【読了時間:約 4分

後天性免疫不全症候群(AIDS)の新たな治療法の開発につながる貴重な新発見がありました。

2月18日に公開されたオンラインマガジン『nature.com』によると、 アメリカの研究チームが、将来的にヒト免疫不全ウイルス(HIV)の予防ワクチンとなる可能性がある新しいタイプの抑制因子を開発したとのことです。

以下の文章は、今回の研究論文の執筆を担当したスクリップス研究所のマイケル=ファーザン教授が「Wall Street Journal」の動画内で語った内容をまとめたものです 。

 

ファーザン教授:私たちの研究チームは、HIVが細胞内に侵入する際に必要な2種類のタンパク質からヒントを得て、HIVの活動を抑制する新種のタンパク(eCD4-Ig)を開発しました。

まず、HIVが細胞内に侵入するのに必要な2つのタンパク質を取り出し、それらを合成して、eCD4-Igを作成しました。eCD4-Igは、既存のどの抗体よりも効果的にHIVの活動を抑制しました。

今回の実験で、私たちのチームは、この合成タンパク質(eCD4-Ig)を作る遺伝子をあるベクター(遺伝子の運び屋のようなもの)に導入しました。そのベクターを筋肉に接種した赤毛猿は、eCD4-Igを自ら生産できるようになり、多量のHIVに晒してもAIDSを発症しませんでした。

 

現段階ではっきりと示すことは難しいのですが、この発見を受けて、私たちがこれから取るべきステップは次のようなものだと思います。

一つ目は、eCD4-Ig遺伝子をベクターを介して人体に投与し、有効なタンパク質が生産されるかを確認することです。

数ヶ月に1回の注射が必要なことが障害になります。

 

二つ目は、私たちのチームが赤毛猿を使って成功したような遺伝子療法を、既にHIVに感染している患者に行うということです。理論的には、これによって患者が服用する薬の数を理想としてはゼロまで減らせるはずなのです。

そして三つ目は、この合成タンパク質(eCD4-Ig)を用いた遺伝子療法を、HIVに感染する可能性が高いと見られる個人に施すことです。

どのステップも、随時安全性を確認しながら、進めて行かなければなりません。

 

私たちは、 AIDSの完全な予防法/治療法の発見へと向かう険しい道のりの中で、到達できる限りの地点まで来ていますが、この先にはまだまだ障害がいくつもあります。

私たちは、非常に効果的なHIV抑制因子の発見を誇らしく思っています。

しかし、この発見が人類にとって誇らしいものになるかは、今後行われる人体への試験的な投与の結果にかかっています。

 

<編集部コメント>

HIVウイルスはその特殊性から、現在広く用いられている方法でのワクチン開発は極めて困難でした。これに対して、抗HIV抗体を人工的に作成し、それを投与するという戦略が試され、この方法で、bNAbsという抗体が開発されましたが、完全にはHIVを抑えきれないという限界点が残っていました。

今回は、赤毛猿での実験レベルではあるものの、HIVが細胞に感染する際に必須となる2つのタンパク質からeCD4-Igを作成し、それらを体内で作れるようにし、体内で作られたeCD4-Igが先回りしてHIVに結合し、ウイルスを不活性化させました。

これは、ウイルスが細胞侵入の鍵として持っていた部分に結合して、その働きを無くしてしまうという仕組みです。動物実験レベルではあるものの、100%の効果がみられたことから今後に期待が集まります。

Translated by Kazuhisa Orikawa, Cited by Molecule Shows Ability to Block AIDS Virus, Photo by Jon Rawlinson

Credoをフォローする