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2月25日、安倍晋三首相が今夏に発表する「戦後70年談話」の内容について検討する「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」(21世紀構想懇談会)の初会合が首相官邸で開かれました。

「戦後70年談話」の内容については、1995年8月15日の戦後50周年記念式典に際し、当時の首相・村山富市氏が発表した、「村山内閣総理大臣談話」(以下「村山談話」)を踏襲するか否かが大きな焦点となっています。

「村山談話」では、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめん、とするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と、アジア諸国に対する謝罪が表明されています。

21世紀構想懇談会の初会合を受け、大手5紙(読売、朝日、毎日、産経、日経)は社説で、「戦後70年談話」に関する見解を論じています。

 

 朝日、毎日、日経は継承を重視

朝日は26日付の社説で、「(アジア太平洋地域や世界への)日本のさらなる貢献をうたうことに異論はない。だが、その基礎となるのは、戦前の日本の行為についての明確な認識と反省である。それをあいまいにしたまま未来を語っても、説得力は生まれない」、「全体として引き継ぐと掲げながら、植民地支配や侵略といったキーワードを村山談話もろとも棚上げにしてしまうのが新談話の目的ならば、出すべきではない」としています。「戦後70年談話」発表に際しては、戦争についての反省への言及が必須であり、「村山談話」を引き継ぐべきだという主張です。

毎日も27日付の社説で、「もしも、村山談話の核心的な表現を薄めるために、20世紀の教訓が語られるとしたら、70年談話は日本の国際的な立場を強めるどころか、無用な反発を招き寄せてしまう」、「安倍首相は有識者会議の初会合で『未来への土台は、過去と断絶したものではあり得ない』と語った。その言葉通りに過去に対する認識を揺るぎないものにすべきである」とし、「村山談話」の継承を求めています。

日経(26日付社説)も「首相の支持基盤である保守派は『村山談話は自虐史観である』として『痛切な反省』や『心からのお詫び』などのくだりをやり玉にあげることがある。過去の日本の行為を考えれば、これらの表現が行き過ぎとはいえない」として、朝日、毎日同様、「村山談話」を支持しています。

 

 読売は言及せず、産経は反対

読売(26日付社説)は、「戦後70年懇談会 21世紀の世界を構想したい」と題し、「未来志向の談話の前提として、戦前・戦中への反省と戦後の歩みをきちんと踏まえるのは、国際社会の理解を得るうえで重要だ」としたうえで、「アジアと世界の平和と繁栄を維持・発展させるため、日本がどのような役割を担う覚悟があるのか。同盟国の米国をはじめ、国際社会とどう連携していくのか。明確な理念と具体策を70年談話で打ち出すことが大切である」と主張しています。つまり、過去の反省に基づき、今後世界にどのように貢献するのか明確にせよと求めています。朝日、毎日とは違い、「村山談話」への言及はありません。

産経(27日付社説)も読売同様、「未来志向」を重視しています。ただ、他紙と大きくの異なるのは、「政府が特定の歴史観を打ち出すような談話は望ましくないということだ」と主張している点です。「村山談話」について、「日本が『過去の一時期』に国策を誤ったと断罪したものの、時期は特定しなかった。閣僚への十分な説明がなく、『終戦の日』に唐突に閣議へ提出されるなどその内容、手順ともに問題があった」と批判しています。そして同談話の弊害を、「村山談話に反する言動をしたと見なされた閣僚や政府関係者は強い批判を受けてきた。こうした日本国内の情勢から、中国や韓国は『歴史問題』が日本に対する効果的な外交カードになるとみて利用してきた」と論じています。こうした主張は、「村山談話」に疑問を持つ政治家・学者などが繰り返し指摘してきた点です。

産経はまた、「戦後70年談話」の作成に当たって、「村山談話」にある「侵略」や「植民地支配」をキーワードとすることは、「中韓の歴史戦、宣伝戦にからめとられかねない」と指摘し、「歴史にはさまざまな見方があることを無視する態度はおかしい」、「若い世代を含め、自虐的な歴史観を迫られ、国民が萎縮するような内容の談話が、いつまでも受け継がれるべきではない」と主張を展開しています。

 

 「村山談話」踏襲がマジョリティ

大手各紙の社説は、朝日、毎日、日経は「村山談話」を踏襲すべきという立場で、産経はそれに反対、読売は言及を避けるという構図になっています。

世論の見方としては、毎日が1月に行った世論調査では、安倍首相は「村山談話」を引き継ぐべきだと答えた人が50%、引き継がなくてよいと答えた人が34%でした。

また、2月に産経とFNN(フジニュースネットワーク)が行った世論調査では、「戦後70年談話」で、「村山談話」などにあった「侵略」や「反省」、「お詫び」といった表現を使うべきだと答えた人は51.6%、そう思わないと答えた人が36.6%となりました。

大手5紙とも、「戦後70年談話」で日本のさらなる国際社会への貢献を表明することについては異論のないところでしょう。一方で、意見が分かれる「村山談話」については、上記世論調査の結果などを踏まえると、朝日、毎日、日経が主張するように、過去への反省という観点から、同談話を踏襲すべきというのが現時点でのマジョリティだと言えます。

Photo by Dick Thomas Johnson

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