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 Twitterがソーシャルタレント企業を買収

2015年2月11日、Twitterはニューヨークの小規模新興企業Nicheを買収すると発表しました。Nicheが手掛けている事業は主に、TwitterやTwitterが傘下に収める動画サービス、Vineなどで有名になっているソーシャルタレントのマネージメントです。

以下、CnetJapanより引用いたします。

“Twitterは買収条件を開示せず、Niche買収契約を締結したことだけを明かした。TwitterはNicheについて、「成長するクリエイティブコミュニティーのためにソフトウェアとコミュニティー、および収益化サービスを提供する企業」と説明した。Re/codeは今回の買収案件に詳しい情報筋の話として、買収金額は約3000万ドルだと報じた。

ソーシャルメディアから独自の有名人が生まれていることに、広告主もTwitterも注目するようになった。6秒の動画投稿機能を提供する同社の「Vine」サービスも独自のスターを生み出してきた。

Nicheの買収は、ソーシャルメディアのインフルエンサーと広告主の提携を支援して利益を生むだけでなく、Twitterに新しい収入源ももたらす。それは、Twitterの長期的な収益力の可能性について投資家らの理解を得ようと同社が取り組む中で必要なものだ。”

Twitterはこのように自社サービスの広告媒体としての機能を強化しようと近年努めてきています。その成果がどのような形で業績に表れているのか、本稿では2月に発表された同社の第四期決算で見られる最新の数字を見て状況を概観していきます。

 

 Twitterの収入を支えるもの

まず、第四期決算の収入を円グラフにしてみます。なお、以下用いるグラフはTwitterが発表する決算情報から筆者が作成いたしました。(クリックで拡大します。)

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約90%を占めるのが広告収入となっています。Twitterの収入はこのようにずっと広告収入に依存する形が続いてきました。以下示すのは広告収入の推移と成長率です。単位は百万ドルとなっています。

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その他事業、という部分の中にはデータライセンス事業というものが含まれています。これはTwitterにとってユーザー数に依存しない貴重な収入源の一つです。しかし、その他事業収入は成長率はプラスをほぼ維持してはいるものの収入額がやはり広告収入と比べると少なく、まだまだ安定的な収入源とするには不十分なようです。

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続いてはこれら収入と大きく関係しているであろう、ユーザー数の推移について見ていきます。

 

 Monthly Active Userと合わせて収入を見てみる

Monthly Active User(MAU)は月平均のアクティブユーザー(月に1回でもアクセスしたユーザー)を意味しています。

収入のうち、特に広告収入は閲覧された回数との関係性が強いのでユーザー数は非常に重要な意味を持っています。先ほどのグラフによれば、広告収入は近年成長を続けてきています。ではユーザー数も同様に成長してきているのでしょうか。

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しかし、実際にはTwitterのMAUは近年伸び悩んでいます。地域別に見ていくと、特に北米地域のユーザーが伸び悩んでいるようです。

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このように、MAUがそれほど伸びていないにもかかわらず広告収入・その他事業収入は近年成長を続けてきています。次に示すグラフは、この3項目の成長率を同一のグラフ上で表したものです。

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広告収入、その他事業収入が上下に激しく動きつつもほぼプラスを維持していますが、対してMAUは横ばいとなっています。

つまり、Twitterの収入はMAU増加で支えられているのではなく、各事業(広告商品・データライセンス)の価値自体が上昇している、と言えるでしょう。※

 

 買収先から見る広告事業への注力

ここまでは決算の数字の推移を追ってきました。ここからは、Twitterの直近の期間(2013年8月~2015年2月)における買収先を整理して、今後の方向性を探ってみたいと思います。以下の図は筆者が作成いたしました。

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買収企業の殆どが広告事業に関連したものとなりました。

中でもソーシャルデータ分析企業が多いのが目立っています。ソーシャルデータ、つまりツイートデータの分析・精査を行うことで広告ターゲットの特定や今の流行が何なのかについてのデータを明らかにし、Twitterの広告媒体としての価値を高めようとする狙いがあると考えられます。

