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テスラモーターズCEOであるイーロンマスクは宇宙開発を積極的に進めていることでも有名です。彼が手がけているのがSpaceX社のロケット「Falcon9」です。宇宙をもっと身近にするために徹底的な低コスト化を推し進めており、現在は国際宇宙ステーション(ISS)への補給船としても使われています。

2015年4月、低コスト化への鍵である“ロケット再使用”のための着陸実験が行われました。今回で3回目となる本実験ですが結果は失敗に終わってしまいました。あの世界的企業家であるイーロンマスクがここまでこだわっている“ロケット”ですが、そもそもロケットとは一体どういう物なのでしょうか。

 

 宇宙へ行くための乗り物?

ロケットの役割は何か、と聞かれたらほとんどの人はこのように思うのではないでしょうか。

「宇宙に行くための乗り物なのでは?」と。

実は厳密に言うとこの回答はあまり正しくはありません。決して間違いではないのですが、ロケットをこのように表現することは以下のように言うことと同じです。

「消防車は火事現場に行くための乗り物」

明らかに違和感があるかと思います。間違いとはいえないが、正しい説明とも言えないよな、と心の中で思ったのではないでしょうか。この違和感の理由は、想像つく人も多いと思いますが、「その物の1番重要な役割に触れていない」からです。

消防車の1番の役割とはもちろん”火を消すこと”です。火事現場に行くだけだったら乗用車だっていいわけですから。

つまり、その物の1番の役割を説明していなかったら、それは本当に説明したことにはならない、といえます。「ロケットは宇宙に行くための乗り物」という表現もまさにこれに当てはまるのです。

 

 行くだけだったら気球でもよい

なるべくお金をかけず、設備的にも簡単に宇宙の近くへ行く方法があります。

それは気球に乗ることです。

上空100kmくらいからが宇宙空間と呼ばれていますが、50km程度までなら気球でも十分に到達することができます。本当に宇宙へ行くことだけが目的だったら、上がれるところまで気球で上がり、そこから別の方法で上昇すればよいのです。そうすれば50km上昇するのに必要な分の燃料を節約することができます。

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Photo by Garrett Heath

 

 問題は行った”後”

ロケットに乗せるものはそのほとんどが”人工衛星”です。人工衛星の目的は、ある程度の期間宇宙空間に留まり地球の観測などのミッションを遂行することにあります。さて、この人工衛星を宇宙まで持って行って、そっとそこへ置いたらどうなるでしょうか。

手に持っている消しゴムを離すと床に落ちます。では333mの高さの東京タワーからの場合はどうでしょう。さらに高い標高3776mの富士山の頂上の場合だったらどうでしょう。もちろん状況は同じで、物は下に落ちていきます。同様にどんどん高度を高くしていって、上空100km以上の宇宙空間まで行ったとしてもこの現象は変わることはありません。

つまり、人工衛星は宇宙に”行く”だけじゃなく、行った後に地球へ落ちてこないようにそこに”留まる”ことをしないといけないのです。

 

 宇宙に留まるためには地球の周りを回る

物が下に落ちるということを言い換えると、すべてのものは重力によって地球の中心にひっぱられていると言うことができます。人工衛星が宇宙空間に留まるためには地球の重力とは逆の向きに力を発生させないといけません。エンジンを使うという方法がありますが、人工衛星のミッションは数年もしくは数十年スパンであることがほとんどなので大量の燃料が必要になりあまり現実的ではありません。

そこで、ほとんどの人工衛星で用いられているのが、”地球の周りを回る”という方法です。水を入れたバケツを思いっきり回すと逆さの瞬間があるにも関わらず水は落ちてこないという実験をご存知かと思います。水がこぼれない理由は、バケツを回すことで回転の中心と反対の向きに遠心力というものが発生するためです。人工衛星も、地球の周りを回ることで重力と反対の向きにこの“遠心力”を発生させ宇宙空間に留まっているのです。

 

 回るスピードが半端ない

回るだけでよいなら簡単なことなのでは?と思われたかもしれません。ところがそうは問屋がおろさず、この回るスピードというのが半端じゃないのです。

その速さはなんと秒速7.8km。

僕たちが普段使い慣れている時速に直すと2万8000kmとなり、これは飛行機(時速950km)の30倍の速さです。この速さで回らないと、地球の重力に対抗できる遠心力を生み出すことができないのです。(物が落ちずに地球の周りを回れる秒速7.8kmという速さのことを専門用語で第一宇宙速度といいます)

 

 つまりロケットの役割とは?

消防車が、火事現場に行くだけではなくそこで放水をして火を消さないといけないのと同じように、ロケットは、運んでいる荷物にものすごいスピードを与えた上で宇宙まで届けないといけないというわけです。したがって、ロケットの役割の本当に正しい説明の仕方は、

「ロケットは、積んでいる荷物を目的の速さまで加速させるもの」ということになります。

ロケットの打ち上げ映像を見ると、途中からどんどん傾いていくのがわかると思います。宇宙へ行くだけなら真上に打ち上げればよいのですが、わざわざ傾ける必要があるのは、最終的に地球を回るための水平方向のスピードを与えたいがためなのです。

※今回の記事内での”ロケット”という言葉は、人工衛星の打ち上げなどに用いられる”宇宙ロケット”の意味で使用しました。そもそもロケットの定義はもっと広いもので、「自らの質量の一部を後方に噴射にその反作用によって進む力を得る装置」となっています。

Photo by Steve Jurvetson

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