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風疹という感染症をご存知でしょうか。風疹ウイルスに感染することで発症する感染症です。米国では2004年に根絶されていますが、日本では未だに20-40代を中心に流行がみられています。

風疹は子どもの病気というイメージをお持ちかもしれません。しかし日本で流行がみられているのは大人です。2013年の流行が一番記憶に新しいと思います。

風疹は、社会から根絶されるべき感染症です。風疹に免疫のない妊婦がかかることで、赤ちゃんに影響を及ぼす、「先天性風疹症候群」を減らす必要があるからです。「赤ちゃんを守るため」このことは一見、妊婦が周りにいなければ当事者になりえないと思えてしまうかもしれません。しかし、感染症の根絶には社会全体の協力が必要です。そして風疹は予防接種の徹底という方法で根絶が可能です。

「先天性風疹症候群」とは何でしょうか。また、なぜ日本では、20-40代を中心に風疹の流行がみられるのでしょうか。「生まれてくる未来の子どもを守る」風疹の予防接種が持つこの重要な意義について本記事では取り上げたいと思います。

 

 風疹とは?

発熱、発疹、首のリンパ節の腫れが主な症状で、基本的には大きな後遺症なく治ります。症状が揃わず、はっきりしないケースもあります。もちろん、大人も子どももかかる可能性があります。

春先から初夏の流行が多いですが、一年を通してみられます。インフルエンザと同じく、せきやくしゃみを介して人から人に移ります。一部に脳炎(4000人〜6000人に1人)などを併発し、入院が必要になることがあります。

 

 先天性風疹症候群とは?

風疹の免疫のない妊婦が、妊娠中に風疹にかかることで、お腹の中の赤ちゃんに障がいを残すことをいいます。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか?

もし、妊婦に免疫があれば、たとえ風疹ウイルスが体に持ち込まれても、ウイルスはすみやかに退治されます。しかし、免疫が無い状態で感染すると、ウイルスは妊婦の血液を通して体中を巡ることになります。そして妊婦の血中から胎盤を介して赤ちゃんにもウイルスが感染します。この感染の時期が、赤ちゃんの体を形成する時期に重なると、臓器形成に障がいが出るというしくみです。

風疹に免疫のない妊婦とは、予防接種を受けたことがなく、かつ風疹にかかったことがない妊婦もしくは、予防接種を受けたものの十分な免疫を獲得せず、その後風疹にかからなかった妊婦を指します。

赤ちゃんに起きる障がいとは、難聴、白内障、心臓奇形などがあります。手術で改善するものもありますが、永続的な障がいもあります。

先天性風疹症候群の発生は、世間での風疹流行と綺麗に相関します。2013年は、風疹の流行がありました。これを受け、前年、年間4件だった先天性風疹症候群の発生数は、2013年は年間32件に増加しました。風疹の流行によって、約8倍の赤ちゃんが何らかの障がいを負ったということです。(数値は国立感染症研究所ホームページ参照)

 

 なぜ、20-40代を中心に流行がみられるのか?

これは、日本のこれまでの予防接種政策の不徹底が影響しています。予防接種には、ワクチンを打った本人を感染症から守るだけではなく、集団としてその感染症の流行に強くなる「集団免疫」という意義があります。この「集団免疫」が達成されるには、その集団の中のほとんど全ての人がワクチンを打つ必要があります。一部でもワクチンを打っていない人がいると、その人々の中での流行や、色々な事情でワクチンを打つ事ができない人(免疫が極端に低い人やまだ生まれていない赤ちゃんなど)の感染を防ぎきれません。

風疹において、この「集団免疫」を達成するためには、皆が2回の予防接種を受ける必要があるといわれています。2015年現在、子どもたちは皆、1歳代と小学校入学前に1回ずつ予防接種を受けています。しかし、以前はこの2回の定期接種は行われていませんでした。その2回の定期接種を受けてこなかった人々が、そのまま風疹流行世代と重なるのです。

具体的に、注意が必要な年代を挙げます。

昭和37年(1962年)4月2日〜昭和54年(1979年)4月1日生まれの(特に)男性

→中学校で集団接種が行われましたが、女子のみに施行されました。女子も1回のみの接種なので、十分な免疫がついていない可能性があります。

昭和54年(1979年)4月2日〜平成2年(1990年)4月1日生まれの男性、女性

→個別接種に切り替わった時期なので、打っている人、打っていない人が混在しています。また、打っていたとしても1回のみなので、十分な免疫がついていない可能性があります。

この年代は、2015年現在、20〜50代前半であり正に現在の風疹流行世代と重なります。この年代が特に風疹に対する免疫を持っていない可能性が高いのです。女性のみへの接種や、個人まかせの接種方法では十分な集団免疫を獲得できないのです。

 

 対策は?

もし、先ほどの年代に当てはまり、妊娠を考えている方は、妊娠前に風疹の予防接種を打つことをお勧めします。(注意点として、妊娠中は風疹ワクチンは接種できません。また、風疹ワクチン接種後は、2か月間の避妊が必要です。)そして、女性だけでは不十分ということはこの記事をここまで読んでくださった男性にはおわかりだと思います。

大事な人ができたら、その人と生まれてくる子どもを守るために男性も予防接種を打つべきなのです。そして本当の理想論としては、結婚や妊娠の可能性がなくても上記の年代にあてはまる男女は皆、ワクチンを打つべきなのです。(抗体がある人は必要ありません。)

自治体によっては大人の風疹ワクチン接種に対する助成を行っている場合がありますので、担当部門に問い合わせてみてください。

そしてもし周囲に結婚したカップルがいたら、祝福の言葉とともに、ぜひ風疹ワクチンの紹介もしてください。お祝いの言葉と同じぐらい二人の将来を想った言葉になるはずです。

 Photo by U.S. Army Corps of Engineers Europe District [参考文献]

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