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 アメリカの投資家に対する提言

2015年2月26日にTIMEが公開した動画では、好調を取り戻しつつあるアメリカの株式市場に対する投資を行う人々に対する提言がなされています。

“昨今の国際経済ニュースは気が滅入るものばかりです。中でもヨーロッパでは、ギリシャとギリシャの債権者であるユーロ圏各国との交渉が危うく決裂しかけるなど、新たな経済危機の予兆が見られています。
このような現状に対し、「アメリカの投資家は外国株を保有するなどして“分散投資”を試みるべきである」と言われているようです。”

株式に対する投資を行う際、それらを組み合わせたものをポートフォリオと呼びますが、この動画ではアメリカの投資家らは様々な種類の株式、ここでは外国株を持つことでそのリスクを低減すべきだとされています。

本稿ではこのTIMEの提言の意味について、金融の理論に基づいて実際の数字で確認していきたいと思います。

 

 分散投資をすることで、どれだけリスクは減らせるのか

動画の内容に言及する前に、まず分散投資をすることにどれだけの効果があるのかを実際の株価で試してみます。

投資を行う際に最も重要な指標は、リターンとリスクです。リターンとは、ある期間における株式への投資を行った場合に得られる収益率の平均のことを指しています。リスクは、その期間における収益率の標準偏差、いわゆる揺らぎの範囲を示しています。

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(参考図。筆者がランダムウォーク乱数を用いて作成。)

今回用いるのは、2015年2月23日から3月20日までの期間における株価から得られる値です。アメリカの株式、Apple,Google,Amazon,Twitter、そして日本の株式としてソフトバンク、トヨタ、KDDI、日経平均株価、及びこれら8つの株式による分散投資のリスクとリターンを比較していきます。

収益率は(当日の終値-前日の終値)/前日の終値で計算し、ポートフォリオの比率は全て等しい配分としました。クリックで拡大いたします。

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分散投資をしたポートフォリオは単体の株式に比べると比較的リスクが減っていることがはっきりと見て取れます。リスクを抑えられた分、リターンもかなり小さくなってしまいましたが、ハイリスクでなくなればそれだけ見返りが小さくなってしまうことは避けられません。

特にアメリカ株・日本株を合わせた分散投資のパフォーマンスは日本株のみ、またアメリカ株のみで行った分散投資よりもリスクが低くなっています。

このように、分散投資を行うことには一定の効果が見込めるようです。

 

 アメリカの投資家にとって外国株を含んだポートフォリオを作る意味

動画の内容に戻りましょう。アメリカの幾つかの調査会社によれば、外国株を含んだポートフォリオは歴史的に見てもパフォーマンスが高いようです。

“しかしながら、欧州の経済とは対象的にアメリカの経済は好調を取り戻してきています。このような現状において、アメリカの投資家が外国株を保有することに一体どんなメリットがあるのでしょう?

米国の投資信託会社「バンガード(Vanguard)」の創始者であるジャック=ボーグル氏は、「長い目で見ればアメリカの株式も国外の株式と同じような価値の変動を示すはずである」と述べています。実際に、米国の投資顧問会社「ガースタイン・フィッシャー(Gerstein Fisher)」 の設立者であるグレッグ=フィッシャー氏の試算によると、 アメリカ株のみで構成された“ポートフォリオ”は過去45年で10.5%の利益を生んでおり、外国株を含んだ“ポートフォリオ”は11%の利益を生んでいるとのことです。
上の数字だけでは両者に違いはあまり見られませんが、これまで比較的増減が安定していたのは“分散投資のポートフォリオ”であったようです。つまり、“分散投資”を行うことによって、たとえ景気が下向きの時でも、「すぐに株を売らなければ!」と慌てることがなくなるのです。

また“分散投資”は、何の前触れもなく訪れる国家的な大不況に対する「備え」としても有効であるようです。米国の投資顧問会社「AQR キャピタル・マネジメント」の試算によると、日本の株式相場が約40%も下がっていた時期も、外国株を含んだ“ポートフォリオ”の価値は130%まで増加していたようです。”

 

 リーマンショック前と似た傾向を示す株価?

また、次のような言及もなされています。

“さらに、現在のアメリカ株の好調にはやや不穏な兆候が見られているようです。ノーベル賞を受賞した経済学者のロバート=シラー氏のTwitterでの発言によると、 現在のアメリカの高い株価は、過去の企業利益と比較すると、リーマンショック前の2007年時と非常に良く似た状態に戻って来ているとのことです。”

これについても実際に確認してみます。先ほども用いたApple、Amazon、それに加えてGoldman Sachsの株価で、2007年と2014年それぞれの一年間の株価推移を見ていきましょう。

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これを見る限りでは前述のような指摘を当てはめるのは難しいようです。ただ、リーマンショックで大きな影響を受けた金融系企業であるGoldman Sachsについてはある程度似通った推移を見せているように思われます。

他の金融系についても見て確認してみます。次に示すグラフはバンクオブアメリカ、そしてモルガンスタンレーの株価推移比較です。

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どうやら、今回見た限りにおいてでありますが、2007年時と非常に良く似た状況というのは確認することが出来ませんでした。しかし、より広い範囲で見た場合には類似点が見つかる可能性は否定できません。

株価が好調であればあるほど、より慎重に行動すべきであり、何が起こるか分からない投資市場のリスクを再確認したうえで改めて基本となる分散投資を心掛けるよう、TIMEは呼びかけているものだと思われます。

[注釈・参考文献]

Photo by Flickr Translated by Orikawa Kazuhisa “Are International Stocks Still Worth the Risk?” (https://www.youtube.com/watch?v=E5fX8lUtdt4)

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