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こちらの記事は5月7日に朝日新聞メディアラボにて開催されたイベント、『Webと新聞から考える、新時代のニュースとメディア〜朝日新聞メディアラボで語り合う夜』のレポート記事です。前編中編も是非ご覧ください。

 webメディアのマネタイズ

前島:次に、金銭面、媒体のマネタイズから話していきます。ジャーナリズムなどの主義、主張は色々あると思いますが、そもそも儲からないとメディアは存続できません。資本主義原理の上で、マネタイズに関してどのようにお考えですか?

川原崎:正直、ログミーでマネタイズは無理です(笑)。書き起こしのコストとPVが見合わないんですよ。60分のイベントを書き起こす場合、5時間かかりますからね。イベント書き起こしの需要自体はあるけれども、マネタイズはやはり難しいですね。

中野:2年間で、それなりの規模に育って、ユーザー数も月1300万人ほどいますが、webメディアの仕事ってなかなか儲からないなあと感じています。編集者を増やして、営業部隊も作りました。それに加えて、ネイティブ広告、記事広告も極力増やし、その上で記事広告専門の編集者を雇って、できるだけ良いものを作っています。

前島:新興メディアをマネタイズする上で、大手の傘に入るのも一つ解決策だと思っています。朝日新聞さんはそういう部分をどうお考えですか。

山川:価値があるものにはどんどん投資していきたいです。ただ、同じようなメディアがくっついても意味が無いないですよね。それよりも人工知能などの新しいテクノロジーに次の世界があるんじゃないかなと感じています。webの世界は、新聞でうまくいっていたサブスクリプション、広告というものが通用しない世界になってきていますからね。

川原崎:webメディアに関して言えば、ジャンルでコストが決まってしまいます。単価が大きいところ(不動産、芸能など)は良いですが、音楽とか文化のジャンルはマネタイズが本当に難しい。そこに関してはバイアウトしかない気がします。山川さんの話でいえば、メディアが同じようなメディアを買っても意味ないんですよ。それよりも、クレジットカード会社がメディアを買って、出口が設けられている仕組みを作ったほうが良い。朝日さんも新聞だけじゃなくて物販とかすればいいんじゃないでしょうか。

山川:以前、一部で牛乳を運んでいたりしていました。しかし、新聞配達に特化している会社なので、配達をカスタマイズするのは難しいんですよ。でも、そんな悠長なこと言っていられないので、新しいことをやっていくつもりです。

川原崎:ソフトバンクと組んで、携帯販売したら儲かりそうですけどね。

前島:ログミーは大手と組むならどの企業が良いですか?

川原崎:お金は欲しいんですが、公平性がなくなってコンセプトがずれるのはぜったい嫌ですね。例えば、フジテレビに買収されたとしたら、フジテレビが主催するイベントしか、書き起こせなくなってしまう可能性があり、公平性は必然的になくなっていきますよね。僕が目指しているのはwikipediaのような寄付で成り立つようなメディアなんですよ。

 

 炎上をどう捉えるか

前島:ログミーは著作権問題、ハフィントンはコメント欄など、メディアと炎上というのは切っても切れないモノですが、そこに関してどのように考えていますか?

川原崎:ログミーに関して言えば、当初、やっちゃいけないことをやったのでしょうがないですよね(笑)。現在は95%以上許可を取っています。

中野:ヘイトスピーチなどに繋がるような民族系の記事なんかだと多くのコメントが付きます。ハフィントンにはガイドラインがあって、差別的な表現や根拠のない罵倒は消していましが、よほど変な事を言ってない限り、コメントは消していません。しかし、まだまだコメント文化が発達していないので、品のない議論がよく見受けられますが、建設的な議論ができる場にしていきたいですよね。

前島:日本だとコメント欄が成り立ちにくいとよく言われますね。コメント文化を成熟させるためには何が必要なのでしょうか。

山川: 建設的な議論ができる仕組みがあるのであれば、喉から手が出るほど欲しいです。Newspicksさんのようなコメント欄は良いですよね。あそこって。意識高い系の人たちが多く実名で議論しているのが素晴らしいと思います。アメリカでは実名のコミュニケーションが多いうえ、人格攻撃はあまり広がりません。そういう観点では日本が違う環境にあるのは間違いないです。

「炎上」とは言うものの、コメントが盛り上がっているというのはニュースを深堀りする点でかなり大事だと思っています。一次情報の価値が下がっている中でニュースの内容ではなく、そのニュースに対して、誰(有識者)が何を行っているのかを見えるようになっていくのが新時代のメディアのあり方ですよね。

 

 

 マスなニュースは本当に必要なのか

前島:そもそも、マスに向けたニュースって本当に必要なんですかね?例えば中野さんは紛争地域取材していましたよね。紛争地域のニュースが日常生活に関係ない人が多いように見える中で、それをマスに伝えてきたじゃないですか。

中野:確かに、パキスタン、アフガニスタンを始めとする国際紛争地域の記事って読まれにくかったです。新聞って、どこになにが書いてあるかで価値が決まります。自分の書いた記事が前に掲載されず、結局国際面に落ち着いていました。

しかしながら、アフガニスタンには普通に日本人が入れないようになっています。入国できる人は大使館員、JICAなど限定的で、そこに“日本人が行って日本人が日本人に伝える”のが大切だと思っています。

川原崎:自分が損しないのであれば、マスなニュースは必要ないと思います。そのニュースを見ないと危害が加わる、利益が失われる場合は必要ですけどね。そもそも「マス」という定義が変化していると思います。以前は大手メディアが発信したものが“マス”でしたけど、今は多くの人が見ているだけでマスなニュースに成り得ますからね。

山川:新聞がやってきたのは、「これが知るべきマスなニュースだ」ということおせっかい的に押し付けてきたこと、興味がないかもしれないけど読んでおいた方がいいよという、ある意味「抱き合わせ商法」でした。この時代にそれが通用しなくなってきたのも仕方はありません。一部のロイヤルな読者に対して、「これが大きな問題です」といった感じで大々的に取り上げて、議論を促すのは独善的かもしれません。

今は、マスなニュースをどうやって届けるかが最大の関心事です。マスなものを取材しようとすれば、多大なコストがかかります。そこに対して、みんな試行錯誤していますよね。個人的には、マスなニュースはしっかり届けていきたいです。

前島:それでは時間になりましたので、みなさま今日はありがとうございました。

 

今回のイベントでは、あえてwebと紙の境界にとらわれることなく双方の媒体で活躍するゲストをお呼びしました。

まだまだwebの可能性は発掘され尽くしていませんし、webにおいて記者や編集者の力は活かしきれていません。これからの時代にどのようなメディアのあり方が求められていくのか、Credoはこれからも探求していきたいと思います。

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