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227放送された、テレビ朝日系ニュース番組「報道ステーション」で、コメンテーターの元経済産業省官僚の古賀茂明氏が自身の番組出演について、古舘伊知郎キャスターと激しく言い争う場面があり大きな話題となっています。

 

 騒動の経緯

生放送で中東情勢について意見を求められた古賀氏は突然話題を変え、「テレビ朝日の早河会長とか、あるいは古舘プロダクションの佐藤会長のご意向で、私はこれが最後(の出演)ということなんです」「菅官房長官をはじめですね、官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきましたけれども、それを上回る皆さんの応援のおかげでですね、非常に楽しくやらせていただいたということで、心からお礼を申し上げたいなというふうに思います」と語りました。

古賀氏の発言に対して古舘キャスターは、「古賀さん、待って下さい。今のお話は、私としては承服できません。(中略)番組が4月から様相が変わっていく中でも、古賀さんに機会があれば、企画が合うなら出ていただきたい」「これですべて、何かテレビ側から降ろされるっていうことは、ちょっと古賀さんそれは違うと思いますよ」と反論しました。

古賀氏はなおも、古舘キャスターが楽屋で同氏に対し「自分は何もできなかった、本当に申し訳ない」と述べたことを暴露し、それについて釈明した古舘キャスターに対し、「その会話を録音しているので、全部表に出してもいい」などと述べ、生放送のニュース番組でのキャスターとコメンテーターのやり取りとしては、前代未聞の展開となりました。

その後も古賀氏は、「I am not ABE」と政権批判とも取れる自作の紙を掲げるなど、異例の行動を取りました。

放送後、古賀氏の発言については賛否両論の声が上がりましたが、いくつかのポイントから、同氏の発言を検証してみましょう。

 

 放送の公共性

放送事業などで使われる電波は、限りある国民の共有財産ですので、電波利用者はその利用のための料金を払っています。

ただ、携帯電話会社などが支払う利用料に比べ、放送局の利用料はその10分の1程度だとされています。その理由はテレビの公共性が考慮されているからです。また、その公共性ゆえ、テレビなどの電波媒体は放送法によって規制されています。

賀氏による発言の正否に関わらず、コメンテーターとしての役割を放棄し自身に関わる主張を展開したことは、テレビの公共性という観点からみれば、適切さを欠いていたのではないかと考えられます。

民主党の元衆院議員藤田憲彦氏も自身のブログで、「(古賀氏の)言わんとしていることは政権がメディアに圧力をかけ、出演の人選に対しても介入しているということを主張したかったのでしょう。しかし、それを意趣返しとばかりに公共の電波で行うということはあまりにも短絡的であると言わざるを得ません」と述べ、古賀氏の意図に理解を示しつつも、公共電波を使って個人的な主張をしたことについては批判しています。

 

 官邸からのバッシングに関する真実性

次に古賀氏が主張した、官邸からのバッシングに関する真実性の問題です。同氏が主張するような圧力があったのであれば、権力による報道の自由への介入とみなされ、徹底的に追及されるべきでしょうが、実際に放送現場を経験している識者からは疑問の声が上がっています。

元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏は30日付現代ビジネスで、筆者は、これまで事実関係を客観的に明らかにできる場合にそれを言うというスタンスだ。…逆にいえば、そうでなければ意見表明することはまずない。そうした観点から見れば、官邸の圧力を客観的に示せないと、ちょっといえない

古賀さんも知っていると思うが、官邸であれば、尻尾をつかまれるほどバカなマネはしない。官邸の職員の誰かがテレビ朝日に報道内容を確認していても、官房長官の指示はありえないし、職員も報道ステーションだけを狙ってやらない。オフレコ記者懇のメモだって、客観的とはいいがたい」とし、官房長官によるバッシングという古賀氏の主張に疑問を投げかけています。

NHKディレクターで評論家の池田信夫氏も自身のブログ、「古賀氏の言う『菅官房長官から局に圧力がかかった』ということもありえない。私はNHKの『日曜討論』というもっとも政治的圧力の強い番組を担当していたが、政治家が出演者をおろせなどということは絶対ない(あったら大事件になる)」

報ステのような番組に政治家から圧力がかかることはありえない。自民党担当の記者が夜回りしたとき『古賀さんは過激だねぐらいのイヤミをいうことはあるだろうが、彼らも露骨な干渉はしない」と、古賀氏の主張に対して否定的です。

 

今回のような突発的な発言の中では、古賀氏も十分に自身の主張を行う時間はありませんでした。

ですから、古賀氏の発言が客観的な事実に基づくものである可能性もあります。ただ、生放送中に、特定個人の名前を挙げて真実性が明確でない批判を述べることは、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることにある」とする放送法(1)に照らし合わせてみると、疑問が残ると考えられます。

 

 騒動のその後

今回の件について、テレビ朝日広報部は、古賀氏は番組内容に応じて呼ぶゲストの一人であり、降板ではないと説明し、「古賀さんの個人的意見や、一部事実に基づかないコメントがなされたことについて、承服できない思いです。番組が一部混乱したことを、視聴者の皆様におわび致します」と述べています。

また、菅義偉官房長官は30日午前の記者会見で、古賀氏の発言について「全くの事実無根だ。言論の自由、表現の自由は極めて大事だが、公共の電波を使った報道として極めて不適切だ」「(報道した)テレビ局がどのような対応をするか、しばらく見守っていきたい」と述べました。

前出の高橋氏は、「おそらく古賀さんは何かをつかんでいるかも知れない。…(官邸が圧力をかけたという)手口を具体的に国民に示せるなら、公益があるといってもいいと思う。ただ、筆者なら、それだけの公益があれば、契約で制約のあるテレビではなく、他のメディアやネット上で自由にやっただろう。今はそれが容易にできるからだ」とも述べています。

高橋氏のこのコメントは、今後の古賀氏の活動にとって有益になり得るかもしれません。というのも、今回は方法は上記の2点から見て適切でなかったけれど、言論の自由への脅威があるのであれば、次は明確な根拠を示し、古賀氏が国民に説明することこそ、大きな公益であると考えられるからです。今後、同氏の動向に注目が集まります。

Photo by Dick Thomas Johnson [参考文献

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