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環境省は13日、東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管するための「中間貯蔵施設」建設予定地(大熊町)への廃棄物搬入を開始しました。大熊町に次いで受入を表明した双葉町には、今月25日から搬入が開始する予定です。

両町への搬入は当初、今月1日に始まる見込みでしたが、地元からの要請等から大熊町では13日に、双葉町では25日になったようです。

今回の搬入開始は、行政側から見れば環境・復興行政にとっての「大きな一歩」かもしれませんが、受入自治体側から見れば、決して楽観視できるものではありません。実際、各社報道により、この受入には依然として様々な問題があることが分かってきました。

 

 施設自体は未完成

今回の搬入開始についての各社報道を注意深く見ていくと、不思議な文言に気付きます。それは搬入先についてであり、各社により「受入予定地への搬入」や「建設予定地への搬入」などと記されています。これはどういうことなのでしょうか。

結論から言えば、大熊町や双葉町には未だ中間貯蔵施設なるものは存在しません。建設がこれからなので「受入予定地」や「建設予定地」と表現されているのです。

 

 建設予定の施設は複数

一言で「中間貯蔵施設」と言っても、そこには複数の施設が含まれています。環境省のHP(中間貯蔵施設情報サイト「中間貯蔵施設の概要」)によると、建設予定の施設には、まず除染仮置場などから搬入された除染廃棄物を受け入れる「受入施設」と、運び込まれた廃棄物を選別する「分別施設」があります(※1)。

受入後ないし選別後の廃棄物は、その種類により「土壌貯蔵施設」「減容化(焼却)施設」「廃棄物貯蔵施設」のいずれかへ運び込まれます。「土壌貯蔵施設」は主に汚染された土を貯蔵する施設であり、「減容化(焼却)施設」は草木などの可燃物を焼却することで容量を減らす施設です。「廃棄物貯蔵施設」は、放射性セシウム濃度が10万ベクレル/キロを超える焼却灰など貯蔵する施設です。

中間貯蔵施設内には、これらの施設の他、水処理施設や管理棟なども建設される予定となっています。

 

 今回搬入された廃棄物の搬入先施設と今後の廃棄物量は?

今回搬入された廃棄物は何処に運び込まれたのでしょうか。答えは「受入施設」や「分別施設」ではありません。上述した他の施設でもありません。今回の搬入先は、中間貯蔵施設の建設が完了する前のいわゆる「保管場」と呼ばれるところです。

中間貯蔵施設へは今後、約2,200万立方メートル(東京ドーム15杯分から18杯分と言われる)の土壌等の廃棄物が搬入される予定ですが、現在の「保管場」はこの1000分の1程の2万立方メートル分しか確保されていないのが現状です。

 

 難航が予想される各中間貯蔵施設の建設

各中間貯蔵施設は今後、大熊町と双葉町を跨ぐ約16km2の広さの土地に建設予定ですが、各社報道によれば、その土地の地権者は2,300名に上るものと指摘されています。報道によると、環境省は今月初め、大熊町の一部の地権者と初めての売買契約を完了したところでした。

地権者の中には、すでに死亡している者も多く、権利関係が不明な土地も少なくありません。土地や家屋の補償価格算定にも時間がかかります。環境省は、今後どのように必要用地を確保し、施設の建設を行っていくのでしょうか。

 

 土地利用料(地代)については「無償」

地権者との交渉を大きく左右する土地利用料について、福島の地元紙『福島民友』は15日、それが「無償」となる可能性をスクープしました(※2)。同社の記事によると、土地の利用料(地代)について、国は地権者に対し「無償」と提示していたようです。

地代とは、ある土地を一定期間使用するときに、利用者が土地の保有者に支払う使用料のことです。土地の保有者である地権者への補償、いわゆる借り上げ料、とは異なるものです。

『福島民報』のスクープは、大熊・双葉両町の地権者でつくる「30年中間貯蔵施設地権者会(以後、地権者会)」への取材によって明らかとなりました。地権者会によると、国はこれまで地代についての説明を行っていませんでした。

ところが、地権者との具体的な交渉段階において、契約書に初めて「土地の地代は無償とする」と盛り込まれていたとのことです。地権者会はこれに対し「地代を請求できる権利もあるはず。国の情報提供のやり方は問題だ」と批判しているようです。

 

 運搬のための道路状況は?

施設に搬入される予定の廃棄物(総量で約2,200万立方メートル)は、福島県内の様々な場所に散在しているのが現状です。県内には、廃棄物の仮置場が約1,000か所あり、自宅の庭先で保管しているケースは約7万5千件にのぼります。

環境省は、今後、これらの廃棄物をどのように中間貯蔵施設へと運ぶのでしょうか。その具体的計画は分かりませんが、福島県内ではすでに運搬のための道路利用状況において幾つかの問題等が指摘されています。

まず、福島県内の道路のほとんどは2車線(片側1車線)です。急カーブや雪によるスリップがもととなる交通事故もあります。例えば、福島市の仮置場から中間貯蔵施設に搬入するためには、川俣町などを通る国道114号を使う必要がありますが、同国道では2014年だけで12件の事故が起きています。

福島県内の各主要道路の交通量は、震災前に比べ大凡2倍から3倍近く増えています。今後、搬入が本格化すれば、例えば常磐道を通る大型車は1日当たり約1,500台に、東北自動車道では500台から1,000台になると見積もる調査もあります。

ところが、中間貯蔵施設の建設予定である大熊町、双葉町にはインターチェンジ(IC)がありません。したがって、これらの大型車は富岡や浪江周辺のICで一度降り、一般道を使う必要があります。県内の主要一般道では更なる渋滞が予想されることでしょう。

大型車による騒音やスモッグ等による近隣住民への影響も考えられますが、万が一の事故が起こった場合への対応も不可欠です。このための体制作りや準備等は果たして出来ているのでしょうか。

 

 メディア等によるモニタリングの重要性

昨年から本年2月までの中間貯蔵施設に関する各社報道を振り返ってみれば、大きな焦点の一つは「30年以内の県外最終処分」であったように思われます。これはつまり、大熊・双葉両町に計画されている中間貯蔵施設が、あくまでも「中間」であり「最終」ではないことを前提としたもので、今後、国が県外における最終処分地を如何に見つけ出すか、という問題でした。

しかし、この数日間で明らかになったことを総じて言えば、問題は30年先ではなく、現在進行形で起きていると言えそうです。換言すれば「搬入開始」は問題の解決策ではなく、新たな問題を作り出している可能性さえあるということです。受入体制や今後の搬入状況に対するメディア等のモニタリング強化が求められるところです。

[参考文献] Photo by Jason Hickey

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