「戦後70年談話」に向けた「21世紀構想懇談会」が始まる、今後何が焦点となる?

【読了時間:約 5分

各社報道によれば、安倍晋三首相が今夏に発表する「戦後70年談話」に関する有識者会議21世紀構想懇談会」の初会合が2月25日、官邸で開かれました。

会合の正式名称は「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」です。日本郵政社長の西室泰三氏が座長に、国際大学長の北岡伸一氏が座長代理に就任しました。

めまぐるしい今日の世界情勢にあって、日本は今、戦後最大とも言える政治的岐路に立っていると言えるでしょう。安倍政権は現在、憲法改正を視野に入れつつ、集団的自衛権のあり方や自衛隊による海外派兵の是非などについて検討を進めています。

他方、アジア各国からは連日のように慰安婦問題等の歴史認識問題が指摘されています。そんな中にあって「21世紀構想懇談会」は如何なる議論を行い、どのような最終報告書をまとめるのでしょうか。本記事では、25日に開催された初会合の様子を解説します。

 

 21世紀構想懇談会で語られた内容とは

西室氏を座長とする「21世紀構想懇談会」初会合の出席者は座長を含むメンバー16名に加え、政府側からは安倍総理、菅内閣官房長官ら合わせて7名が参加しました。

会合の冒頭、安倍総理はその挨拶の中で21世紀における日本の役割を「国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の下、国際社会を平和にし、豊かにし、人々の幸福を実現していく」ことと述べた上で、以下の5つの論点を提示しました。

 

1. 20世紀の世界と日本の歩みをどう考えるか。私たちが20世紀の経験から汲むべき教訓は何か。

2. 日本は、戦後70年間、20世紀の教訓をふまえて、どのような道を歩んできたのか。特に、戦後日本の平和主義、経済発展、国際貢献をどのように評価するか。

3. 日本は、戦後70年、米国、豪州、欧州の国々と、また、特に中国、韓国をはじめとするアジアの国々等と、どのような和解の道を歩んできたか。

4. 20世紀の教訓をふまえて、21世紀のアジアと世界のビジョンをどう描くか。日本はどのような貢献をするべきか。

5. 戦後70周年に当たって我が国が取るべき具体的施策はどのようなものか。

 

安倍総理の挨拶の後は、座長及び座長代理の選出がなされ、その後は各メンバーによる挨拶が続きました。その中で行われた意見交換では、

「未来を考えていく『ゆとりのある反省』と20世紀を振り返ってみるとそこには21世紀が見える『ふりかえれば未来』という二つの観点が重要」

「安倍総理は中東で「中庸」のメッセージを発したが、日本が本来の穏やかなプレゼンテーションを続けていくことが有用」

「歴史に関する議論と言うと、往々にして敏感なものであり、我々は可能な限り史実に忠実になり、公平かつ誠実な態度で歴史に向き合っていく必要がある」

「歴史を鑑として未来に向かうということがよく言われる。1945年以前の歴史も重要であるが、それ以後の歴史も大事であり、これをもって未来への鑑としていく、そのような未来思考も重要」

「戦後の和解は中国や韓国だけではなく、米国、豪州、欧州を加えた和解であったことを踏まえ、全体を見ていくことも重要」

といった意見が交わされたようです。

 

 今後、議論される焦点は

以上のような意見交換から、どのような印象を持つでしょうか。懇話会は非公開で開催されるため、私たちはその詳細については知ることが出来ませんが、今後の焦点はおそらく次の2点に絞られるものと予想されます。

1点目は、戦後50年の「村山談話」を踏襲するか否かという点です。村山談話では、日本が「過去の一時期」に国策を誤ったことを指摘しつつ、日本による「侵略」や「植民地支配」を謝罪しました。安倍総理が今夏に発表するとされる戦後70年談話では「侵略」や「植民地支配」という言葉は用いられるのでしょうか。村山談話と同じトーンでアジア各国に対する謝罪を行うのでしょうか。

2点目は、現在の安倍政権が進めている集団的自衛権の行使や自衛隊派兵の範囲拡大などについて、それらを如何に対外的に「正当化」するか(説得力を持って説明するか)、という点です。これは第1の論点と似て異なります。第1の点は歴史に対する「理解」に関わるものであり、2の点はその政策的な示唆(インプリケーション)に関わるものだからです。

とりわけこの2点目については、より慎重で、バランス感覚を持った議論が必要となります。なぜなら、アジア諸国に対する謝罪の程度(あるいはその調子、トーン)は、日本の唯一の同盟国である米国に対して、重大なシグナルを送るものとなるからです。

過度な謝罪は米国に対する誤ったシグナルとなるので、米国からの誤解を招くものと予想されます。

集団的自衛権の行使や自衛隊による海外派兵の信憑性も問われることとなるでしょう。

沖縄の米軍基地についても、安倍政権の真意が質されることとなるでしょう。他方、米国と共に行う積極的な世界政治への関与を重視した場合は、アジア各国からの更なる反発が予想されます。とりわけ、中国や韓国との協力関係の構築は難航するでしょう。

今後も、同懇談会による議論に注目していきたいと思います。

photo by Bill Strain [参考文献]

Credoをフォローする