてPVを稼ぐやつが出世していく世界なので。webだけの編集だと心が廃れると思います。
前島
疲弊するよね。PVという魔物がいますからね。一時的にPV稼げると嬉しいのだけれど、PVに一喜一憂している自分をメタ的に見て幻滅したりして。
小川
それを毎日繰り返すわけですよね。
前島
移り変わりが激しいからナレッジも蓄積しづらい印象があります。
小川
そういった意味では、編集者の地位を上げたいというのはありますね。実質的に規模とジャンルが違うだけで、映画監督とやっていることはかわらないですからね。
前島
やはりそこには編集に対する世の中のステレオタイプが作用していますよね。前編でも言いましたが、「誤字脱字のチェック」や「レイアウトの調整」といったものが一般的な「編集者の仕事」に対するイメージだと思います。コンセプトを作って取材対象の持ち味を引き出して、それを一つのものにまとめるという意味では「クリエイター」と呼んで良いですよね。そういった状況の上で、編集という行為の特性上仕方ない部分もあるので、表に出ていく編集者はこれからもっと必要なのかもしれないですね。

 

 

 今回のイベントで伝えたい事

前島
最後に今回のイベントで来てもらいたい人、伝えられそうな事について一言もらって閉じたいと思います。
佐藤
今学生でメディアで編集者やっている人や、やってみようかなという人、問題意識を多少なりとも傾けている人に来てもらいたいですね。既にやっている人も自分と照らし合わせながら 考えていただけると思います。
小川
webだけしかやったことが無い人には特に刺さるものがあるかもしれないですね。僕は「これからの編集が越境的にならざるを得ない理由」みたいなものを持って帰ってもらえればと思います。
前島
僕は批判的な視点ですね。今のメディア状況を鵜呑みにするのではなく、より良くしていくためのヒントを得てもらえれば嬉しいです。それでは、今日は二人ともありがとうございました。当日もよろしくお願いします。

 

※イベントの予約は会場であるB&Bの下記webサイトからお願いいたします。

佐藤慶一×小川未来×前島恵ウェブ生まれの編集者が本屋で語る、これからの編集•メディア論

【プロフィール】

佐藤慶一
編集者。1990年生まれ。新潟県佐渡島出身。学生時代にNPO法人グリーンズが運営するウェブマガジン「greenz.jp」のライターインターンやコンテンツマーケティングを手がけるメディア企業での編集アルバイト経験を経て、フリー編集者として講談社「現代ビジネス」の企画編集・ライティングをおこなう。ブログ「メディアの輪郭」を運営。

小川未来
1991年生まれ。慶應義塾大学4年。アシスタントエディターとして、(有)菅付事務所でアートブックや新書の編集に携わる他、livedoorポータル上のタイアップ記事制作をサポートしている。講談社現代ビジネスにて、コラム『就活事変』を連載中

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