テレビとの連携も今後のTwitterにとって重要な意味を持っています。先ほどのソーシャルデータ分析企業の内、3社がテレビとTwitterの連動したデータを収集して解析を行う企業でした。

テレビと関連した話題としては、日本のTwitter Advertise Blogによれば、2月4日にテレビ広告との連携を行うプロモーション商品の発表が行われています。以下、その公式ブログから引用した文章となります。

“昨年末の脳科学調査では、テレビとソーシャル上でのメッセージを統一することにより、テレビ広告の効果をさらに高めることが期待できる、ということが明らかになりました。テレビ広告の出稿期間に合わせて「テレビターゲティング」を活用することで、タイミング良く、より記憶に残るメッセージを訴求することが可能になります。また、テレビ広告を出稿していなくても、番組内容や特性に合わせて、訴求メッセージを工夫することも成功への近道となります。

TV x Twitterの親和性が生み出す効果を、多くの広告主のみなさまにご活用いただき、キャンペーンの成功に貢献できればと思います。今後もさらに展開を進めてまいります。”

ソーシャルデータに関連しない所でも広告媒体としてのポジションを高める施策を取っています。

冒頭でも紹介した2015年2月に行なわれたソーシャルタレント企業Nicheの買収もこの一環で、Twitterの広告としての価値を更に高めていくために、ネット上で大きな影響力を持つ人々、インフルエンサーをマネージメントしているNicheを買収することは、Twitterにとって重要な施策だったと考えられます。

またMopubというモバイル広告を扱う企業の買収(2013年9月)はTwitterにとって過去最大の買収額(約3億ドル)となりました。TwitterはMoPubのリアルタイム入札機能を広告プラットフォームに組み込むことで広告主の利便性を高めるほか、モバイルアプリのインストール広告も開発し、さらなる収益化を目指しているようです。

namomedia(2013年6月買収、買収額は不明)が扱うのは、ネイティブ広告の技術です。既にTwitterはプロモーションツイート(広告主が費用を払うことで優先的にタイムラインに表示されるツイートを表示させることが出来る)という広告商品でネイティブ広告の事業化を行っています。

買収先にはモバイル事業の強化を行うためだと思われるものもいくつか含まれています。特にSnappyTV(2014年6月買収)の買収は、同社の動画編集機能をTwitterに取り込み、動画投稿のツイートをより容易にするための施策ではないかと考えられます。

恐らくこの買収を背景として、1月のアップデートではVineを経由しない動画投稿ツイートが可能になりました。

 

 広告収入に依存しない事業の構築にはまだ時間がかかるか

ここまで見てきた買収先以外にも、Twitterがカード決済システムを扱う企業であるCardSpringを買収したことは大きな意味を持っていると考えられます。

2014年7月に買収して間もなく、9月にはアメリカの一部ユーザーに対してTwitter上での商品購入・決済を可能とする”Buyボタン”のテストを行うことを発表しました。(参考: Tech Crunch Twitter、「Buy」ボタンを実装していよいよコマース分野に本格参入)

将来的にはTwitter上で行われるコミュニケーション、広告を起点として商品決済を完結出来る様にし、その手数料収入を収入の基盤にしようとしているという狙いが読み取れます。

それ以外にも、通常では得られない高精細のツイートデータ販売・提供を行うデータライセンス事業を収入の基盤としていくことも方向性の中にはもちろん含まれていると思われます。(参考: NTT Twitterデータ提供サービス)

しかし、現状ではまだまだ広告収入に頼らざるを得ず、広告媒体としての価値を高めることが目下の最重要課題であるようです。

いずれ一部門の収益のみに頼っているリスクの高いビジネスモデルを変化させなければならないときがくるはずです。その時、Twitterがどのような方向に舵を切っていくことになるのか。注目が集まります。

Photo by Pixabay [参考文献•注釈]

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