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Credoでは3月25日に開催されるイベント「ウェブ生まれの編集者が本屋で語る、これからの編集•メディア論」に合わせて、当日取り上げる本の書評記事を公開していきます。今回は内沼晋太郎著『本の逆襲』についてです。

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「本とは何だろうか」

アメリカでAmazon Kindleがサービスを開始してから約7年経ち、「電子書籍」という言葉が一般化すると同時に、「書店や紙の本はなくなってしまうのではないか」という不安感情も生じてきました。

僕たちは何を求めて本を読むのか。そもそも本とは何だろうか。そんな思索の手助けしてくれるのが、この「本の逆襲」です。

本の作者である内沼晋太郎さんは下北沢にあるビールが飲めて、毎日イベントを開催する本屋「B&B」の開業者であり、「ブックコーディネーター」という肩書きを持っています。その肩書きについて本人は、本と人との出会いを作るために、その本と人の間にあるものをコーディネートする仕事だと述べています。

 

 「本とはなんだろうか?」

この本で扱っている内容は、タイトル通り「本」です。しかしながら、自分は読む以前、この「本」とは「紙の本」を指していると思いました。しかし、内沼さんが意味する本は「紙」や「電子書籍」、場合によって「カレー」まで含まれています。

彼は、「電子書籍」という言葉が一般人に浸透していくようになって、「本の定義」が難しくなっていると述べます。

本はもはや定義できないし、定義する必要がない。本はすべてのコンテンツとコミュニケーションを飲み込んで、領域を横断して拡張していく。(中略)本の「何を」守りたいのか、「どこが」なくなってほしくないのかについては、自分なりに考えながら、自分の領域にとらわれずに臨機応変にやっていく。それが本の仕事だと考えると、まさにこれから楽しくなるところだという気がしてきませんか。”(Kindle 506&515)

「電子書籍」の登場は「紙の本の終焉」を意味するものではないのです。それが意味することは、「終焉」ではなく、「逆襲」なのです。逆襲、それは可能性を持った明るい未来の物語なのです。

 

10の視点で本を考える

しかしながら、「可能性を秘めている」とは言うものの、出版業界(紙)とインターネット業界(電子)における本のあり方、本をめぐる状況は未だに大きく揺れ動いているのが現実です。

このような現状の中、内沼さんは、様々な場面で本と向き合う機会を得て、今後の本に考えるための10つの視点で整理しました。

それが以下のものです。

  1. 本の定義を拡張して考える
  2. 読者の都合を優先して考える
  3. 本のハードウェアとソフトウェアとにわけて考える
  4. 本の最適なインターフェイスを考える
  5. 本の単位について考える
  6. 本とインターネットの接続について考える
  7. 本と国境について考える
  8. プロダクトとしての本とデータとしての本を分けて考える
  9. 本のある空間について考える
  10. 本の公共性について考える

この10個を紹介するとなるとキリがないので、筆者が気になった項目をピックアップします。それが2つ目の「読者の都合を優先して考える」です。このタイトルだけ「本」というキーワードがでてきません。

この章では「読者の都合」と「出版業界の都合」を比較しながら、後者が本の可能性を狭めているという主張がされています。

例えば、「出版業界の都合」は「持っている権利を守りたい」「出版業界のビジネスモデルを壊したくない」といったものがあります。

その一方で「読者の都合」とは「電子テキストをコピペしたい」「蔵書が増えすぎたので自炊したい」などというものです。

電子テキストのコピー&ペーストを例に考えると、出版業界と読者の言い分は以下のようになります。

“出版社が恐れているのは、ネット上に全文ペーストされたり、海賊版が流通したりすることなのでしょう。(中略)『読者の都合』を優先し、ブログにもTwitterにも自由にコピペでき、そこから話題が広がり、議論が発展していくことを志向するようなサービスを提供するほうが、本の楽しみ方も広がり、最終的にはその本の売上につながる。そういう考え方のほうが、インターネットの常識から言えば自然です。”(Kindle 852 & 861)

電子テキストのコピー&ペーストが完全にできなくても、わざわざ本の一説をパソコンに打ち込んで、ブログを書く人がいたり、本の一説をツイートする人もいます。要するに、打ち込む手間が省け、このようなことが気軽に、簡単にできるようになったら、もっと本と人の間が縮まるということです。しかし、これに対し、出版業界が良い顔をしないのも現状です。

このような埒が明かない状況の中にいる本たち。

「本とは誰のための本なのか」「本とは何のためのものであるのか」を考えなくていけません。

 

本の未来は明るい

筆者も電子書籍と紙の本を使い分けて利用しています。基本的には大きさで分けていて、教科書や専門書などは電子書籍で購入するようにしています。理由は単純にその手の本が重いからです。使用する前は毛嫌いしていましたが、実際に利用してみると、不満に思うことはありませんでした。

「本=紙」という枠組みに囚われていた自分が、その枠組みから抜け出すと、それはただの思い込みだったということに気がつきました。紙の本にも電子書籍にも各々の利点があります。そしてそれは、その人の使い方によるのです。これは内沼さんの主張の一つでもあります。

きっと、「電子書籍」と「紙の本」どちらが良いのか答えを出す必要なんてないのでしょう。先ほどのコピー&ペーストの項でも述べましたが、必要なことはあなたにとって「本」とは何のためにあるのかということなのです。本の未来は明るい。そして、本と読者の未来も。出版社の都合で、この明るい未来を邪魔しないでほしい。

そんなメッセージが伝わってくる一冊です。

Photo by Maria Elena

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