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以下の文章は、アメリカのニュース解説メディア『Vox』が昨年公開した“資産所有の格差”という問題を解説している動画の内容をまとめたものです。

近年、“格差”という問題に対し多くの人々から熱い関心が寄せられていますが、この格差問題について議論が交わされる際に、その議論の対象となっているのは、たいていの場合は“所得の格差”です。

 

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photo by How wealth inequality is dangerous for America

確かに、アメリカ国民の“所得格差”は、世界恐慌(1929年) 以来の数値を示しています。実際に、アメリカの 所得上位1%の富裕層が得ている収入は、国民所得全体の22.5%と試算されています。

しかしながら、“所得の格差” 以上に深刻なのが “資産所有の格差” という問題です。

 

 資産所有格差の問題点

資産額上位1%の富裕層が所有する資産の合計額は、資産額下位90%を構成する国民が所有する資産を合わせたものよりも多く、アメリカの国富全体の40%に相当すると試算されています。

富裕層が所有する資産は、親から子へ、子からまたその子へと次々に相続されていきます。この“相続” こそが、“資産所有の格差” を “所得の格差” 以上に深刻な格差問題として位置づける大きな要因となっているのです 。

 

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photo by How wealth inequality is dangerous for America

 

例えば、売上額世界一のスーパーマーケットチェーン『Walmart』の創業者であるサム=ウォルトン氏の6人の子どもたちは、『Walmart』を創立したわけでも『Walmart』に匹敵するような大企業を起こしたわけでもありませんが、1486億ドルというものすごい額の資産を保持しています。

(ちなみに、この1486億ドルという金額は、資産額下位40%を構成する 1億2556万人の米国人が所有する資産の合計金額を上回っています。)

“所得”は、あくまでも個人の功績に対する報酬です。

一方、“資産”は、その人が “ただ単に裕福な家庭に生まれたこと” に対する報酬です。

フランスの経済学者のトマ=ピケティ氏の著書『新・資本論』の中で、特に問題視されていたのは、上記のような点です。

現代の(資本主義)経済においては、資本収益率(資本から得られる収入の増加率)が経済成長率(労働から得られる収入の増加率)を上回っており、『富めるもの(=多くの資産を所有しているもの)はますます富む構造』が出来上がってしまった、というのがピケティ氏の主張の骨子です。

 

 「権力≒富」の構造

また、政談演説(Political Speech)がお金で買えてしまうということも、経済格差を固定化する一つの大きな要因となってしまいます。その状況にも関わらず、米国連邦最高裁判所は現在、政談演説をお金で買う際の上限を徐々に廃止していく動きを見せています。

もしこのまま政談演説(Political Speech)をお金で買う際の上限が廃止されてしまったら、「富めるものがお金で権力を買い、その権力が更なる富を与え、その富が更に強大な権力をもたらす」というサイクルが際限なく続き、いつの日かほんの一握りの人々が、他のあらゆるものを動かす権力と富を保有する日が来てしまうかもしれません。

 

<編集部コメント(深澤)>

このVoxの動画内で言及されていたのはアメリカでの資産状況における格差でした。では、日本ではどうでしょうか。それを示す推計として2014年11月に野村総合研究所が発表した推計を参照してみたいと思います。

ただしこの推計には不動産資産が含まれていない推計であることにご留意下さい。

世帯の分布は

 超富裕層:5億円以上、富裕層:1億円~5億円、準富裕層:5000万円~1億円、アッパーマス層:3000万円~5000万円、マス層:3000万円未満

となっています。

まず世帯の分布状況を見てみます。

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マス層の数が圧倒的に多く、超富裕層、富裕層が相対的に低い状況となっています。

次に層別で世帯合計の金融資産分布を見てみます。

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金融資産での分布でも、マス層の数が非常に多いことを反映してか超富裕層・富裕層の分布率がマス層よりもかなり低くなっています。

勿論、不動産資産を含めれば恐らく超富裕層・富裕層が全体のより多くを占めることになると予想されますが、一つの参考データとして金融資産においては日本は低格差社会であるといえるでしょう。

Translated by Kazuhisa Orikawa ,Cited and photo by Tax Credits [参考文献]*野村総合研究所,2014年,(2015年4月8日,https://www.nri.com/~/media/PDF/jp/news/2014/141118.pdf)

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