【読了時間:約 7分

現在、1週間に100万人を越える人々が“都市”へと流入しており、2050年には世界の人口の約3分の2が“都市”の住人になるだろうと予測されています。

ところで、“都市”とは一体何なのでしょう?

スクリーンショット 2015-04-15 00.12.53

photo by What is a City?

「複雑系(complex system )研究のメッカ」として知られる米サンタフェ研究所では、同研究所所属の2名の理論物理学者(ジェフリー=ウエスト教授とルイス=ビトンクート教授)によって“都市”と呼ばれる“複雑系(complex system)”が持つメカニズムについての研究が行われています。

 

 複雑系とは

Wikipediaによると、複雑系(complex system)は、「相互に関連する複数の要因が合わさって全体としてなんらかの性質(あるいはそういった性質から導かれる振る舞い)を見せる系であって、しかしその全体としての挙動は個々の要因や部分からは明らかでないようなもの」と定義されています。

例えば、「人間社会」は“複雑系”の一つだと考えられています。

「社会」とは、複数の個人が継続的に意思疎通や相互行為を行いながらある程度の秩序化を行い、組織化してできた「集団(全体)」のことですが、ある『社会』の“動き/傾向、性質”をその社会の構成要素である一個人の“動き/傾向、性質”から帰納的に推定することはできません。

例えば、日本人Aさんは日本社会を構成している大切な一要素ですが、“近年の日本社会の傾向”と“近年のAさんの傾向”との相関関係を論理的に説明することは非常に困難でしょう。

つまり、“複雑系”とは、ある構成要素が相互に関連し合いながら(ある程度)秩序化され、構成された体系であるにも関わらず、部分(体系の構成要素各々)の動きと全体(体系そのもの)の動きが必ずしも相関しないという興味深い特徴を持ったシステムのことです。

それでは、“複雑系”の一つである“都市”はどのようなものなのでしょうか。

 

 「都市」は恒星?有機体?

以下の文章は、米メディア『The Atlantic』が公開した動画「What is a City?」の中で、米サンタフェ研究所のジェフリー=ウエスト教授とルイス=ビトンクート教授が“都市とは何か?”という問題について語った内容をまとめたものです。

 

ビトンクート教授:

“都市”は、有機体(有機的構造体)、蜜蜂の巣、アリ塚、生態系、機械、脳、情報システムなどといった様々なシステム(複雑系、非複雑系を含む)と比較され、研究されてきました。

その中で、最も“都市”と類似しているのは、“恒星(=太陽のように自ら光とエネルギーを発するガス体の天体)”ではないかと私は考えています。

“恒星”は周囲の様々な物体を引き寄せ、内部で核融合反応を発生させることによって光とエネルギーを放出しています。

“恒星”のサイズが大きければ大きいほど内部で起こる核融合反応は活発で、こういった点において“都市”と“恒星”は非常に似ていると言えるでしょう。

なぜなら、“都市”も周囲の様々な物体を引き寄せており、“都市”のサイズが大きくなればなるほど、都市の中(内部)で起こる社会的相互作用は活発になるのですから。

我々は、こういった様々なメタファーを用いて「都市とは何か?」という問題に向き合ってきましたが、未だ“都市”の本質を完璧に捉えることのできるメタファーを見つけ出せてはいません。

 

ウエスト教授:

“都市”とは、社会的及び政治的な“アトラクター(=ある規則的な運動を少しずつ規則から離れさせ、自分の側へと引き寄せる集合)”であると言えるでしょう。

“都市”は、まるで磁石のように、人々(あるいは、彼らの行動様式 )を自分の側(都市の内部)へと引き寄せていきますから。

また、“都市”を生命体であると考えることもできます。

おそらく、“都市”は最も大きな生命体でしょう。けれども、もし“都市”が一種の生命体であると仮定するのであれば、ここで一つの疑問が生じます。

「“都市”とは、“有機体(有機的構造体)”なのか?」という疑問です。

ある意味、“都市”は“有機体”であると言えるでしょう。“都市”の一部であるインフラが、一般的な“有機体”と同じように、循環系統を持ち、ある種、新陳代謝の機能を持っているからです。

さらに、驚くべきことに、「生理機能と生活史に限定して言えば、クジラはヒトを大きくしたものであり、ヒトはネズミを大きくしたものである」というような“サイズの比例関係”が、“有機体”と同様に“都市”においても見られるのです。

つまり、あらゆる“都市”に共通の特性が存在し、それらが“サイズの比例関係”を示すため「ニューヨークはロサンジェルスを大きくしたものであり、ロサンジェルスはシカゴを大きくしたものである」と言うことができるのです。

“都市”の大きさが2倍になると、その“都市”の平均賃金、特許取得数、AIDSの発生件数、犯罪の数、病院の数、また人々が歩くスピードなどといった項目はおよそ1.15倍になると算定されています。

スクリーンショット 2015-04-15 00.13.18

photo by What is a City?

このように考えると、“都市”と“有機体”は大きく変わらないものであると断言できます。

 

 都市に寿命はあるのか?

ここからは、上記の文章をもとに話を進めていこうと思います。仮に都市を有機体と仮定したとき、「都市には寿命があるのか?(都市は死ぬのか?)」という疑問にたどり着くはずです。

くじらも人もネズミも寿命はもちろんありますが、一方で都市はどうなのでしょうか?

都市に寿命はありませんが、瀕死状態になることもあると考えられます。瀕死状態というのは「過疎化」「自然災害(地震など)」「人災(戦争など)」によって引き起こされます。

しかしながら、それらの被害を被られた地域は「地域活性化」や「復興」という形で”都市”として息を吹き返すこともあります。この甦る機能こそが有機体との違いだと考えられます。

ウエスト教授はこの映像内でアメリカ軍による「広島」「長崎」への空爆についても言及していました。ウエスト教授も「空爆によって致命的なダメージを受けたのにもかかわらず、今現在、両都市は『都市』として機能している」とし、都市は復活するものだと考えています。

日本は4年前の東北大震災によって、多くの都市を失いました。たくさんの人にとっての「育った場所」「思い出の場所」などがなくなりました。しかしながら、都市は甦る機能を保持していて、いつか息を吹き返すのです。そして「復興」は壊滅的なダメージを受けた都市にとっての唯一の心肺蘇生法なのです。

Cite by What is a City?, photo by Osamu Kaneko

Credoをフォローする